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近代に突入しかけている異世界にて、転生した災厄の少女が世界を混迷に巻き込んでいく物語シリーズの1巻である。
ヤバい女(※色々な意味で)を描かせた一級の七沢またりさんが、今回はナチュラルにクレイジーな少女を主人公に据えて近代戦争物を描いてくれている。
子供のように純粋に、純然たる悪意で命を刈り取る様は、おぞましくも痛快無比である。
政治の世界でぬくぬく過ごすお貴族様も、士官学校生を舐めた現場の軍人も、狂信的な異教徒も、高圧的な地方貴族も。
みんな誰しもが「純粋な悪意による暴力」には敵わない。
世界を踏み潰す様は、癖になる楽しさがある。
これぞまさに最強系。七沢またりさんのファンキーで端正な物語がまた読めて喜ばしい限りである。
作品構造的にはダブル(またはトリプル)主人公に近いファンタジー歴史絵巻であり、近代戦争物でもあり、呪いの物語でもある。
その中心で呪いを振りまくミツバの様が描かれつつも、物語の全体像はかなり規模感がデカい。
それでいて、ミツバ視点が疎かにならない三人称の塩梅はシンプルにお見事である。
大変楽しかった。
ネット連載版には触れていないため初読だが、これは大変に良い作品である。
文句なしに星五つ満点、個人的には星八つで評価したい作品である。
またEURAさんのイラストも素晴らしいのだ。ここで確実に星1~2個は加点している。
表紙もそうだが、幼女戦記をさらに邪悪にしたかのようなカラー絵デザインや、銃口を突きつけられたミツバを飾る黒バックの暗闇、異教徒によって埋葬されたミツバの月夜の姿など、どれも本当に一級品。
改めて確認を取って考えを変えたので、星九つ評価としておきたい。
これは良い書籍化である。おそらく、加点できる最高位クラスだろう。