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5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。近くの日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあり、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで”リカバリー・カバヒコ”。アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。高校入学と同時に家族で越してきた奏斗は、急な成績不振に自信をなくしている。偶然立ち寄った日の出公園でクラスメイトの雫田さんに遭遇し、カバヒコの伝説を聞いた奏斗は「頭脳回復」を願ってカバヒコの頭を撫でる――(第1話「奏斗の頭」)出産を機に仕事をやめた紗羽は、ママ友たちになじめず孤立気味。アパレルの接客業をしていた頃は表彰されたこともあったほどなのに、うまく言葉が出てこない。カバヒコの伝説を聞き、口を撫でにいくと――(第3話「紗羽の口」) 誰もが抱く小さな痛みにやさしく寄り添う、青山ワールドの真骨頂。
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目の前の不安や悩みに押しつぶされそうになった人が、サンライズクリーニングと公園の寂れた遊具カバヒコによってリカバリーされる。青山さんの「きっかけ1つで大切なことに自分自身で気づく」物語が、私は本当に好きだ。元気になる。
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5階建ての新築分譲マンション。アドヴァンス・ヒル。
このマンションの住人たちが近所にある日の出公園のカバのアニマライドと出会うことで紡がれていく連作短編です。
自分の治したい部分と同じ場所を触ると回復するという伝説があるカバ。人呼んでリカバリー・カバヒコ。…カバだけに。
カバヒコのもとを訪れる人はカバヒコに自分を重ね、自分自身と向き合うきっかけをもらう。人の弱さと同時にそれを乗り越えていく強さも描かれていてどのお話もすごくよかった。
どこか愛嬌のあるカバヒコ。
私も会いに行ってみたいなぁ。私ならどこをリカバリーしてもらおうかな。
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読む前は、「ただいま神様当番」の神様みたいに
カバヒコが何か助言をしたりするのかと思っていたけど、身近な人の言葉を通して自分でその事について気づきリカバリーをするお話でした。
個人的に好きな話は、第三話と第五話がとても
心に響きました。
特に、
「人はやっぱり、見たいものだけ見たいように
見ているのかもしれない」
この言葉には、とても考えさせられました。
自分の都合で悪いように思えてしまうことが、
本当は悪いことじゃなくて勝手な思い込みで良いことが悪く見えてしまってるだけ。
そんな風に思えて、人との関わり等一個一個を大事にしたいなと思えました。
私もカバヒコのことを忘れずに、
思い詰めてしまった時にはカバヒコを撫でているような想像をして、リカバリーをしていきます!
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大好きな青山美智子さんの最新刊。
今回も優しいお話で一気読みでした。
5人の悩める主人公たちのように、私もこの作品を読んでカバヒコにリカバリーさせてもらえた気がします。
「赤と青とエスキース」とのつながりが描かれていて最高でした。
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これぞ青山美智子さんの世界観だなあと、満喫して読了。
老若男女、苦しみを抱えた人たちがカバヒコに回復をお願いするのだけど、よくよく考えるとカバヒコって何にもしてない。
のんきな笑顔でただそこにいるだけ。
でも、カバヒコのところに来る人たちも、本当に何かをしてもらおうとしている訳ではなくて、きっかけをもとめているのかもしれない。
自分を信じるきっかけをもらって回復していく様は、とっても清々しい。
人間ってみんなにちゃんと回復力が備わっているんだよなと思わせてくれる一冊。
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誰の心にもある弱い部分
全てのアーバンヒル住居人の悩みが私の中にもる
女のグループが嫌いな私は、ママ友で悩む人間関係が読んでいてモヤモヤ、早く気づいて!という思いでいっぱいになった
運動が嫌いな少年の気持ち
成績が下がってしまう少年の葛藤
好きな人が他の人と結ばれる嫉妬心
年老いた母とのこれからの生活
誰にも当てはまる悩みだからこそ感情移入しやすかった
読みながらカバヒコの伝説はカバヒコのお陰ではなくサンライズヒルのクリーニング屋のおばちゃんの力が8割だなと思った
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カバヒコすごいなあ。
でも同じくらい、カバヒコを信じて、自分を見つめて、1歩を踏み出す登場人物たちもすごいと思う!!
