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小川洋子を前にするとどんな自分の文章も気に入らなくて何も書けなくなるな。
読むことができてよかった。新装版を出してくれて本当にありがとうございました……。
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完璧な病室 小川洋子
『ダイヴィング・プール』
4作の中で印象に残ってる、お気に入り。
小川洋子さんの中で少し稀有な作品に感じた。
大きな括りでいうと青春小説なのだろう。
主人公の表の部分は。所謂、ピュアさ。
心の中に抱えている部分は青春小説では表現する必要のないはず。所謂、ダークさ。
ダークさとピュアさの対比が興味深い。
対比という構図になっているが、混合されていく。
この感覚を表現されている所が、小川洋子さん流の青春小説なのだろうか。
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病に冒された弟と姉との時間を描く表題作他、デビュー短篇を含む最初期の四作収録。みずみずしい輝きを放ち、作家小川洋子の出現を告げる作品集。新装改版。
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表題作「完璧な病室」
大変美しい作品だが、グロテスクさ、なまなましさが散りばめられ、読む方も驚きや悲しさなどさまざまな感情が湧いては消えていく。小川洋子さんらしい作品で、代表作の一つと言えると思う。
「揚羽蝶が壊れる時」
詩が掲載された雑誌にはさまれた女性の写真を抜き取った時と、最後のページで揚羽蝶の標本を手にしたときの描写に興奮した。主人公の心臓が高鳴る音が聞こえてくるかのような、文章の疾走感が心地よい。
「冷めない紅茶」
“にじむように”美しい元図書館司書の女性と謎めいた終わり方がよい。好きな作品。
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表題作他、「揚羽蝶が壊れる時」「冷めない紅茶」「ダイヴィング・プール」収録。小川洋子さんが書かれる物語は静寂に満ちている。その中にそっと一匙の残酷さと透明な狂気が含まれていて、不思議な官能性を孕む。小川洋子さんは沢山の作品を書かれていますが、個人的に代表作を選ぶとしたらやはり「完璧な病室」を選びます。短い物語ですが、この作品には小川洋子さんの全てが詰まっているように思います。儚くて清潔で美しく、死の色香を漂わせた、真っ白な花。そんなイメージがあります。
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デビュー作の「揚羽蝶が壊れる時」を含む、初期の四作品を収録。
「揚羽蝶が壊れる時」の中で、「正常と異常、真実と幻想の境界線なんてあやふやで、誰にも決定できないもの」という文章に、小川作品の原点を見たような気がします。
ものすごく優しい視点で描かれた、グロテスクさと美しさの混じり合った独特な世界を堪能することができました。
四編とも死や喪失感を思わせるような作品なのですが、表題作の「完璧な病室」が特に良かったです。
21歳で亡くなった弟の記憶、安らかな病室、張り詰めた空気。
「完璧」という言葉がとてつもなく哀しく聞こえます。
銀杏の黄色から雪の白へと移ろいゆく季節の中で、息もつけないくらいに静かな美しい世界に身をゆだねることができました。
あとがきもとても素晴らしかったです。
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終始、肉体も心もともに、グロテスクで、生々しくて、不穏で、でも静謐で、美しくて。
筋肉、指先、感情。
何かの始まりさえ、生々しい感情のさざなみに溶け込ませてしまう。
なんだかんだ優しく、時に残酷に、主人公たちの、何かが欠如してしまって、死を、喪失を、心にぽっかり空いた穴を埋めていく。
あとがきまで、これら四つの短編と同じくらい生々しくて不穏ででも最後には光がさして。
静謐が身体を、読者である私の身体を貫いて、一塊が胸の中に残り、一塊は風になって消えていくような。そんな読後感でした。
なんだろう、この満足感は。それでいて、もっと小川さんの小説に浸っていたいと抱きしめたくなる感情は。
表題作の「完璧な病室」と最後の「ダイヴィング・プール」に既視感があった。なんだか語っていることは似ているようで似てないようで、既視感があると言いつつラストの描写は相反していて。
何年かあけてまた読み返したくなる。
新装版が出るほど愛されるのが納得だ。
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"完璧な病室"の最後のページの、はっきりとした着地点はないけどどこかスッキリした心地の良い感覚が、川端康成を彷彿とさせた。
行為の比喩的表現が強くて面白かった。
"揚羽蝶が壊れる時"では、どちらが正常でどちらが異常か、判断がつかない主人公。傍からみれば痴呆症の行動の方が明らかに異常ではあるが、主人公の視点からみると逆であり、そうやって考えを巡らせるだけの余裕があり、羨ましい。
私的には、"冷めない紅茶"が一番好きだった。
中学の同級生の葬儀で同窓会的に再開したK。当時仲が良かった訳では無いが、話が合ったのか、連絡先を交換して後日、家を訪ねる。当然のようにKの妻に向かえられたが、特別違和感はない。K夫婦の出会いは、実は中学生だった当時の図書館司書だった。年齢差はあれど、美しさに惹かれた。
「いろいろな方が入ってこられましたけど、特別印象に残っているという方は一人もいないのです。不思議なくらいに。最後の最後の時には、みなさん人間として一番純粋な部分だけを残して、あとは空白になってしまうんですね。性別とか個性とか社会的地位とか、他人から自分を区別する要素なんて無意味になるんですよ。ですから『新天地』に存在する平等は、それはもう完璧なものだと思います。」p147揚羽蝶
