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図書館の新着コーナーで手に取った。
確かに大切な文化財の劣化を集めた劣化図鑑、保管している施設への注意喚起のための書籍だろうか。読者層はかなり限定されるだろうな。
硝酸セルロースを素材とする古い映像用フィルムは自然発火して酸素を発生するのでタチが悪いとのこと。酢酸セルロースを素材とするフィルムは空気中の水分と結びついて自己分解してしまうビネガーシンドロームという劣化をするという。
まあなんでも形あるものは作られた瞬間に劣化がはじまるということだ。機会をつくって文化財の劣化を守る技術を学んでみるか。
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写真がよくいえば芸術的で、もっと細部を見たいとモヤるが、画期的な書物である。
個人的に標本製作をかじる者として、製作時によく気をつけるべき点など(数十年後にどうなるか、というような事)がよくわかり、制作時により注意できる。また、後半の「処方箋」には、劣化の種類と原因、また復元方法や、劣化させないための”処方箋”が書かれていて、参考になる。コラムも非常にすばらしい。
約80点が被害原因により分類されている。原因は、昆虫、カビ、紫外線(その他光)、湿度、ホコリ、科学的劣化、経年劣化、材料の性質由来の劣化、管理不行届由来の劣化、処置に由来する劣化。
悲しいかな、過去に施された劣化や破損などの処置が、余計に悪化させる原因になったり、逆にその処置により、現在の科学技術でもどうにもできない状態になったりしているのを見ると泣ける。もちろん当時の最先端の最善とされた方法なのだったら、もう仕方がないのだが、、。現在でも、思い込みの主観的仕事でとんでもない”復元作業”されたりしてしまったモノを見ると、本当に泣けてくる。こういった文化財や標本だけでなく、環境の保全作業なんかでも、そういう事例が散見されるが、、。まず、調べてほしいのと、聞く耳もってほしいと思いますな。昭和の常識(しかも劣化して昭和ですらないミューテーションを起こしている記憶)を布教するのは害毒でしかない。
話がズレた、、
標本、今すぐに必要でもないかもしれないし、ほとんどの標本は目先の金にならず、換金性もほぼない。維持費も労力も大変コストがかかる。しかし、残す必要があるものだと私は思う。現在、目先の利益利潤ばっかり追わされる傾向にあるが、ちぃと考えんとあかんと思う。
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文化財や標本は、過去の人間の営みを現在に伝える資料である。だがこれらには経年劣化がつきもの。長い年月にわたり、なるべく元の姿をとどめようとするのは大変なことなのだ。
本書は、京都大学総合博物館の収蔵品のうち、こうした経年劣化が著しいものを紹介し、そうならないための対処法も示す。
総合博物館であるため、文化財の種類も様々だ。昆虫や毛皮・骨格といった動物標本。植物標本。古文書。出土遺物や器物。石膏や蠟の模型。鉱物標本。
これらの劣化の原因は、虫やカビによるもの、光や湿度・ほこりによるもの、化学劣化、材料の性質によるもの、管理の不備、処置によるものなどである。
現在の博物館では管理も向上しているが、過去には知識が不足していたり、技術が追い付いていなかったりで、せっかくの貴重な文化財が台無しになってしまう例も多かったようだ。
防虫対策が不十分で虫に食われてしまったり、液浸標本を作ったが容器に耐久性がなく液が漏れて標本が破損してしまったり。
本書はそうした事例の写真が豊富に収められており、素人目に見てもこれはダメだな、と思わされる例が多い。
後半は、素材別に対処法が示されているが、基本的には、劣化が激しく進んでしまったあとでは手の施しようがない。まずは保存処理を適切に行うこと、劣化する前に防止すること、劣化の兆しが見られたら、早目に早目に対処することが大切となる。
時に抗うこと、現状をなるべく留めることは大変なことなのだなと思う。