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前作『サーチライトと誘蛾灯』の魞沢とはまた違った魞沢の魅力があった。いや、違ったというか別の印象も加わり膨らんだというのが正しいかもしれない。魞沢は「飄々としつつも真相を見抜いている」くらいにしか感じていなかったのだが、「真相を見抜いているのは、自分の中のブレない芯と相手に対する真剣さゆえであり、相手や周りに思いやりを持って気を遣うことで飄々としている」ように見えるという印象になった。ただ、もしかしたら再読してみたらまた印象が変わるかもしれないし、続編が出てきたら変わるのだろう。それだけ今回の短編は前作とは違う魅力溢れる5篇だった。
「蝉かえる」
冒頭では魞沢らしいやり取りがあるが、古いしきたりとそれ故の不幸に心が締め付けられる。解き明かされた真相から想像する10数年間はどんなものだったのだろう?
「コマチグモ」
母を想う娘の純粋な気持ちが強く胸を打つ。娘の決意と意志に愛を感じるが、もしものことを想像すると結末に安堵する。
「彼方の甲虫」
前作の登場人物が再登場して少しほっこり。悪意と善意を強く意識させられた。最終話にも関連があり、そこで魞沢の心の芯の部分が伺い知れる。良いエピソードだった。
「ホタル計画」
今までとやや違う印象を受けつつ読み進める。なんだろうと思うのだが、今までのような魞沢の登場がない?最後まで読むとそうだったのかと思うのと同時に、魞沢を知る上で欠かせないエピソードでこれもまた良かった。
「サブサハラの蠅」
友情、愛情、覚悟、決意。今までのエピソードが色々と思い出され、そのどれもを強く意識させられた。魞沢自身の人間性、友人の中での魞沢の人間性、共に最高だな。
ついつい魞沢のことはがり書いてしまっているが、物語としてどれも驚きや深みがあって非常に楽しめた。でも、やっぱりまた魞沢に会えるのを楽しみにして、次作を期待して待っておこう。
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短編ミステリーとして充分面白く読んだことは前提として。
主人公のエリ沢のことを「心優しい青年」と書いてあって前作を読んで特にそう感じてなかったので、そうだっけ?と思いつつ読んだ(自分の意地の悪さを感じつつでもある)その視点で読むと優しいか優しくないかで言えば優しいけど…。
「心優しい」ってリードに書かれちゃってるほどには「ああ、エリ沢くんって優しいな」とじーんと来るほどのものは感じられなかった。
まあ、自分の感受性に問題あるのかなと思ったり思わなかったり。感受性っていうより、そこに引っ掛かる性格に問題があるのかもしれない…。
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これ、2作目だったとは…
昆虫好きの主人公が謎解きするミステリー短編集。どれも少しゾワっとする感じのソフトなミステリーで、表紙のイラストの世界観なので、ミステリーの割にほんわかします。
1作目も読まなくちゃ。
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初めて読んだ先生の作品。虫好き青年の時に切なくも心温まる作品が詰まった短編集でした。
どれも捨てがたいですが、私はタイトルにもなっている蝉かえるが好きでした。
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「サーチライトと誘蛾灯」に続く、昆虫オタクの青年・魞沢泉が登場する短編集。
前作も独特な雰囲気を持った面白い作品だったが、本作は前作にあった脱力するようなノリ突っ込みが適度に抑制され、全体的により洗練されたユーモアとペーソスを感じた。
■蝉かえる
女人禁制やセミ供養。女性から渡された別刷りのエッセイから過去の出来事と現在の人物がつながる推理が見事。
■コマチグモ
子グモに食べられる母グモ。水たまりに産卵しようとする赤トンボを驚かせるために石を投げ続けるシーンが面白い。少女が持つ優しさと隠している激しさが印象的。
■彼方の甲虫
スカラベ(フンコロガシ)のペンダント。たった一日で友情が出来上がる様子が微笑ましく愛おしく、その後に起こる事件がやるせない。
■ホタル計画
ゼブラフィッシュとホタル。サイエンス雑誌でつながる3人の登場人物の関係が切ない。意外性溢れた展開に驚く。詩情旅情も溢れこの話が一番好き。
■サブサハラの蠅
アフリカから持ち帰ったツェツェ蠅のさなぎ。病で大事な人を亡くした医師の心情が哀しく、彼を立ち直させる魞沢の不器用な友情が好ましい。第3話とリンクするところも友情の話として深みが出た。
5つの話ではそれぞれ立ち位置は違うものの、いずれも魞沢の人間性がよく分かる話になっており、加えて、昆虫に関する知識を駆使した謎解きというだけでなく、それが、地方に残るタブー、母子家庭の母と娘、外国人に対する偏見、遺伝子組み換え、顧みられない熱帯病といった背景とうまくリンクして各話の内容を豊かにしているように思った。
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5話の連作短編集で読みやすかったです。
虫にまつわる事件を冷静に解いていく主人公。
それほど「虫」は強調されておらず、さりげなく登場します。
各話は1話完結となっていますが、ほんのり繋がっています。
優しい物語でした。
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前作が好きだったので購入
前回は登場人物の掛け合いがよく物語にすぐ引き込まれ、一気読みしてしまいましたが、主要人物のエリサワが謎すぎたのが気になったところ。
今回はその謎だったエリサワの話が少しずつでてきてくれたのでとても嬉しかった。
こちらも即読了です。
個人的には
コマチグモ、彼方の甲虫、サブサハラの蝉
がオススメです。
ミステリーですが、ちょっと切なく、最後にあったかくなる物語が詰め込まれてます。
次巻も期待です!
