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舞台は大阪。柳生美雨は契約社員で企業の受付として働く29歳。あと1年で契約が切れてしまうが、結婚には興味がないし、これといった資格もなく、やりたいことも特にない。将来に対する不安はあるけれど、ただなんとなく毎日を過ごしていた。
そんなある日たまたま出会ったのは、売れないお笑い芸人「安全ピン」の矢沢亨。亨の相方の弓彦や亨の同居人の芸人仲間たちと仲良くなっていくうちに、美雨のなんでもなかった毎日が変化してゆく。
美雨と亨と弓彦の、恋愛なんだか友情なんだかよくわからない3人の関係も、ルームシェアしてる人たちの距離感もなんだか心地よい。美雨の職場の千冬ちゃんも浅田さんも好き。
社会の固定観念からはみ出して生きることへの漠然とした不安や人生の惑いが、淡々とでも繊細に描かれていきます。『砂嵐に星屑』のレビューでも書いたんですが…結果、現状は何にも変わっていないんだけれど、気持ちは軽くなって空を見上げてみようかなと思えるようになる…。今作の場合は見上げるだけでなく「パラソルをパラシュートにして人生の崖っぷちから飛び降りちゃう」くらい。
うん、一穂ミチさん、やっぱりいいですね、好きです。あぁ、これでおそらく一穂さんのBL以外の本を読みきってしまった。新作、お待ちしてます。
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「笑っていてやる、と挑むような気持ちで思う。笑いながら、何でもなく、ただ生きていてやる」(335頁)
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スモールワールズで一穂ミチさんに興味を持ったので、手に取ってみたものの、字を追うのが苦痛でした。
主人公についていけなかった。
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サッパリしていて、おもしろい。そしてめちゃ読みやすくて、すぐ小説のなかに入れる。
いわゆる普通のOL・美雨と、大阪の売れてるとまでは言えない、でもUSJで気付かれるくらいのお笑い芸人コンビ「安全ピン」の物語。
すんごい大きな出来事が起きるわけではない。ただなんというか、美雨が言うように、「大人になって友達ができること」っていいよね、って思う話だった。あ、でも29歳まで実家にいた人が、芸人らと友達になってルームシェアするって、まあそれだけで冒険といえなくもないか。この美雨と亨と弓彦の、なんとも言えぬ関係がいい。ゆるく、しばりがない。決して寄りかからず、でも心の栄養剤的な存在感。いい。
あと好きだったのは、結婚を考えた後輩の千冬のくだり。
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「家には和室を一間作ります。客間兼美雨ちゃん先輩の部屋です。雨ちゃん先輩がおばあちゃんになって、もし住むところに困ったらうちで暮らしましょう(略)」
(中略)
「ありえへんって思います?でも私は全然ありです。先のことはわかりませんけど、まじなんで、雨ちゃん先輩もまじで覚えとってください」
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マジかっこいい。言われたらマジ嬉しい。
あと地味な登場人物と思われた浅田さんが、実は推し活でめっちゃ人生楽しんでたのが嬉しい。「わたしは、わたしを救ってくれるものを守れたらほかはどうでもええ。」ってセリフもカッコいいよ!