私も彼らのように、物事を柔軟に捉えられる人になりたいと思わせてくれた作品。
自分はこんなに馬鹿なはずないー、進学校にすすんであまりにも惨めな点数を取り続ける奏斗。その最中、寄り道した公園で同級生の雫田さんと遭遇し、公園のアニマルライドの「リカバリー・カバヒコ」について教えてもらう。不思議なことに、カバヒコは自分の体の治したい部分と同じところを触ると回復するという噂があり、奏斗もカバヒコの頭を撫でることにー。そこから奏斗は自分が努力もしてないのに、点数が出ないことに悩んでいることに気づいたり、褒められるために勉強するというスタイルを改善しようと考えるようになる。そして、最後に前向きに1歩を踏み出す奏斗が描かれ、胸が温かくなった。
その他にもママ友と上手く接することができず、自分の想いを告げることに躊躇する話「紗羽の口」。
仕事も恋も上手くいかず、ストレスや過労で耳管開放症を患ってしまう「ちはるの耳」。
駅伝大会に出場したくなくて、足を怪我したフリをしたら、本当に足を痛めてしまい悩む少年の話「勇哉の足」。
出版者で働きながら、80歳の親とどう向き合ってよいのか悩む「和彦の目」。
特に好きな言葉は、
p.41~42 奏斗が自分の勉強方針について悩んでいるときに父がかけた言葉。(奏斗の頭より)
「褒められたくてがんばるって、それも悪いことじゃないんだけどな。それだけを目標にしてると、褒められなかったときにくじけちゃうだろ」
「ただ褒めてもらえなかったって、それだけのことなのに。誰が何を言ったって、何も言わなくたって、懸命に咲こうとしているその姿には、なんの変わりもないのにさ」
「だから父さんは、ただ愛するんだ。それだけ」
p.90~91 ちゃんと話せるとは?(紗羽の口より)
「私は、ちゃんと話せる自分に戻りたいと思っていた。でもそれは、単に「たくさんしゃべれる」ということではなかったのだ。ほんとうの「話せる」って、「必要なことをきちんと伝えられる」ことなんだから。」
p.122 ほんとうの想像力(ちはるの耳より)
「想像力って、いいことに使うんだと思ってました。」
「もちろん。心遣いも思いやりも、すべて想像力だからね。不安がりなあなたは、きっと優しい人だと思うよ」
今回もたくさんのお薬のようなお話しを
青山先生から、いただけて幸せだった。
私も、心の中にカバヒコを持って、
自分の心にまっすぐに生きていきたい。
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❁*.゚『ただ褒められなかったって、それだけのことなのに。誰が何を言ったって、何も言わなくたって、懸命に咲こうとしているその姿には、何の変わりもないのにさ』
❁*.゚『本当の「話せる」って、「必要なことをきちんと伝えられる」ことなんだから。たくさんしゃべれるっていうことではなかったんだ。』
❁*.゚『心遣いも思いやりも、全て想像力だからね。不安がりなあなたは、きっと優しい人だと思うよ』
❁*.゚『同じようには戻らないけど、経験と記憶がついて、心も体も頭も前とは違う自分になるんだって』
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新築マンションの近くにある公園の古いカバの遊具「カバヒコ」。カバヒコには自分の治したい部分を触ると回復すると言う都市伝説があった。皆は『リカバリー・カバヒコ』と呼び…
カバヒコに会いに来る人は、それぞれ悩みを抱えている。その都市伝説を信じている訳ではないけれど、触る事によって自分確認が出来て前向きになれたのが爽快でした。ほんのりビターだけど、温かい読了感でした。
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読者を裏切らない青山さんからのリカバリーヒント集。頑張ることがすべてではなく、やっぱりできることからやってみる。ネガティブを掘り下げすぎないとか、実生活でそうですよねぇと思うところだらけでした。
そして相変わらず違う章に出てきた主人公たちが元気に動いてる姿がチラ見するのがほんと幸せな気持ちにしてくれました。
ありがとう青山さん
#青山美智子
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「人呼んで、リカバリー・カバヒコ」
「………カバだけに。」
稲代さんみたいなお手紙を書ける大人になりたい。
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いつでも順風満帆で完璧無比である人間などいない。真面目であるほど、繊細であるほど、壁に突き当たってしまうものだ。
5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒルに入居した心優しき人たちが突き当たった壁。その人たちを悩みから解き放つ助けをしてくれる存在が、すぐそこにある。
