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村田沙耶香の作家性の片鱗がちらちらと見えおり、『孵化』で村田沙耶香といえばこれだ!という純粋な人間が出てきて嬉しかった。
恐らくこれも実体験に基づくアウトプットなんだろうな~他者との関わりの中で人格が形成されていくのは自然なことなんだと思う。
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倫理観を真正面からぶち壊してくる本。
正しさと言う言葉の本来の意味がわからなくなっていくし、考えの違いを個性としてだけ捉えていいのかと疑ってしまうような本だった。
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正しく狂っていてとても面白い
現代とは違う常識や価値観が正しいとされる中での話や、自分だけの世界を持っている話など、よくも悪くも極端に飛んでる話があって飽きない。
そうありながらも、どの話でも概ね共通して「自分らしく生きること」が大切だと読み取った。
もしくは「自分や世界に納得をして上手く折り合って生きる」ともとれた。
どの話も大好きで、選ぶのが難しい
いい小説
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初めての村田沙耶香作品で、どんな話なのか1ミリも知らずに読み始めてみたので、1話目で「…あっ、人食べんの?そういう感じか笑」と、新鮮な反応で読めて面白かった。
「…だって、正常は発狂の一種でしょう?この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」
の台詞が1話目の生命式にあるというのはその後の話を読み進めていくうえでもいいリードになっていると思う。
この本はいろんなところに載せているものを集めたようなので繋がりはないのかもしれないが、いろんな「正常な発狂」を集めたものであるという一貫性があると思った。
何が普通なのか分からなくなる。
私が思っている正常も発狂であることが分かる。
非常に頭と自己を混乱させるおもしろい作品だった。
コンビニ人間でもそうだったが、村田沙耶香は建物に代謝や内臓を見る。これは、建物を人間に寄せているというより、人間が建物的であるという目線である印象を受けた。
デカルト的な考え方と言えば伝わるだろうか。
人間の機械的な部分を描くために、建物を人間的に描いているのだろうか…と思ったり。
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(4.5)
とっても面白かった!普通って何?正常って何?世の中に溢れている常識なんて所詮何の理由もない社会や同調意識が生み出した空っぽの容器に過ぎないと心から感じさせてくれる短編集だった。どれも食欲や性欲にまつわるお話で、そんな当たり前すぎる内容だからこそ、変わった内容で進んでいく物語に興味津々だった。
特に心に残ったフレーズは「生命式」の「だって、正常は発狂の一種でしょう?この世で唯一の、許される発狂を
正常と呼ぶんだって、僕は思います。」今の正常が100年後には発狂するようなことになってるかもしれない。逆も然り。時代は回り回っているんだと思う。
あとは「大きな星の時間」の場面で、眠るってどんな感じ?と話し合ってる中で、もう一生眠れない体になってしまったという事実を知って泣いてしまう女の子。必死に慰める男の子に、女の子は言いました。「大人になったら、一緒に気絶しましょう」ロマンチックすぎて発狂しそうになりました(笑)どのお話も興味深くて、どこかロマンチックな雰囲気がある、不思議で素敵な短編集でした。
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自分の倫理観がねじ曲げられそうな12篇。
最初は拒絶反応を示していた設定も最後には「これはこれで…」と受容できてしまう。
異常に思えた他者の正常に感化されて、自身の正常が揺らいでいく。
ちょっとした恐怖すら感じるけれど、物語としては面白い。
嫌だなあと顔をしかめながら読んでしまった。
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『素晴らしい食卓』と『孵化』が印象に残った。高い物の方がよい物のように感じたり、人によって接し方を変えるのは多くの人に思い当たるのではないかと思ったからだ。読んでいると「えっ…⁉︎」となって二度見してしまうシーンがあり、食べ物の描写はなかなか気味が悪かった。でもクセになるおもしろさで、他の作品も読んでみたくなった。
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感想
食が隣り合う領域に侵入する時の薄気味悪さ。本能に裏付けされつつも人工的な要素を多分に含んだ人間の食事。意識されない薄皮が一枚剥がれていく。
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正常とは、この世で唯一許される発狂
