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山形の最後のデパートとなった大沼の閉店までの歴史をまとめた1冊。
大沼が開店する300年以上前の山形市の中心地の歴史から現在まで。よくここまで取材してまとめて頂いたのかと感嘆しました。
山形駅前、七日町から人がいなくなり郊外に流れていくのをリアルタイムで体感した身なので、本書に書かれている平成以降の歴史は読みながらタイムスリップした気分になった。
また、自分が生まれる前の昭和の話は自分の親達はそこで描かれていた賑わいのある町の中で青春を送ったのだなと思い、親にこの話をしてみたいと思った。
山形に縁がある人は是非読んで欲しい。
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『さよならデパート』なのでデパートの栄枯衰勢の物語です。実際、山形の地方デパート、大沼の閉店がエンディングで『さよならデパート』です。しかし、冒頭が山形城下に最初の繁栄をもたらし、そして一代で消えていった最上義光から始まっているように、地方都市の江戸~近代~現代のクロニクルでもあります。104回夏の甲子園の優勝が仙台育英で、優勝旗が白河の関を超えたことが繰り返し報道されていますが、単なる関東と東北のボーダーという意味ではなく「白河以北、一山百文」まで触れないと東北の人々の今回の歓びを理解するのは難しいのでは、と思ったりします。山形の近代は、近代日本の繁栄をいかに自らのものとして取り組むか、という地方都市全体に共通する葛藤の濃縮版でした。軍だったり、東京の文化だったり、東京の資本だったり、そしてグローバル資本だったり、常に内側と外側の関係で物語られています。逆に封建時代の時が紅花などの地元産業がフューチャーされていたことが印象的でした。つまり地方を市場としてでしか捉えることができないとデパートは存在できなくなる、これ山形だけの問題ではないと思います。市場だけではなく、産業との連携が、もはや「地元デパートがない県」山形以外の「まだ地元デパートがある県」の大切なテーマなのかもしれません。
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山形を代表する(していた)老舗百貨店である大沼。320年の歴史を突然閉じた。山形で商売し、大沼友取引があった著者による丁寧な取材と、思いのこもったインタビュー。単なる歴史の記述でもないし、裏話の暴露でもない、とても真摯なノンフィクション。江戸時代からの地域の事情を踏まえて書かれているところも納得しやすい。地域での「商売」の本質を描いているとても貴重な一冊。
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開戦:「商い」という戦いの始まり
全滅:明治維新の皮肉
鬼:嫌われた英雄
黒い雲:光明としての勧工場
花が咲く:日露戦争に散った者たち
炎上:街がみんな燃える
成る:待望のデパート誕生
挫折:のしかかる太平洋戦争
双頭:2大デパート「大沼」「丸久」
旅せよ日本:観光ブームの裏側
摩擦:中小商店との軋轢
新興:駅前の覚醒
激突:スーパーマーケット来襲
事件:大型店戦争
灰から灰へ:大沼デパートの焼失
炎は消える:昭和に消えた男たち
脱落:平成の大穴
家族:震災の宣告
さよならデパート:老舗看板の崩落
日曜日:今日、全て終わる