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とっても良かった。
大阪の古い一軒家での芸人さんたちとの共同生活。気を使わない寛いだ雰囲気と干渉しすぎない距離感や自由さが良い感じ。
お笑いコンビ 亨と弓彦くんの関係も良いなって思うし、その二人の関係を心から良いなと感じてる美雨も好きでした。
一穂さんの文章がすごく好き。
自分では上手く伝えられない「何かわかる」っていう感覚がいっぱいあって、それを物語の中で表せていることにちょっとビックリしたし感動した。
全体的にゆる~い雰囲気なんだけど、一つ一つの場面がじんわり響く。亨と弓彦くんと美雨の三人の関係がいい。
『笑いながら、落っこちる』って表現も好き。
余韻の残るラストにニンマリしました。
これから一穂さんが魅せてくれる世界に興味津々です。
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企業の受付に勤める29歳の美雨が出会った、売れないお笑い芸人、亨。この出会いから始まるジェットコースターなみの物語の展開は読んでいておもしかったった。芸人との奇想天外な共同生活のおもしろさ、思わず爆笑してしまった。はたして亨との結末は最後はハラハラドキドキの展開に興味津々でした。
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同僚の千冬に譲れたコンサートチケット。
柳生美雨はコンサートで会場スタッフの横顔を
見た時、何故かその声が聞きたくなる。
横顔を凝視していたら不意に目が会い、
コンサート後に再開する。
掴み所のない会話をする彼との出会いから、
美雨の何もなかった日常は変わっていく。
こてこての大阪弁。
破天荒で個性的な人たち。
関わってゆくうちに当たり前だった美雨の
毎日は彼らの生きたに浸食されていって、
何もない場所、何もないと思い込んでいた人が
気がつくと全然違う人間に変わり始めていた。
なんとも個性的なメンツが揃った、
化学反応のような物語。
崖っぷちと自分を表す主人公の美雨。
なにを大切だと思うか価値観に正誤はないので、
美雨の理想を否定しないけれど共感もしない。
違う感覚を尊重しつつ、あまりの個性的さと
異なることに戸惑いました。
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感動がじんわりとしみてくる読後の本。パラソルでパラシュートという題名の意味が次第に分かってきて面白い。展開がゆっくりで静かなお話だから、好き嫌いは別れそう。
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ページをめくれば どのキャラクターも魅力的で
親近感を感じずにはいられない主人公たちに出会う
“わたしたちの間にあった美しいことといえば
きっと出会いくらい_” (本文から抜粋_)
一目惚れのような劇的な出会いでなくてもいい_
降っている雪のように 手のひらに触れたら
熱で溶けてしまうような
そんな淡い感情をずっと抱えていたっていい…
ずっと心の中に抱き続けてきた感情を掬いとって
琴線に触れるような言葉で表現できる一穂さんは
なんて素敵な方なのだろう
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「スモールワールズ」を読んだ時、「一穂ミチさんの長編が読みたーい」と叫んだら、早くもその願いが叶った。ありがとう一穂ミチさん。絶妙なテンポに内省の深さとその潔さ。その上、今回の舞台は難波に、南海汐見橋線って!僕も数回しか乗ったことないけど、木津川あたりは街写真撮りにうろうろしたことがあって、渡船まで書いてくれてたら僕はきっとお漏らししながら気絶してたことやろう。個がたちすぎて夢で魘されそうなほど愛しい話やな、これは。プラトニックすぎて胸が苦しいわ、おじさんは。
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大阪はあたたかい街だな、と。
僕は、東京生まれ東京育ちだけど、大阪好きなんだよな。美味しいもの多いし、人情味があるし。
だから、この小説の世界は好き。
「スモールワールズ」の一穂ミチさんの長編。
しかし、「スモールワールズ」のような重目のものを期待すると肩透かしを喰らうかも。もっと軽い、ポップな恋愛もの。コンビの芸人と29歳受付嬢のちょっと捻った三角関係。
恋愛ものとしては全てが奥ゆかしく、鈍くなってしまった僕の心には残念ながらあまり響かなかった。もう、若くないものね。
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二十代と三十代の谷間を覗き込んでいる一流企業受付嬢美雨と、ウケるとウケないの間の崖っぷちにいる売れない芸人亨。大阪で笑いを挟んでぐるぐる回る二人の人生、マイムマイムか。
大阪ネイティブではない二人が笑いの渦の中にいる寄る辺なさみたいなものがいい感じのコテコテ緩和になっている。
