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図書館本で返却期日が迫ってきて必死に読んだが内容が面白かったので退屈せずに読み進めた。
典型的な左翼思想の考えだが特におかしいとも思えず目指す結果は同じでもアプローチの仕方がい色々あるんだなと思う。
兎に角この作家は内容が面白いので読んでても飽きがこない。エンターテイメント性が伊坂作品にも通じる所があるのか。
まだ
読んでない作品も興味が沸いた。
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新聞で毎日楽しみに読んだが、デビュー作「やさしい左翼のための嬉遊曲」以来の踏み込んだ政治小説だなと思った。結局、若い時の思いはいつまでもその人の中核として埋み続くものなのだなと。
現代の政治に対する失望は多くの人が感じるところではあるが、作者もまたその一人として、清濁合わせ飲んででも政治をbetterなものにしたらどうかという提言、と読んだ。
私もその姿勢に共感する。
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何の因果か、この本を読み終えた翌日に元総理は射殺された。
東京新聞等で連載された小説。産経や読捨で連載したら大変な騒動になるだろう。話の根底に流れている考えは、”世襲で無能な男が首相に収まると、政府のマフィア化は進み、不正は公然と行われるようになったにも拘らず、国民はサイコパスに洗脳されたかのように、その無為無策の政権を支持し続けた”という世界観だ。
少年時代からの幼馴染、火箱空也と御影寵児。空也は広域暴力団火箱組の跡取り息子で、人材派遣会社で社会勉強中。寵児は秀才で東大法学部を経て留学し、CIAで働くことになる。その二人がそれぞれ異なる立場を最大限に生かして、日本の世直しを敢行する。とんでもない実力行使も有り、胸躍る展開。
中国とアメリカとロシアの間で上手く立ち回る必要があり、この国にとって外交は大昔から重大事であるが、現在は全てを米国に依存しているというか支配下にある為どうすることもできない。唯一の頼みは経済なのだが、それも今や先細り状態。それでもほとんどの国民は政権を強力に支持し続けている。もっともリベラルは迷走を続けたり、政権にすり寄りおこぼれを頂戴しようとの狙いが有ったりで、泥沼にどんどん足を踏み入れつつあるからどうしようもない。
自主独立国家の確立など、本当に小説の中でしか有り得ないだろう。明日の選挙結果を見るまでもなく…
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作者の「暴走」に付き合いました。まあ長かった。
アメリカの望むままに沖縄の基地どころかひと続きの島嶼部の大幅な基地化まで推進していく日本の政治に大きな懸念をもっているが、「日米同盟の先にあるのは中日戦争、米軍は出動せず、日本だけが再びの敗戦を喫する」との見立てに同感だ。右側のみなさん、どうやったら中国に勝てるのさ。ん、敵基地攻撃能力ってか。かかか。
戦争はあかんよ。
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愚民政策に慣れ、変えられるという希望を失った多くの主権者たちの中で、希望を持って闘うのは、高校時代に世界の敵を意味するコントラ・ムンディという秘密サークルを作った同級生二人。おのおのヤクザとCIA所属。さらに支援先は大学時代に培った名門女子高出身同級生の記者、議員秘書、弁護士、警部の人脈に広がり、自国のことは自国で決めるという言葉にするとすごく当たり前のことなのに、いざ行動に起こすと命懸けの闘争になりました。一連の計画を終えて、大きな成果につながったのかはともかく、愚民は目覚めなければならないという強烈なメッセージを受けとりました。
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ひゃー、長編もろもろ疲れました。
上下巻にしてもよかったんでは(笑)
これを新聞連載していて、皆さんついていけたのでしょうか?
著者の帯、「私の暴走にどうかお付き合いください」
があるから、なんとか読了しました。
しかし、最後が尻すぼみ。
今の日本を憂いていても、どうせ思い通りにならないのですから、いっそ最後はもっととっちらかしてしまってもよかったのでは。
といろいろ思いながらも、一抹のうすら寒さを憶えながら本を閉じました。
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痛快な小説だった。
希望の物語だった。
こういうものを読みたかった。
で、現実世界をどうするかだ。
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ローマ帝国の詩人の言葉をタイトルに据えたところで著者の強烈な皮肉が炸裂している。
パン(食い物というか経済的利益)とサーカス(享楽)ばかりを追い求め、政治的無関心から市民が愚民化してしまいローマ帝国を没落に導いた歴史を現代日本に重ね合わせた「妄想」小説と言っていい。
しかし、妄想に過ぎないと思うか、難を避けて実名を記さず「小説」としていると捉えるかは読む人の自由。
史上最長の長期政権がもたらしたものは、結局この国を「日、没する国」にしただけという憤りが、500頁を超える分厚い本を書いた著者の原動力になっている。
ただ、その結果として、いまの時代の空気をあまりにも強く出しているがために、この小説の命脈はそれほど長くないかもしれない。
数十年後、この国が平和で真の独立国として「日、出る国」に再生したときに、苦難のときに書かれた小説として読み返されることを願うばかりである。
分厚い本だが、こなれた語り口の日本語は読みやすい。
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いまだに実質的に完全に米国の統治下にある日本。米国の核の傘に守られ有事には米軍が助けてくれるという完全なる虚構を信じ搾取され続ける日本。
