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傑作である。
ブッカー賞の受賞は逃したが、それは多分に政治的色彩が強いためで、文学的レベル、今日的問題を扱っている点、その問題の掘り下げ方、ドラマツルギーどれをどっても一級である。よみだしたら止まらないページターナーですらある。(バンバン場面が進むミステリーのようなストーリテリングではありません。念の為)
アメリカに留学中のパキスタン系イギリス人の女子学生と、裕福なパキスタン系の若い男性の出会いから話が始まる。
この二人を中心に話がすすむかというとそうはならない。この二人の家族の何人かが語り手となり、視点を変え、時間がたち、話は進んでいく。現代のイギリスの抱える国籍の問題、イスラム国、テロリストなのか違うのかどう判断するのか、イギリスにおいてイスラム教とはイギリス人に同化して生きるべきなのかそうでないのか。などの様々な問題や課題を読者に突きつける。
そして圧倒的なラスト、これからも繰り返し読みたい傑作に出会ってしまった。
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イギリスからイスラム国へ出国した弟と残された姉たちのその後。
孤独を抱え、知り合いの影響から考え方を変えていく弟のパート以降、ページをめくる手がとまらず、そのまま辿り着くラストに衝撃。
イギリス社会とムスリム系移民の“いま”なのだろうか。
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びっくりした。いやー、「びっくりした」としか言いようがない。文体は軽やかで、若い年代の登場人物たちやその恋愛模様はポップでさえあるが、アメリカに入国する際の取り調べに始まって、国籍、国家、ムスリム、そしてISなど、複雑で多層な問題がこれでもかと折り込まれて、クラクラしてくるほど。この展開。この結末。そうか『アンティゴネー』なんだ。いやー、びっくりした。わからないところもたくさん残ったが、優れた作品だということがよくわかる。
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普通の男の子が、どうやってISのシンパとなり、故郷を捨てるのか。
そのルートが語られる小説は貴重だと思う。
イギリスに住むムスリムの人たちの葛藤が描かれて興味深かった。
ここからは残念な点。
次々と視点が変わるのは途中まではワクワクしたが、途中から誰に感情移入するべきかわからなくなってくる。
3人の姉弟がもっと絡んでくるとよかったのでは?
強い絆がもう少し読者に手にとるようにわかるともっと心揺さぶられたのではないかと思う。
3人の姉弟の関係性が今ひとつピンとこないのが残念。
カラマットの葛藤やテリーとの関係も同様。最後にカラマットの章は必要だっただろうか。カラマットという人物像が焦点を結べないのは私だけ?
最後のシーンも唐突に思えた。
とここでダメ出しをしたとて、だから何?ってことはわかっています(笑)
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やり方によってはウィンウィンで着地できたかもだけど難しいよね。こっちを立てればあちらが立たず。妥協させることの難しさが知らされる。
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久しぶりに読んだ海外小説。重たいテーマで、登場人物みんながどうしてこんなことになってしまったのだろうと苦しむ中で、自分の信じる道を貫く妹の一途さが力強く、一方で家族を守ってきた姉にも別の強さを感じた。
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帰りたいと願う、それは自分が還りつく家、国、信条。
パキスタン系イギリス人の家族、ジハード戦士だった父親は帰ってくることなく死亡。その後病気で祖母も母も亡くなり、姉と双子が残され監視と差別の下で成長する。
気丈な姉、反発する聡明な双子の妹、詐欺師のような男に父親へのあこがれを植え付けられ自滅されられる弟。
姉のイスマ、弟のパーヴェイズ、内務大臣のカラマットの描かれ方は秀逸だと感じた。特に弟のパーヴェイズの章は現代のイスラムを実感できる。
反面、双子の妹(パーヴェイズの姉)アニーカと内務大臣の息子・恋愛一直線エイモンの国家を巻き込んだ怒涛の展開のメロドラマ的・漫画的な描かれ方が私には鼻についてしまった。三章までとそれ以降が別の作品のよう。
ベースがギリシャ神話のアンティゴネー(未読なのでwikiを読みました)ということで納得…うーん、納得?
