投稿元:
レビューを見る
なるほど、売れるわけだ。
全編を通してウィットに富んでいる。非常に難しいことを述べているから内容を十全に理解できている気はしないが、冗談めかした口調や(むろんこれは訳者に負うところも大きいだろうが)身近で分かりやすい卓抜な例のおかげでさくさくと読み進めることができるし、何となくでも分かったような気分になれる。
とはいえ、誰でも気軽に読めるというものではないだろう。
上下巻4部20章から成る本書だが、サピエンスという響きから連想される有史以前の、原始的な世界について書かれたのは第2部の前半まで。このあたり(第1部)までは高校生くらいならついてこれるのではないだろうか。
ただ第2部に入って神話について触れ出し、さらに宗教や資本主義について本格的に論じ始められると、ある程度の歴史的、社会的なバックボーンが求められていく。
知人が「途中で挫折した」と言っていたが、察するところこの辺りで読み進められなくなったのではないか。
(個人的にはこうしたテーマについて読み慣れているので、私はなんとか読み進めることができた)
そして最終的に科学について語られ始めると、読者にとっても問題はぐっと身近になる。最終的に筆者から提示される未来像を前に、誰しもが考え込むはずだ。
「我々サピエンスはどこへ向かうべきなのか?」と。
最後まで我慢して読むとまた面白いですよ。