自分のオールタイムベスト小説候補「コンビニ人間」と比べて遜色ない世間への冷めた眼差しに完全にやられてしまった
世間なんて薄皮一枚捲ればグロテスクな本質があらわになることは明らかで、皆そこから目を背けて生活してるんだよな
以下、特に食らった作品をあげる
「生命式」・・・少子化する近未来の世界で、食人とフリーセックスの文化が常識にすり替わる物語
「正常とは、この世で唯一許される発狂」というセリフ、心に刺さって離れない
「素敵な素材」・・・動物由来の衣類を身につけることへの抵抗感がほとんどない日本において、この問題設定の鋭さはすごい
死んだ人間の素材を再利用することが弔いという価値観は意外とすんなり理解できそうな理屈なだけに足元の常識が大きく揺らぐ感覚があった
「魔法のからだ」・・・自分の性体験って本来神聖なものなのに、「下ネタ」として消費するのが普通みたいな雰囲気あるよね
自分もそうやって私的体験をオープンにすることがコミュニケーションの正しい在り方なのかと思っていたけれど、性のことを開けっぴろげにすることが不可逆な行為なのだとしたら今後もそれをネタとして消費し続けるのが良いのか立ち止まらせてくれた
「孵化」・・・ペルソナを使い分ける「普通の人」と、多重人格ってグラデーションの問題で、バレないようにやってるかどうかってだけで二者を呼び分けてるのかな
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生と性と食。
「常識」の危うさ。
「地球星人」が大好きで他作品も…と手を伸ばしたが、大正解。もう、すっかり村田沙耶香さんの世界に取り込まれています。
今回は短編集ということで、特に印象に残った初めの3編について書く。
まず表題作の「生命式」。
「中尾さん、美味しいかなあ」
「ちょっと固そうじゃない?細いし、筋肉質だし」
もう、初っ端から狂ってて好き。面白すぎる。
そして、山本良い奴じゃんと思わせてからの死。
山本を調理しながら、食べながら、「変わっていった世界」に溶けてゆく私。
美味しそうな料理の描写に、こちらも溶けてゆきそうになる。
そういう、こちらの「常識」が簡単に崩れてしまうのではないか、と思わせる危うさが、堪らない。
いや本当に美味しそうなんだよなあ…。
「ね。山本って、カシューナッツと合うんですね。生きているうちは気がつかなかった」
いや当たり前だけどね?笑
こうもしみじみと言われてしまうと、「そうだよねぇ死んでから気付くことってあるよね」とつい同意したくなる。
そして、行きずりのゲイの男性が出してきてくれた精液をありがたく頂戴し、生命の源である海に脚を浸しながら、自らの体内に取り込む。
これだけ書くと本当に狂ってるんだけど、その通りなのだから仕方がない。
しかも、読むうちにこちらもその世界に取り込まれているので、何だか感動してしまうのである。
次に、「素敵な素材」。
「ねえナナ、そのセーター、人毛?」
「あ、わかる?そうそう、100%」
狂った世界らしいセリフ運びがもう、たまらん!
しかし、今既に、遺骨から人工ダイヤを作るサービスがあったりするよね。「死体である」という意識を薄めれば、現代でも受け入れられるんだよなぁ。
この危うさ。またしてもである。
私としては、美しく加工されている時点であまり抵抗を感じない。動物の加工品と同じだ。だからこそ、動物の加工品に抵抗感を持つ人の気持ちも理解できる。「同じだ」と思うからこそ、受け入れられる人の気持ちも、受け入れられない人の気持ちもわかると思うのです。
もちろん、それは「綺麗に加工されている」ことが前提だ。動物だろうと人間だろうと、「生きていた時の気配」を感じられると、拒否感が高まる。
この作品のすごいところは、その「生きていた時の気配」を遠慮なしに感じさせてくるところであり、そこにこそ「素材」の価値があると言わんばかりなところである。
人間素材から作られたものに拒否感を持つ恋人のナオキだが、父の皮膚から作られたベールの美しさと、そこに残る父の痕跡に自分の価値観を強く揺さぶられ、破壊され、「わからなくなって」しまう。
私もその内に、自然に、いつのまにか「わからなくなって」しまうのではないか、と思わせてくれる怖さ。それが楽しい。
そして3編目、「素晴らしい食卓」。
これこの本で最も好きです。
「食べることは、その食べ物の世界に洗脳されるということ」
「���たちは別の文化を生きているんだから。迎合したり、融合したりする必要なんて全くないんです」
名言の宝庫。
魔界都市ドゥンディラスの料理と、ハッピーフューチャーフードと、虫の甘露煮が並んだ食卓を前にして誰も箸を伸ばさないシーン、めちゃくちゃ面白い。
からの、圭一さんの名言。
「僕が久美さんを素晴らしいと思うのは、彼女の食生活は独立しているからです。彼女は決して迎合しない。そして自分の文化を他人に強要することもしない。」
多様性だとか、尊重だとかって言葉の意味について、改めて考えさせてくれる。これから何度も読み返して、吟味したいセリフである。
からの。
全てをぶち壊す私の夫。
セミナーに影響されて帰ってきた夫は、食卓に並ぶ多種多様な食べ物を全部ごちゃ混ぜにし、「まさに文化の融合だ!」と大興奮でかぶりつく。
ドン引きする他の家族との対比。めちゃくちゃ笑ってしまった。最高!
