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とても読み応えがある一冊だった!
ドイツとの戦争が始まり、図書館で働く人たちの普通の暮らしが少しずつ脅かされていく様子は読んでいて苦しく恐ろしい。
嫉妬に支配されて自分のことしか見えなくなって、大切な人に余計なことを言ってしまった経験は私もある。
だからオディールのやってしまった事はすごく身につまされたし、リリーが同じようなことをしようとした時にオディールが制止したところに希望を感じた。
自分の犯した過ちがきっかけで、友達も家族も婚約者も故郷も捨てることになったオディールが、再生していけるような希望を持てるラストで良かった。
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図書館員の物語でありシスターフッドの物語でもある。
オディールとリリー、年齢も環境も何もかも異なるふたりが初めて接した瞬間が実はどんな状況だったのか終盤で明かされたとき、涙が溢れて止まらなくなった。人はそんなにも不意に劇的に救われることがある、その瞬間は気付かなくても。
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作者は物語の舞台であるパリのアメリカ図書館で、プログラムマネージャーをしていたときに、この事実を知り、小説にするまで数年間調査を続けた。
しかしこれは、ドキュメンタリーではない。小説である。
ナチス占領下という特殊な状況に置かれた市民の生き様や心の動きが、歴史と綾なして物語を構成している。
主人公オディールは、二十歳のとき、望んでいたアメリカ図書館の仕事を掴み取る。女性館長のミス・リーダーの元、それぞれのスタッフが、「登録者」のために分け隔てなく資料を提供する仕事に従事している。
戦争が始まると、従軍する兵士の元へ、抑圧されるユダヤ人の元へと届けられた。
オディールがなぜ晩年アメリカにいるのか、近隣住民と打ち解けないのか、謎が謎のまま、物語は進む。
モンタナ州フロイドの街に住む、お隣の12歳の少女リリーがこの風変わりな隣人に興味を持ち、宿題として話を聞かせてほしいと家に招待する。
物語は過去と現在を行き来するので、初めは混乱するかもしれないが、読み進むうち、この構成が謎を解くのに一役買っていることを、瞬間に知らされる時が来る。
登場人物の誰もが私たちの隣人であり、人間臭さを持っている。その人たちが占領下で、または解放後にどう振る舞うのか。知らなければならない。
今、まさにウクライナでも起きている出来事かもしれない。
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パリのアメリカ図書館で司書になったオディールと同僚、家族、恋人とのお話。ナチス・ドイツとの戦争が始まって図書館員たちは負傷者に本を届けるという実話に基づいたお話。
主人公オディールの本に対する熱意がすごい。
いろんな作品の題名が会話などに出てくるので、お話についていくのに時間がかかりました。
デューイ十進分類法について知らなかったので勉強になりました。
思いのほか読み進めるのにかなり時間がかかってしまいました。
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「わたしが本書を書いた目的は、第二次世界大戦の歴史の中の、このほとんど知られていない章を読者と分け合い、登録者を助けるためにナチスに抵抗した勇気ある司書たちの声を記録し、文学への愛を共有するためだった。」
ー著者の覚書より
本書は、第二次世界大戦中、オーディルという女性がパリのアメリカ図書館で仕事に奔走し、恋をし、友情を育み、罪を犯し、引っ越した先のアメリカのモンタナ州で、1980年代に中学生の小さな友達・リリーに出会い、過去を回顧しながらリリーと共に時を進む物語を、史実をもとに描いたフィクションだ。
本への熱意、愛情、それ以上に友人へそそいだ愛情、けれど自身の罪により引き裂かれた友情。
波瀾万丈というのが似合いの人生を、オーディルは生きてきた。
主にオーディルとリリーの視点から描かれる構成で、本書が何を伝えたいか、読み進めるにつれて引き込まれながら分かってくる。
"愛はやってきては去り、また来るものよ。本当の友人ができたら、大切にしなさい。手放してはだめ"
という本書の言葉が印象に残る。
それにしても、フランスもまた第二次世界大戦中はナチスに占領され困窮していたことは知らなかった。無知です、はい。
食料も配給制になり、市民は痩せ、困窮するごとに、友人や隣人に嫉妬の念を抱き、恐ろしい行動に走ってしまう人間の悲しい部分も描かれている。
これはまだ戦争は起こっていないけれど、コロナ禍の名残(私はまだコロナ禍中にあると思っているが)や物価高に喘ぎ苦しむ今の日本にとっても、他人事ではないと感じた。凶悪な事件が毎日絶えない。