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日常の中で鈍り忘れていくような繊細な感覚や感情を、丁寧に拾い上げて慎重に言葉に起こしていくような文章に感情を揺さぶられた。静かで厳か、それでいて人間の持つグロテスクさも正面から的確に言語化されていて、切なさや哀しさ、それを表現する言葉の美しさに感動すると同時に、罪悪感や身に覚えのあるグロテスクさに居心地の悪さも感じてしまう。白く美しいのに、どこか残酷で、官能的で、死の香りがする文章たち。
『完璧な病室』
病気で弱っていく弟とそれを見守る姉。
病院や病室の持つ無機質で完璧で確りとした清潔さと、少しずつそれに似付かわしくなっていく弟の様子。
病室以外での生活の煩雑さや主人公が感じている汚らわしさとの対比も相まって、弟の清らかさ、穏やかさが一層哀しい。
主題とは異なるかもしれないが、個人的には主人公とその母の生活についての回想シーンのリアルさが非常に好みだった。
死にゆく弟への、「いとおしさ」という言葉だけでは表しきれない、しかしそれ以外の言葉も見つからない感情と、それ故のどうしようもない切なさや哀しさが痛い。
『揚羽蝶が壊れる時』
正常と異常の境目はほんの紙一重でしかなく、現実と幻想の境目は非常に曖昧で、誰に決めることができるものでもない。個人的に似たようなことを考えていたことがあり、印象に残っている。
主人公自身の中にある異常と揚羽蝶の女性、それにまつわる不安や怒りの描写にはほかの作品であまり実感しなかった燃えるような昂る感情を感じられて新鮮だった。
『冷めない紅茶』
読了した瞬間の感想は「怖い」だった。この完璧に美しい夫婦に痛ましい出来事が付与されてしまうのが怖かった。明確な答え合わせがされないこの作品はとても印象深かった。
他に何も言葉が出てこないし、言語化してしまいたくない。ただ、夫婦がどうかこのまま美しく、穏やかであってほしい。すごく好みの作品。
『ダイヴィング・プール』
居心地が悪いものの、共感できてしまうような生々しい残酷さを持った作品。純粋であるとは時に傲慢なことであるのか、それとももうこの時点で濁ってしまっているのか……など考えてしまった。
相手が世界のすべてになってしまう純粋さや未熟さと、自身の持つ残酷な気持ち、そして自分の行いをすっかり棚に上げてしまう傲慢さがすべて同居していた。この主人公を純粋と呼んでいいものか、純を真っ直ぐと表現していいものか、どうしても迷ってしまう。青春の青さと昏さ。
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4.8
キター!これが見たかったんです小川洋子(・̥-・̥ )
小川洋子時系列で追ったことなかったけどデビューしたての方がより毒々しくて優しすぎなくて最高
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ものすごく遠い世界のことのようなのに、突然グッと近づいてくる。この感じがクセになって読み続けてしまう小川洋子作品。連れてかれるなー。のめり込んじゃうなー。何歳で読んでも。ほんと、こうして小川洋子は出現したのか!という感じ。最高。『海燕』復活しないかなー(しない)。
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「完璧な病室」
無駄なものはなく清潔で安心できる場所。
弟の病室で二人で過ごす時間は静かで、時を刻むほど清らかになっていく。相反していたものは、心の病があった母とのかつての生活。それらを全て包み込んでいくものの温かさが、この小説全体を包み込んでいるように思えた。
ほかに、「揚羽蝶が壊れる時」「冷めない紅茶」「ダイヴィング・プール」
あとがきまで読み終えて、人のすべての奥底までが細やかに描かれた小説が、自分の物のように感じられる読者になりたいと思った。
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同僚が貸してくれた本です。
これは小川洋子さんの初期の頃の以下4作品を収めたもの。
「完璧な病室」
「揚羽蝶が壊れるとき」
「冷めない紅茶」
「ダイヴィング・プール」
なんとも独特な世界でした、どの4作品も。小川洋子さんは、グロテスクな事象や残酷な心理描写などを、なんとも精巧で均等で美しい文章で表現するなーと思いました。本書の中でもあったような表現をお借りすると、つるりと冷たい陶磁器の美術品のような印象を受けました。
一番好きだったのは「冷めない紅茶」かな・・・。登場人物の関係性を含め、すごく曖昧で不思議な世界で、え、これはどういうことだろ、どうもこうもないのだろうか、と一瞬一生懸命考えましたが、もうこれはこういう世界のお話なんだと思うことにすると一番好きなお話になりました。
一番わからなかったのは「揚羽蝶が壊れるとき」かな~。
「ダイヴィング・プール」は、読んでいて少し苦しかったです。
表題作「完璧な病室」は、好き嫌いでいうと好きな方かな、くらいですが、一番小川洋子さんらしい作品のような気がしました。気がしただけです。
読んでいる間はなんだか、いつもの現実とは違う、一段暗い世界を、ゆっくり歩いているような感覚で、決して明るく楽しい短編集ではないですが、美しい文章に浸りながら小川洋子さんの世界をより知れた気がして、良い読書でした。
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目に見えないものを見て
外から見えようがない物を抱えて生きていく
抱きしめられて、包まれないと慰められないのかしら
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どこまでも綺麗で残酷な短編四篇。
幸福からは程遠い内容なんだけど綺麗だなぁって思いながら読んで…たら唐突なホラーにビビる。