解説で書かれている、
「そんななか、すべてを許容し、多様性を尊んで、みんなの正しさの盛り合わせを主人公の夫が食べはじめ、そのひとがいちばん不気味で浅はかに見えるところで終わる」
これに尽きる。
「多様性を受け入れる」ことは素晴らしいことのはずで、全てを受け入れ褒めたたえ食べている夫は普通、「正しい」はずである。しかし、読みながらこの夫に感じる気持ち悪さをよく味わってみると、そうとは限らないのではないか、と考えさせられる。
ただ、この作品の「優しい」ところは、そんな夫もまた「愛しい」と感じてくれている主人公がいる、ということだ。
「世界を信じて世界に媚びている夫の姿は、私には愛しく純粋に感じられる」
主人公は徹底して、全てを受け入れている。
互いの文化や価値観、食べたいもの。それぞれが独立していて良いし、それらを全て拒否するのも、全て受け入れるのも自由で良い。この考え方自体を受け入れるも受け入れないも、自由である。
“あなたはどうする?”と問われている気がしてくる。
3編だけでもこんなに長々と語れてしまう短編集。密度がすごい。既にまた読み返したくなっている。
「正常は発狂の一種でしょう?この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」
恐ろしいほどの名言。
こうして村田沙耶香さんの世界にやられてしまっている私は、「正常」な人間のはずである。きっと。
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表題作のインパクトが強くて、他の作品の印象が薄く感じるのが残念。
ラストの「孵化」で笑ってしまって、本を閉じた後、なんだか落ち着かない
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「人間のことが好きか嫌いか」と問われれば、恐らく作者は「嫌い」と答える部類の人だ。だが、生態としての人間は好きなのではないか、とも思う。
また、「世間のことが好きか嫌いか」と問われても、恐らく「嫌い」と答えるような気がした。だが、私が想定する「世間」とはすなわち「社会」のことであり、作者が想定する「世間」が別のもの……例えば「自分が見えている世界」として受け止められれば、その答えは変わってくるようにも思う。
陳腐な言葉で彩られた感想など出ないのが常だ。だが、この本を読んで、自然に湧き上がってきた言葉がある。
綺麗に生きていきたいね。
綺麗って、なんだろうね。
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ジワリジワリと影みたいに黒くて薄気味悪いものが近づいてくる感覚。
嫌いじゃない。
むしろ好き。
何が正常で何が異常なんだかwww
「正常は発狂の一種でしょう?この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います。」
この言葉で納得www
☆生命式
☆素敵な素材
☆素晴らしい食卓
☆夏の夜の口付け
☆二人家族
☆大きな星の時間
☆ポチ
☆魔法のからだ
☆かぜのこいびと
☆パズル
☆街を食べる
☆孵化
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毎度驚かされる村田沙耶香さんワールド。
どうしたらこんな世界を思いつくのでしょう。
自分には想像できない世界に入り込めるのが本当に有難い。今回も素晴らしかったです。
タイトルでもある「生命式」は、読んだ後に表紙を改めて見ると、なるほどな。と思います…
その他のお話もとても素晴らしくて、
特に「魔法のからだ」と「パズル」は個人的に好きでした。
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村田沙耶香さんは「コンビニ人間」しか読んだことないけど、これもすっごい独特の世界観だった、、、!
個人的に好き(得意)ではない世界観なんだけど、独特の生々しさと残酷さと気持ち悪さがクセになる。怖いんだけど可笑しい。
「素晴らしい食卓」がいちばん好きだった!