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ライターである主人公は、父親からの依頼で調査を始め、鍵を握る珠緒という女性の失踪の謎を突きとめていく。『事実』のパートは、途切れ途切れの事実が羅列され、こちらも淡々と読み進めるしかないが、『真実』のパートになると断片的であった事実がくっきりカタチとなっていく高揚感があった。1人の女性を追うことで、その時代感を思い出す。いくら時代が変わっても過去は執拗に珠緒につきまとう。この世に公平な場所はないことを痛感する。
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現在行方不明の辻珠緒について取材を重ねていく。最初はなぜ、辻珠緒のことを調べているのか分からず、そのまま読み進める。まわりの人に取材を重ねるうちに、明らかになっていくこと。ネットなど溢れた情報から判断せず、直に会って情報を得ていく。だから時間がかかるし、人によって印象が違うこともでてくる。
そして明らかになることが不幸で。不幸やし、過去は変えられないし。
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テレビや雑誌、ネットなどで伝えられるほんの一部分だけを見て、事実と思い込んでしまってる人が多いと思う。(私も含めて)事実はひとつだが、真実はそこに関わった人の数だけあるというが、改めてそうだなと思った。
ネットが普及し、マスコミだけではなくネットのSNSにも振り回されることが多い今日、改めて考えたい。
事実とは。真実とは。
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芦原温泉で実際にあった大火事を背景に展開。
始めはインタビュー形式で進むため、
途中読むのをやめようと思った。
後半物語が重なり始めると、
一気に読み込む。
もう一度始めから読むと、
また違うかも。
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真相に近付いていくほどに胸は苦しくなるのにそれと同時に抱えていたものが解き放たれていくような開放的な気持ちにもなっていくのが不思議だった。
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失踪した女性の手がかりを求めて、インタビュー形式で進んで行く。段々と全体像が見えてくるのが面白い。昭和を生きた女性達の物語だった。
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❇︎
塩田武士さん『朱色の化身』
『罪の声』を彷彿とさせる現実と虚実を
行き来する臨場感ある全313ページ。
どのページも上から下までびっしりと文字で
綴られていて、非常に読み応えがありました。
内容も一つひとつしっかり読み取っていかないと、
どこかで読み誤ってしまうに違いないと思って、
かなり注意して読みました。
ミステリーの犯人や謎を読み解いていく時とは
全然違う頭の部分を使って読んだ気がします。
時代、場所、登場人物、全てが違うけれど、
また別ステージの『罪の声』を読んだ気分です。
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「罪の声」を超える圧巻のリアリズム小説・・・
まんまとこのフレーズに騙された感満載。
ライターの大路が取材した証言内容で綴られる第1章。
取材する経緯が綴られた第2章。
この順番なので、第1章の証言内容が散らばっている感じで、人間像も分からないまま、語られる内容に気持ちが入っていかない。
第2章で大路が取材するきっかけが描かれて、やっと何となく関係性が掴めて来る。
昭和31年に起きた福井・芦原温泉を襲った大火の史実を元にした昭和、平成、令和に渡る壮大な物語なのは分かるが、メインとなる辻珠緒が姿を隠した理由も心に響かなった。
ところどころに描かれる福井の情景は美しく、実際に行ったことのある雄島のシーンは、くっきりと頭の中に浮かんだほど。
主人公である大路に気持ちがないからなのか、親子三代に渡って、守り抜いた秘密が明らかになった時も思ったより、全然心を動かされるようなことがなかったのが残念。
「罪の声」を好きな読者さんほど、違和感があるのではないだろうか。