追記)読み終えたときは結末に唖然としていたけれど、ここ最近の現実に目を向けるとその理不尽さに納得してしまった。今、イランで起こってることを悲しく思う。
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姉イスマと双子(美しい妹アニーカと音源撮りが好きな弟)、そしてジハードだった、既に亡き父。イギリスて暮らす姉弟が母と祖母が立て続けに死んで、姉はアメリカに留学、弟はなにやら行方不明とバラバラになっているところからはじまる。父がイスラムの戦士だったために迷惑している雰囲気で、イスラムに傾倒していない家族。弟を心配し大臣の息子を介して事態が動いていく。
イギリスって世界有数の監視国家なんだ。知らなかった。でも、国にビザやパスポートに力及ぶ管理されたら言いなりにならざるを得ない。でも、イギリスでは差別的な扱いを受ける…。美しい双子と能力の高い姉、みんな幸せになってもよかったのに。父親への慕情を上手く突かれて海外にまでいってしまった浅慮が一番の失敗なのか。
最後のシーンはあまりにもわかりにくかったので何回も読んでしまった。悲劇を下敷きにしているのでこの結末なのかな。
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原題は"Home Fire"。「炉の火」、それが象徴する家庭生活を指す。
物語は5章からなる。それぞれ、主な登場人物の名前を冠する。
それはパキスタン系イギリス人の2つの家族が交錯する物語。共通点と相違点を持つ彼らが絡み合い、反発し合い、怒涛の終盤へとなだれ込む。
第1章は「イスマ」。28歳、イギリスからアメリカに渡ろうとしている。学生の時に親を亡くし、学業を中断してまだ幼い双子の弟妹を母親代わりに育ててきたが、どうやら双子の手が離れ、再び博士課程で学びなおそうとしているのである。だが、彼女の旅は順調ではない。ムスリムの出国審査は厳しかった。散々待たされた挙句、予定のフライトは逃す。
学業を再開したいという意思に嘘はなく、彼女自身は取り立てて危険な思想を持ってはいなかったが、その経歴は真っ白というわけではなかった。かつて父親がジハード戦士として紛争地で戦い、グアンタナモ収容所に移送される途中で病死していたのだ。
どうにかアメリカに渡った彼女は、学生生活を始める。そしてイギリスから来ている1人の裕福な青年と知り合う。実はイスマはその青年の父を知っていた。ムスリム出身だが、ムスリムに厳しい政策を取り、内務大臣にまで上り詰めた男だということを。
第2章はイスマが知り合った青年、「エイモン」。経営コンサルタント会社を辞め、しばらくふらふらしている。父ほど野心家ではなく、のびやかな明るさを持つ。ふとしたことからアメリカでイスマと出会い、妹アニーカの写真を見て、その美しさに目を引かれた。彼は、イギリスに戻った後、イスマから託された荷物を届けることを口実に、アニーカに会う。そして彼は恋に落ちる。恋に落ちた彼は、どんな困難も乗り越えられると錯覚している。それが悲劇を加速させる。
第3章は双子の一方の「パーヴェイズ」。若干、オタク気質である。アメリカで学ぶことを決めた長姉イスマ、イギリスで法律を学んでいる双子の姉アニーカに比べると、自分の行く先が見えずにいる。まだ若く、ちょっと背伸びもしたい、ちょっと自分を大きく見せたい、そんな年頃でもある。その心の隙に、危険なものが忍び寄る。こんなはずではなかったと気づいたときには遅かった。だが、彼はまだ引き返せると思っていた。その無邪気さは凶悪さとは程遠かった。
第4章は双子の姉、「アニーカ」。美しく、勝気な彼女。双子の弟は人生になくてはならない存在だった。その子の様子がどうもおかしい。何とか弟を救わなければ。彼女は思い切った手に出る。
第5章は英国内務大臣「カラマット」。エイモンの父である。元はパキスタン出身のムスリムであったが、国家のためにはムスリムに厳しい立場を取ることも厭わなかった。そのため、かつての同胞には嫌われていた。だが、そうしてきたからこそ、内務大臣にまでなれたのだ。彼は自信に満ち溢れている。