リアリティのあるテーマ設定で前半は面白く読み進められたが、後半のテロを実行する辺りからはストーリーが飛躍し過ぎて没入感が一気に失われた。かなり尻すぼみな印象。
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ほんとなんだろうな〜、ってことと、創作だろうな〜、ってことの境目が曖昧で良い
世界は邪の心に支配されているし、わたしのような一般人は、不本意ながらもその邪の流れに流され続けるしかないんだろうという無力感は増した
ただ、「もし仁義の心を持った人が支配者層に近い立場にいたら?」という創作を見せてもらえるだけでも、多少の希望にはなる
確かに作者が言ってた通り「ワクチン」ですね
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エンターテイメント小説として非常に楽しめた一冊。現実社会で起きてきた事実も随所に取り入れ日本の受身の体質を批判する視点もフィクションでありながら痛烈。後半の二重スパイに踏み込むくだりはややしつこい流れを感じたが500ページを越える大作を飽きることなく一気に読めた。
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軽快な冒険小説のように始まり、ある種の現実や人物をやんわりと炙り出す。けれども、これは小説なので日本がアメリカの属国でなければ、中国の属国になるというリアリズムだけでは後半の失速は避けられなかった。
もう少し短く出来るのでは無いだろうか、、。
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2022年刊。新聞紙上に連載されたのは2020年から2021年だったようだ。
この作者のデビュー作『優しいサヨクのための喜遊曲』は1983年の作品で、これが芥川賞候補になって注目されていた。ちょうどその頃、高校時代の私はちょっとリアルタイムな文学作品も読んでおこうと思い福武書店の純文学系雑誌『海燕』を買ったりしていた。話題になっている作家らしいと数冊作品を読んでみたが、それら最初期の作品は浮かれはしゃいだようなふざけた書き方で、中身は薄く、肉体の無いポーズばかりが目につくような、結局は芸術作品として見るべきものはなさそうに思えた。きっと頭の良い作者なのだろうが、小説として肉化されず終わっていた。
その後この作家を振り返ることは無かったが、最近SNSでアカウントを見かけ、反-安倍政権の、すごくまっとうな民主主義擁護の発言の数々に、「あれ、この人、まともになったかな」と興味を持った。
で、先日、安倍晋三氏が射殺される事件があり、当初は宗教がらみの私怨とはわからずテロか? 政治的意図に基づく暗殺か?と世間がざわつくなか、島田雅彦さんが近著『パンとサーカス』をある種の予言だったかも、と冗談半ばに書いておられたので、この小説を読んでみる気になった。
ネットで注文して届いたらかなり分厚いハードカバーだったのであせった。
読んでみると、最初期のうわついたところは消え、多少ふざけた感じの人名などは残っているものの、文章は「大人の」それに成長していた。オーソドックスな近代小説にならって、きちんと地道にストーリーが展開されていく。これがなかなか面白く、適度な物語の展開に夢中にさせられた。
やはり安倍晋三氏らしきおもかげの首相が出てくるし、物語は政治からCIAのスパイ戦、ヤクザとかゲイとか巫女めいた「マリア」の託宣とか、派手に入り乱れ、そういえばやや筒井康隆さんのドタバタストーリーを想起させるところもある。
日本社会の病態をとても大人っぽい視線で、結構「常識的に」(と私には思われた)分析している。ここには馬鹿げたポストモダンの軽さはない。あるようでない。今思うと、最初期の島田さんの作品の浮ついた雰囲気も、バブル期のポストモダン文化のありようとはちょっと異質なものだったかもしれない。
ひたすら対米従属するだけの戦後日本人の官僚的根性を、作者は痛烈に批判する。では、アメリカと手を切るなら中国との関係をどうするのか? この小説内に明確な結論はもちろんない。個人的には、ここに呈示されている中では、「中立国」を目指すほかはどうしようもないような気がしたが、どうだろうか。
まあ、政治的な大きな方向性については、日本人もいい加減ちゃんと考えた方がいいだろうけれども、この小説を読んでどう思うかは人それぞれに分かれるだろう。いずれにしても、かつての『希望の国のエクソダス』辺りの頃の村上龍さんの作品と同じくらいのパワーがある、刺激的な作品であることは確かだ。
島田さんは作家として「大人」になって、ついに「優しいサヨク」に自ら近づいてきたのだろうか。
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文芸誌などで短編やTwitterでは時々読んでいたけれど長編の島田雅彦作品を読むのは初めて。先ずはその厚みに怯みつつ、読みはじめてみればモデルになったであろう事件やニュースが次々に思い出されるし、映画や小説で馴染み深い騙し騙されの世界が繰り広げられ‥私たちは誰を、何を信じればいいのかと悩み、現実と創作の境い目を行きつ戻りつしながら一気に読了。結論は出ないけれど、悩み続ける。それしかないのかも。
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革命に向かう野心と現実との混沌は、ワクワク感に満ちている。その分、尻すぼみ感が惜しい。
どうせ物語なんだから、一回はドカンと行くとこまで行けばいいのに。なんか現実に絡め取られて、でも完全な敗北ではなくて、再起への希望を若干感じさせるというラストが、惜しいなあと思ってしまったのは何でか自分でもよくわからない。
ワルキューレカルテットも、便利屋さんとしてでなくもう少し活躍してほしかった。