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2022/03/20予約 12
新聞記者的な、地道に情報を集め、精査して、話を組み立てていく。元新聞記者ならではの書き方なのか。
辻珠緒という女性にまつわる小説。
ライターをしている大路亨は、ガンを患う元新聞記者の父から辻珠緒を調べたい、と相談される。
一世を風靡したゲームの開発者として知られた珠緒だったが、突如姿を消していた。珠緒の元夫や京都大学の学友、銀行時代の同僚を通じて取材をしているうちに亨は、彼女の人生に昭和三十一年に起きた福井の大火が大きな影響を及ぼしていることに気づく。
半世紀前の福井大火と、バブル前の男女雇用機会均等法にバブル期の銀行、近代のゲーム依存症問題。複雑な親子関係、男女関係に、ヤクザものの介入。そこに殺人事件。
私の育ち複雑だから、とつぶやく珠緒が、なんとも可愛そうになる。自分で変えられないところ、努力では変えられない過去。
ゲームに疎いのでわかっていないのかもしれないが、いくら頭脳明晰な珠緒でも、銀行勤めが大ヒットゲームクリエイター、というのは、理解し難い。
ゲームに依存、やったことのないレベルなのでかまいたちの夜、とか聞いたことがあるだけで、それがどのようなことを指しているのか、よく理解できず。
ゲーム関連のページは読み飛ばし。
私には読解力がなく、いまいち楽しめなかった。
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Amazonの紹介より
ライターの大路亨は、ガンを患う元新聞記者の父から辻珠緒という女性に会えないかと依頼を受ける。一世を風靡したゲームの開発者として知られた珠緒だったが、突如姿を消していた。珠緒の元夫や大学の学友、銀行時代の同僚等を通じて取材を重ねる亨は、彼女の人生に昭和三十一年に起きた福井の大火が大きな影響を及ぼしていることに気づく。作家デビュー十年を経た著者が、「実在」する情報をもとに丹念に紡いだ社会派ミステリーの到達点。
各時代に起きた社会問題を盛り込みながら、一人の女性の半生を描いていますが、まぁ凄まじかったです。
一人の女性だけでなく、三世代にわたる時代を駆け抜けた人生を垣間見たようで、読み応えがありました。
物語の進行は、ほぼインタビュー形式です。様々な関係者が多く登場するので、頭の整理が必要だなと思いました。
紙とペンを用意したほうが、より世界観を味わえるかと思います。
段々と明らかになっていく「情報」はリアリティや重厚感があっただけでなく、一人の人物の「形」として完成されていく面白みがありました。そういった意味では、記者と同様に自分が取材をしていくような臨場感や発見していくことの驚きも味わえて、リアリティがありました。
一つ一つは小さな情報でも、それが積み重なって大きな情報へと成長するので、大河ドラマを読んでいる感覚にもなりました。
ちなみに序盤に出てくる火災事件ですが、実際に起きた事件をもとにいるそうです。取材を多くされているからか、その時の状況、人々の逃げる描写に凄い臨場感がありました。
昭和、平成、令和と三つの時代を描いているのですが、同時にその時起きた出来事にも触れられています。今では、女性は当たり前にビジネスに進出していますが、昔は男が主体。その現場で戦う女性たちも描かれていて、その苦労は計り知れないと思います。
読者としては、懐かしさや体験してない人には新鮮感もあって、色んな味わい方があるかなと思いました。
果たして、行方不明になった女性はどうなったのか?ちょっとネタバレになるのですが、最後に女性が登場します。生きているか死んでいるのかは書きませんが、どのような真相だったのか。今までの取材の集大成として、答え合わせをするかのように綴られています。
なので、初めから一番最後の章を読まないことをお薦めします。
様々な人と関わっていく中での凄まじい人生。その中で掴んだ「情報」とどう向き合っていくのか。
読者にも試されているようで、読み終えた瞬間、どっと疲れがきました。
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一人の女性の失踪から過去の物語を調べる元新聞記者が捉えた現代史。
過去の事件の真相究明という点では「罪の声」と同じような展開ですが、構成が複雑で読み返すと構成のうまさが理解できました。