そこに国家に弓引く愚かな小僧と、その小僧の処分に異議を唱える目障りな小娘が現れる。あろうことか、自分の息子はその小娘に味方している。
力で抑え込もうとするカラマットだが、息子の真剣さを図り損ねた尊大さが悲劇の炎に油を注ぐ。
著者は、ギリシャ���劇の「アンティゴネー」から着想を得ている。国家の反逆者となり、正式に葬られることを禁じられた兄に弔いの儀式をしたため、地下の墓地に閉じ込められる刑罰を受けて自死する乙女の物語である。そこにあるのはいわば「肉親の情」と「国家の法」の対立である。
著者はこの物語を現代版にするにあたり、ムスリムに対するイギリス社会の厳しい目や、ムスリム間での立場の違いによる反目、そして危険なテロリスト集団に参加してしまう若者の心情などを巧みに織り込んでいる。SNSやスカイプが物語に重要な役割を果たすのも現代が舞台の作品ならではだ。
複雑化しつつある現代では、対立の構図も単純ではない。割り切れなさは古代以上だろう。
物語は緩急をつけて展開され、最後は一気呵成に駆け抜ける。
この後、カラマットは政権での地位を維持できるのだろうか。
イスマは精神の均衡を保つことができるだろうか。
衝撃と余韻がこだまする。
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『日本人にはわからない、英国籍ムスリムの生きづらさ』
かたやジハード戦士だった父、かたやエリート政治家の父を持つ英国籍ムスリム2世の交流を通して、ムスリムの生きづらさを描いた作品。周りの目を気にせず生活できる今の環境に感謝!
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イギリスのパキスタン人移民の話。故郷に帰ったときに従兄弟から「俺はパキスタン人だがお前はパキだ」と言われるとこが印象的。
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テロ組織に入った青年の行く末を、その家族や関係者の立場から語られていく話。
日本に住む日本人には、深くは理解できない状況であり、
しかし、やるせない。
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ジハード戦士だった父親に憧れ洗脳されてイスラム国に参加した弟、姉二人の苦悩、特に双子の片割れのアニーカは彼を帰国できるように運動する。5人の登場人物の視点から、イギリスの移民政策や国籍問題、家族の絆など多くの問題を孕んだ物語。
最後の弟の遺体の傍で繰り広げられた爆破と抱擁のシーンの衝撃、実はフェイクだったというオチではいけないのだろうか?
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はからずもラストに衝撃的な出来事が起きるという評を呼んでしまっていたので、身構えながら読んだがこれは衝撃だった。
そして移民としてイギリスで暮らすムスリムの人々の生きづらさは他人事とは言えない気がした。
移民、難民、外国人労働者を恐怖で排外しようとする状況はイギリスも日本も変わらないな、と。
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父親という存在に憧れを抱き、洗脳されてISに入った弟、パーヴェイズ。実際のニュースでテロや爆撃などの犯行声明などを目にすると、どんな背景でその事件は起きたのだろうと思うようになった。事件を起こした人は彼のように、それとは縁のなかった、誰かの愛する兄弟や子供だったかもしれない。
二重国籍に関する法律が、実際にイギリスに存在すると知って、より複雑な気持ちを抱いた。恐怖の連鎖は悲しい。
一方でこの物語を例に考えると、愛をもって行動することも勇気がいることだと、思った。(愛を選択し、二重国籍を全ての人に認め続ければ、悪意のあった罪人も含まれてくる)