マンション近くの公園に設置された古いアニマルライド。とぼけた顔をしたカバの遊具だが、なぜか心を和ませる。行き詰まりを感じていた人がつい悩みを打ち明けると……。
青山美智子ワールドの真骨頂。ハートウォーミング連作短編集。
◇
手に持った赤ペンで、61 を 89 に書き変えた。高校に入学して最初のテスト。宮原奏斗は「これでいい」と自分に言い聞かせる。頭がいいはずの自分にふさわしいのはこちらの点数だ。
中学3年生だった去年、父さんが家を買って引っ越すと宣言した。転居先は電機メーカーの工場跡にできる5階建てのマンションで、都心に近く便利になるという。
郊外ののんびりした公立中学で優等生だった僕は、学区内の公立高校ではなく、推薦入試で都心にある私立の進学校に合格した。
こうして進学先が早々に確定した僕は塾をやめ、懸命に受験勉強するクラスメイトを尻目にゲーム三昧の3学期を過ごしたのだった。
ところが希望に溢れて入学した高校では僕の学力や勉強法は通用しなかった。そして授業についていくことすらままならないことに気づいたときは遅かった。
入念な予習などしたことがなく、中学卒業前の遊び癖も抜けていない僕は、早くも落ちこぼれ始めていた。
( 第1話「奏斗の頭」)全5話。
* * * * *
マンションの傍にある日の出公園。その中ほどに鎮座するカバのアニマルライド。このカバの古い遊具には不思議な伝説がある。
カバの身体のなかで、自分がぜひ治したいと願う身体の箇所と同じ部分を触ると、知らないうちに回復するという。
そんなご利益があるからか、いつしかこの遊具のカバは「リカバリー・カバヒコ」と呼ばれるようになったそうだ。人の悩みの種となっている傷んだ部分を回復 ( リカバリー ) させることから来ているらしい。
という、ワクワクするような紹介のされ方で登場したカバヒコ。うわっ、正統派のファンタジーかと思いましたが、少し違っていました。
本当にカバヒコにリカバリー能力があるのではなく、カバヒコに打ち明けることでひと息つけた人が、自分のスタンスを見直して自ら回復に向かうという物語でした。
それでも、青山美智子さんらしい優しく温かい展開はファンタジー風に心地よく転がって、心の栄養をたっぷりもらったような気持ちになりました。
個人的に気に入っているのは、悩みを抱えた人にカバヒコのことを教えてあげるときの言い方です。
「人呼んで、リカバリー・カバヒコ」
「……カバだけに」
サンライズ・クリーニング店を営む溝端のおばあちゃんも、雫田母娘も、樋村さんも、みんなそう言う。名前の後に必ず付け加える「……カバ��けに」。
この決めゼリフが心地いい。『鎌倉うずまき案内所』の内巻・外巻コンビを連想してしまいます。
決めゼリフを口にするときの、相手の疲れた心や悩む気持ちを思いやりながら明るく優しく言うみんなの顔。想像しながら読みました。
行き詰まったときに、人は孤独感に苛まれ、つい俯きがちになります。そんなときは、顔を上げるきっかけをさり気なく示してくれる誰かと出会うことが大切なのだろうと思いました。
カバヒコは、その出会いをもたらす縁結びの神様なのかも知れません。
リカバリー・カバヒコの由来が明かされる第5話「和彦の目」。ラストにふさわしく幸せが周囲に波及していくさまは特に感動的で、胸がいっぱいになって読了しました。
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本屋大賞ノミネートおめでとうございます!なんと4年連続ですよ、すごいですよね。
新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒルの近くにある、小さな寂れた「日の出公園」。そこには古びたカバの遊具があり、自分の体の治したい部分と同じところを触ると回復するという都市伝説があった。人呼んで「リカバリー・カバヒコ」「…カバだけに」
成績不振に悩む高校生の宮原奏人
ママ友たちとの関係に悩む樋村紗羽
体調不良で休職中の新沢ちはる
走るのが嫌で嘘をついた小4の立原勇哉
母との関係がこじれたままな雑誌編集者の溝端和彦
アドヴァンス・ヒルに住む、様々な年齢の悩める5人を主人公とした連作短編集です。青山美智子さんの王道ともいうべきお話たちで、もう間違いないですよね。
心に響く言葉があちこちに散りばめられており、嫌な人が出てこないだけでなく、読み終わった後はほっこり前向きになれます。
***
「不安っていうのは、まだ起きていないこととか、他人に対して抱くものだろ。それを思い描けるっていうのは、創造力がある証拠」(121頁)「心遣いも思いやりも、すべて想像力だからね。不安がりなあなたは、きっと優しい人だと思うよ」(122頁)
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待ちに待って一気読みした。心に沁みる作品を期待していた。次の章は沁みるかも、いや次の章か、と読み進めたものの、求めていた話が無いまま終わってしまった。ほんのり都市伝説は残るが、私には物足りなかった。