とはいっても長編なので、再読は流し読みですが・・・。
親の因果が子に報い、とか、貧困スパイラルとかDVループとか言いますが、何かのきっかけで断ち切ることができるといいですね。
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いやぁ
なかなか進まなかった
入れ込む登場人物が
いなかったからだと思う
1つの事件をきっかけに
1人の女性と
またその家族の人生を
覗いていくんだけど…
ずっと
辛いだけ
主な視点の
主人公の人間性も
特に見えず
読み終わった後も
何かが強く残る感じは
なかった
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色々な視点から見えてくる事実と真実の交錯がとても考えさせられた。
その人の目線、立ち位置でしか見えないもの考えられないものがあるということを改めて考えさせられた。
様々な人の証言から、探し人の輪郭が徐々に見えてくる設定は先をすごく読みたくなり、その人がどんな人なのか知りたいという主人公の気持ちにリンクして読み進めやすかった
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珠緒という女性を彼女の人生に関わった周りの者たちの証言から、その輪郭を作りあげていくという作業。その作業の中で、仕事に行き詰まった主人公の元記者・大路は今日のジャーナリズムのあり方、自らのジャーナリズムへの向き合い方を見つめ直していく。
証言から作られた珠緒の輪郭は、あくまで魂のない張りぼて。雄島の朱色の橋の上で大路と珠緒が初めて対面した時、その輪郭に魂が入った。千の言葉より、一つの体験だと思う。情報過多の今、沢山の情報を仕入れることで知った方な気になることの危険性。珠緒だけでなく、証言者も含めて、属性ではなく、一人一人の人生にこれだけの物語があるということ。
そしてそれは、語られた文字だけでは決して真実を知りようがないということ。塩田さんらしいジャーナルの危うさを描いた作品だと思う。
珠緒が自分と同じ年齢設定だった事もあり、女性を取り巻く世の中の空気、女性の教育や就職活動、会社での扱いなど当時の自分にも降りかかったあれこれを思い出して苦い思いが込み上げてきた。
本作はミステリではないけれど、珠緒の失踪とか、菊代の興信所への依頼とかミステリ調に謎めいて描かれた割に、その理由が肩透かしでがっかりしたことは否めない。
証言者が多すぎ、情報が多すぎるのは今回の情報というものの危うさを描く上で必要だったのだろうけれど、全体的に焦点がぼやけた印象になったのが残念でした。
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昭和31年、芦原温泉で起きた火事は強風に煽られ、ほとんどが焼け野原となった。小説の冒頭にその悲惨なシーンが描かれ、物語のキーとなる場面も含まれている。
ライターの大路亨はガンを患う元新聞記者の父親から辻珠緒という女性を探して欲しいと頼まれる。聞けば、亨の祖母が興信所を使って珠緒の祖母のことを何度も調べさせていたという。珠緒は一世を風靡したゲームクリエイターだが、行方不明になっている。
亨が珠緒を知る人を取材して回るうち、彼女が芦原温泉で育ち、複雑な家庭から逃げるように京大へ進学したこと、当時はまだ珍しかった女性総合職として大手銀行に入ったこと、老舗和菓子店の御曹司と結婚するも離婚したことなどが明らかになる。
第一部「事実」には、12人の証言が並ぶ。第二部「真実」は、亨が多岐にわたる人物への取材録。いずれも、次から次へと人物が変わり、第一部の証言が第二部に絡んできたりするので、読むのにエネルギーが要る。
しかし、著者は、多くの人からの取材を通し、様々な話の中から珠緒という「個」の歩みをあぶり出していくという手法にこだわったそうだ。
昭和の芦原温泉、男女雇用機会均等の黎明期、昨今のゲーム依存症というように昭和、平成、令和の社会情勢を散りばめ、その中で珠緒の不遇と苦悩、そして真実の姿が徐々に浮かび上がるように構成されている。
「当事者の話を聞いていくことで、自分の浅はかな予想は裏切られ、そうして先入観の皮を一枚ずつ剥いでいった末に残った芯。それが社会の一端というものではないだろうか」亨が最後の方でつぶやくこの言葉に著者の思いが込められているような気がした。