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昆虫好きの青年・魞沢泉(エリサワセン)を探偵役にした連作ミステリの第2弾は、「蝉かえる」「コマチグモ」「彼方の甲虫」「ホタル計画」「サブサハラの蝿」の5篇。
ふたつの賞を受賞したのも頷ける出色の出来栄え。前作で気になったつまらない親父ギャグのようなくだりは鳴りを顰め、単なる虫に絡んだ謎解きだけじゃない、作者が意図した主人公・魞沢の人物像が少しずつ明らかになっていく物語に仕上がっている。
魞沢は探偵としてしゃしゃり出るのではなく、大好きな虫の蘊蓄を述べたり、鋭い観察眼に基づくひとことでさらりと事件の本質を捉えてみたりして、それが結果的に解決に結びつくのが絶妙な塩梅。
どこかのほほんとした物語運びながら、地方の因習、母子家庭、ゼノフォビア、遺伝子組み換え、医療格差など、現代社会の問題をテーマとして据えることで、そこに人間の悲しみも同時に描き出すという深みすら感じる内容。
「きれいごとのひとつも口にしなければ、こんな世界、生きていけないじゃないですか」
と漏らす魞沢の胸の内が切ないな〜。
正直、一作目でもういいかなと思っていたところもあったけど、読んでよかった。
第3弾が出たら必ず読みます!
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連作短編集の第2弾。
読みやすく面白い、凄惨な描写は無く気軽に読めるけど登場人物の心に寄り添ったミステリー。
探偵役のえりさわが飄々として掴みどころがない軽い感じかと思っていたらアツい気持ちがあるのも良い。
収録されてる5作全て良かったけど特にホタル計画が面白かった。
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とても面白かったです。どこか冷めた印象のエリサワセンという昆虫好き青年がいくつかの事件を解いていくのですが、最終的にはどの話も愛情や温かみを感じさせるところに終着するところが良かったです。1作目も読んでみようかな。
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すごく面白くて、あっという間に読んでしまった。
何かで良いと見て気になっていた。
当たりだった。
ミステリーとか謎解きとかのカテゴリーらしいけど、探偵でも刑事でもないし、短編だし、私の感覚ではあまりそのジャンルの感じがしなかった。
普通の人がとある出来事を受けてどう行動したのかをその人の代わりに説明してあげる。
特別感がなく、普通の日常と普通の人がそこにあるのが良い。
人が前面に出ていて、優しさが溢れているのが良い。
主人公というか、起ったことを語るエリサワ君が昆虫好きの人で、どれも昆虫に絡んだ話になっている。
そして、それぞれの短編が繋がりを持っている。
アイデアも構成もちゃんとしていて、専門的な内容も盛り込まれていて、よく出来ているなぁと感心してしまう。
前作『サーチライトと誘蛾灯』とも繋がっているみたいだけど、それを読んでなくても問題なく読めた。
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シリーズ② 今作も謎解き、物語ともに素晴らしかった。3話目で『今作のベストはこれか!?』と思ったら、5話目でさらに泣かされた。前作よりさらに魞沢の人物像に肉付けされており、あとがきを読んで納得。4話目で魞沢のルーツに触れていて、もっとこのシリーズを読みたくなった。昆虫の不思議ももっと知りたい。
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出てくる地名とか建物とか名前とかやや難しかったけど、話しは凄く良かった。凄い!とか共感する!とか悲しい、とかそうゆうのでは無く、ただただそうだったのか、と思わされる話しだった。読後感が良かったと思えた作品だった。
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友達の少ない昆虫好き青年魞沢泉、ぼけっとしていそうだが、ときに鋭く、人を想いながらも絶妙な距離感で真相を紐解いていく。
普段読むミステリと違い、推理というよりは人と人の関わりや偶然の重なり、不思議な縁、そこから何が起きたのかという面白さ。
アイ・ベッグ・ユア・パードン?
素敵やん
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前作の「サーチライトと誘蛾灯」が良かったので楽しみにしていた第二弾。5篇の短編集。
いや~やっぱり面白かった。
魞沢 泉のキャラクターがいい。飄々としているけど、大好きな昆虫については饒舌。人見知りだけど、実は昆虫と同じように人にも好意的に興味がある。そして、まっすぐ。
どの話もラストは切ない。皆が切実で真剣だからこそ切ない。
どの話も大好きだったけれど、特に
「彼方の甲虫」での、明日が来ることと、僕に明日があることは、同じではない。という言葉が胸を打つ。そして、この話での友情が「サブサハラの蝿」に繋がってハッとさせられる。
「サブサハラの蝿」では I beg your pardon?(もう一度言ってもらえますか?)の意味が変わるのが切ない。