店舗の良い会話、大阪弁のキツさと温かさ、土地からかもされるパワー。
言わなきゃいけないことをどうでもいいことでくるんでしまう大阪人の習性が心地いい。
女の商品価値、芸人としての成功やゴール。降りていく、落ちていくたくさんの人たち。そういう「問題」をそんなことどうでもええやん、楽しかったらええねんと両手で遮ってくれる。
それは問題の先送りかも知れない。こんな心地いい時間が永遠に続くわけないかも知れない。
でも、人生一度きりやん。どうせやったら崖っぷちからパラソルもって笑いながらジャンプしたろやないか。
止めてもええし続けてもええし。あきらめる勇気も、残る怖さも、全部ひっくるめて笑っていけばええねん。
楽しくて気持ちよくて切なくて面白くて、そしてちょっと泣いちゃった。一穂ミチ、ずるいわぁ。
見つけたときに見つけてもらった、その出会いが最高に気持ちいい。
そしてもやしがじわじわくる。
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後輩が行けないということで、人気バンドのコンサートにきた美雨。あまりそのバンドを知らない美雨。最前列だったり、新しい靴で靴擦れになったりと戸惑いを隠せなかったが、そんな時、近くにいたスタッフに目がいった。そのスタッフは美雨に何か言おうとしていた。口の形が「ふんすい」ということで、コンサート終了後、噴水で待っていた。来ないと思っていたが、本当に来て、流されるがまま、その男の自宅にまで来てしまった。その男の正体は芸人であった。
この出会いが、美雨にとって、この先の生きる道へと誘っていく。
こんな出会いアリ?と思った序盤でした。側から見たら、コワっ(実際に小説に登場する後輩も思っていました。)と思う展開で、しょうもない男で良かったねとか思ってしまいました。その後は、芸人が住む家は、他にも売れない芸人が一緒に住んでいるというルームシェアハウスで、その住人と仲良くなったり、その男率いるコンビを応援したりとテンポ良く展開していきます。
関西弁もそうですが、ボケとツッコミも相まって、クスッとさせてくれました。
でも、それらが雑に描かれているのではなく、人物の喜怒哀楽を繊細に描かれているので、笑いだけでなく心地良さもありでした。
そういった意味では、BLで培った丁寧な心理描写が生かされているのではと思いました。
話の流れでは、この二人はラブストーリーになるのでは?と思いましたが、どうやらそういったような空気感ではなく、そうじゃない絶妙な空気感を出していました。さらに相方も登場し、奇妙な三人の関係が生まれます。
男は女装してコントをするので、相方にとってはそれが武器であり、なくてはならないものです。
それが美雨が来たことによって、壊れていくことを危惧する相方。愛憎劇とは違った微妙なバトルがあって、色んな意味での不思議な感覚がありました。
また、美雨自身では、29歳という微妙なラインに立っています。あと1年で契約社員終了という謎のタイムリミットがある中で、美雨はどう生きていこうとするのか?
どこか「抜けている」美雨なのですが、芸人たちといる時の美雨は、どこか生き生きとしている雰囲気を醸し出していました。
芸人たちもそれぞれ良い味を出していて、ネタはさておき、人として面白かったです。
30歳になってからの人生。売れない芸人にとっては、このままで良いのか微妙な境界線です。それでも有名になってやり続けようとする精神力や貧乏でも人生を楽しく生きている精神力が個人的に羨ましいなと思いました。
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よかった。大人になってできる友達?というか、関係性がとても素敵。美雨ちゃんが普通に好き。
最後のコントの雨のくだり、ぐっときた。すごい上手。
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パラソルでパラシュート、危うくて滑稽な状態なはずなのに、どこか痛快で不思議と飛べそうな響きがある。
最後の瞬間まで笑っていたい。
「解決もゴールも求めないでいて」
この言葉に思わず泣いてしまった。
いつか終わってしまう関係かもしれない、何かひとつでも区切りがついたら壊れてしまうかもしれない。
でもどうか3人にはいつまでもこのままでいてほしいと願ってしまう。
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心が苦しくなることがなく気持ちよく読めた。
恋愛じゃないけど青春ストーリー、想像してなかった三角関係。人々の優しさが垣間見えた。自分はこういう関係は経験ないし異性に対してそういう気持ちで居られる自信がないから、彼らの人間関係がとても心地よかった。
大阪弁がメインの小説は初めて読んだけど、全然読みにくくなかった。大阪人の表現がどれも良かった。口悪い中にも優しさがあるんだなと初めて知った。
所謂普通の幸せだけが幸せじゃないんだよと教えてくれる。