嫉妬の念に、負の感情に支配された時、そういった感情は誰にでも宿ることを、そしてそんな時にはどうすればいいのか、本書は伝えてくれる。
ぜひ読んでみてほしい。
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最後までどうも乗り切れず…。ちょっと残念。
パリのアメリカ図書館が戦時中にどう対応したか、外国籍の図書館職員をどう守ったか、迫害された利用者へどう手助けをしたか、という話を、80年代後半のアメリカに住む少女が隣の老女から聴く、という形式。
戦時中、恋人関係、女性達の苦しい立場とそれによる狂った言動の末、、、。
しかし長い。
戦時中の秘密任務が始まるのがちょうど全体の半分くらい。
面白くなるまでが長くて大変だった。
カラスの手紙からようやく面白くなった。←言い方が悪いけど
リヒター三部作は、あの濃さを、あの短さに凝縮していたんだなあ。その凄さもわかった。
どっちが優れているか、という話ではなく。
アメリカのリリーが未来の明るい状況で終わったのでホッとした。
卒業式のスピーチや、義母との関係が良かった。
一方でオディールのパートは消化不良。
父の愛人が母の看護婦になって、謎の連帯感が生まれるのは興味深いところだったけど、マーガレットの部分は初めからもっと焦点をあてて書いて欲しい。
うまく読めなかったせいか、私はラストの展開が理解できず(;ω;)
マーガレットが写真の白い服の女性だってこと?これはオディールの若き日の姿?
オディールからのプレゼントとして、なんでリリーだけパリに行くのか混乱した。
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書店で、タイトル、帯、そして表紙に惹かれて購入し、読了。戦時下で、図書館や本を守るために努力した人達がいること、そして、パリ市民から見た第二次世界大戦が、新たな見方を教えてくれる。兵士や爆撃が表舞台に出ることは無く、市民目線で話が進んでいく。戦時の苦しい時期を読んでる時もですが、パリが解放されてからの展開に驚きを隠せない。でも、納得せざるを得ない。
戦争が、仲の良かった人々を物理的なだけでなく、心理的にも分断してしまう様を、登場人物を通してありありと感じさせられる。
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パリにあるアメリカ図書館。
フランスにおいて英語で書かれた書物を所蔵し、アメリカやその他の国々からきた人たちにとって憩いの場になっている。
この図書館は第二次大戦中、フランスがナチスドイツに占領されていた時も、閉館することなくサービスを提供し続けた。
そして、外出や施設の利用を制限されていたユダヤ人の人々に対して、密かに蔵書の貸し出しなども行うという抵抗もしていたという。
そんな実在する図書館と、記録に残されている実際に起きた出来事をもとに、フィクションの登場人物と実際に図書館で働いていた実在の人物を入り混じらせながら、戦争中に憧れのアメリカ図書館で働くことになった女性、オディール。
そして、1980年代のアメリカオクラホマ州の街を舞台に、高校生の女性リリーと、その隣人であり、年老いたオディール。二つの時代のオディールと、リリーの二人によって語られる物語。
そこには大人の世界、自立への憧れがあり、恋があり、友情がある。そして、嫉妬があり、裏切りがあり、悪意もある。
ナチスドイツは悪の典型として描かれるが、占領期に様々な理由で、かつての友人や気に食わない人たちを「密告」したフランスの人たち。ナチスドイツが敗れたあと、今度はそのナチスに協力して人たちや、ドイツ兵と親しくした女性を売春婦と呼び、髪を刈り晒し者にしたフランスの人たちも描かれる。
もう一つの時代をレーガン大統領のいた80年代にしたのも、ソ連を極端に敵視していた時代と重ね合わせることで見えてくるものがあるからだろう。
歴史物として読める事ももちろんだが、リリーの、そして若き日のオディールの、若さゆえの過ちの多い青春物語としても楽しめる。
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戦時下のパリでアメリカ図書館の司書として働きながら青春時代を過ごし、本当に戦争に翻弄されて、現代のアメリカで寡婦として過ごす主人公の波瀾万丈の人生を、回想と、アメリカでの隣家の少女の視点から描いた話です。
戦争は何もかも台無しにしてしまう。これまでに読んだ他の作品でも、この時代が描かれていて、それぞれにやるせない想いがしましたが、今回はなかなかキツかったです。
主人公の切なさが辛すぎて、小説は良かったのだけど、何か百点満点の評価にできなかった。…って思わされるくらい描ききってるから、満点なのかなあ?(モヤァ)