投稿元:
レビューを見る
モームは短編という先入観があって長編は敬遠してきたのだが、そろそろ読んでおきたいと思い、代表作「人間のしがらみ」(これまでは「人間の絆」というタイトルが多かったが)を読むことにした。
冒頭、まだ幼いフィリップ(本作の主人公)を慈愛の目で見守る病床の母、それが親子の最後の別れとなってしまう。とても印象的なシーンで本書は始まる。
両親を失ったフィリップは牧師の伯父夫婦の元に引き取られる。そして彼は生まれながらの内反足だった。
神学校での学校生活に嫌気がさし、牧師になることを放棄し、異なる生活を夢見てハイデルベルク、さらに画家になることを志してパリへと赴く。そこでの友人との付き合いや交流を通して、彼は様々なことを学び考える。しかし結局自分の才能に見切りをつけて、今度はロンドンの医学校に入学したものの、ウェイトレスをしている女性に猛烈な恋をして、学業は疎かになってしまう。しかも彼女はなかなか振り向いてくれない。
上巻は大体こういったところ。
本巻の半分くらいまではなかなかページが進まなかったが、個性のある人物が登場してきたパリの辺りから、彼、彼女らとフィリップとの付き合いの様子や、若者ならではの自信と不安がないまぜになった心理がうまく描かれていて、面白く読み進めることができるようになった。
自分を愛してくれない女性に対して卑屈なほどの対応をするフィリップ、彼は果たしてあきらめることができるのか、この後どうなるのか、というところで、下巻へ。