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神様のカルテもよかったけれど、今回もよかった。最後の患者からのメッセージは、じんときた。ことばって、素敵なプレゼントになると、改めて思った。続きをぜひ読みたいなと、思う。
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現役医師の夏川草介さん著。
日本のどこでも起こっている小さな病院の日常と、決して聞くことのできない医師の心の声を聴くことができる、大切な一冊。
どう手を尽くしたって寿命はきてしまう、医師には及ばない力だったり、患者への思いだったりが全体から沁みでている。
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タイトルの「スピノザ」は17世紀オランダの哲学者。
『人間は無力の存在、”だからこそ”努力が必要』と説いた人物。
その観念を抱きつつ日々診療にあたる医師 雄町哲郎。
抜きん出た技術があったのに、親を亡くした甥の子育てのために街の病院に勤務している。
哲郎は医師であるのに「病気が治ることが幸せ」とは思わない。なぜなら「治らない病気の人は不幸のままなのか?」と思うからだ。
病気であっても幸せの中にいられる人もいるし、逆に生きていても苦しんでいる人もいる……体が健康であっても虐待や性暴力、長年の介護に疲弊など、救いの手が届かないで絶望している人は……。
患者に向きあい、死について考える。
若くして逝った妹の経験が彼の根底を変えた。
医師といっても様々だ。
最新医療に取り組む者、小さな病院で終末期の患者を診る者、これから一人前になろうとする若者、各々に信念がある。
作品に出てくる医師がとても個性的で魅力的だ。クセはあっても悪者はでてこない。
医療の専門用語や診断も医師たちの会話がリアルで(素人には分からないけども)、緊迫した状況でも冷静な態度に正座して読み進めたくなる!
そして外せないのが、京和菓子の数々!!
これはお取り寄せ案件ですぞ!餅が食べたい、餅!
病院の舞台となる京都の街並みもよいアクセントになっている……が、それより和菓子屋巡りがしたい〜。
患者さんも何人も出てきたが、忘れられない、飲み過ぎのおじいちゃんの辻さん。
良い先生に診てもらえて良かったね……
自分で線引きできるのも幸せなことではないかな?
自分や身内が病気になったとき、すこし距離をおいて見つめたいときにまた読み返したくなる。
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◼︎印象に残った文章
医師は心の中にニ種類の人格を抱えている(中略)科学者と哲学者という二種類だ。
どんな医者でもこの二つの領域を行ったり来たりしながら働いている。
……
医療がどれほど進歩しても、人間が強くなるわけじゃない。技術には、人の哀しみを克服する力は無い。勇気や安心を、薬局で処方できるようになるわけでもない。
暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげることなんだよ。
……
共感と言うのは、心にとってはなかなかの重労働でしてね。とくに悲しみや苦しみに共感するときには、十分に注意が必要です。度が過ぎると、心の容器にヒビが入ることがあります。ヒビだけなら涙がこぼれるのみですが、割れてしまえば簡単には元に戻りません。それを、精神科の世界では発病と定義づけりのです。
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ド鉄板の夏川さんの医療モノ。
京都の街中の地域病院、〈原田病院〉で働く内科医の“マチ先生”こと雄町哲郎。
かつては大学病院で将来を嘱望された、凄腕の医師でしたが、彼の妹が若くして亡くなってしまい、 1人残された甥と暮らすために大学病院を去り、町医者として働く決意をしたという経緯の持ち主です。
そんなマチ先生の元に、大学准教授の花垣先生の弟子の女性医師が研修と称してやってきますが・・。
『神様のカルテ』シリーズが大好きなので、帯に“『神様のカルテ』を凌駕する傑作”とある為、かなりハードルを上げて読みました。
個人的には“凌駕”とまではいかないものの、心の中に温かいものがじんわり染み渡ってくるような読後感の一冊でございました。
技術重視の大学病院時代と違って、外来だけでなく往診など患者一人一人と真摯に向き合うことになる町病院の医師として、マチ先生の飄々としながらも誠実な姿勢がとても素敵なんです。
高齢患者がほとんどなので、“死”に直面することが多く、テーマは重いのですが視点が温かいので考えさせられつつも優しい気持ちになれるのですね。
何といってもマチ先生のキャラが良くて、人柄は勿論ですが、凄腕の手術テクニックの持ち主なので、話の後半で難しいオペをすることになった後輩医師をサポートする為、こそっと大学病院に入り込み、ささっと凄腕テクでサポートして去っていく場面があるのですが、このさり気なさがカッコいいのですよ。
さらにマチ先生は無類の“甘味好き”という設定なので、京都の美味しそうなスイーツが登場するのもお楽しみ。
私も阿闍梨餅は大好きです!(長五郎餅、矢来餅は食べたことないので、今度京都行った時に食べてみたいな~。)
夏川さんは風景描写もお上手なのですが、本書でも京都の趣きある風情が伝わってきて物語の雰囲気とマッチしているのも良かったです。
主体の視点がちょいちょい変わるのが少し気になりましたが、原田病院の先生方のお話をもっと読みたいので、シリーズ化を希望します~。
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京都の美しい背景描写と丁寧な文章。これは本書のテーマである、無慈悲で冷酷な世界で読者の心に光を灯すための作者の心意気ではないだろうか。
医療の力は微々たるもので、人々はいずれ死んでいく運命。安楽死が認められない日本では生きることが苦しみそのものである人たちもたくさんいる。
その人たちの心に寄り添う勇気をもった主人公のマチ先生は、人の幸せに向き合っている。殺伐とした世の中でも周りの人の心に少しの安心を与えること。これが生きることの意味であり人々の本当の幸せに繋がる。長生きすることだけが幸せということではないとこの本は教えてくれている。
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マチ先生と花垣先生のお互いを認め合っているからこその関係性が素敵。
マチ先生のようなドクターに出会えたら幸せな最期を迎えられるのかもしれないな。
箱の大きさや肩書きではなくそれぞれの役割を全うする。医療の世界に限らず全ての業界に通じる、何とも心が穏やかになる作品でした。
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医療小説なのに相変わらず色々な植物を散りばめた情景描写やその言葉のチョイスが綺麗な上に京都の銘菓でほっと癒される。読後が清々しい
「神様のカルテ」シリーズで栗原先生をずっと追っかけていたのでこの「スピノザの診察室」で新たな、そして栗原先生に引けを取らない魅力的なマチ先生に出逢えて幸せです。
それにしても「おおきに 先生」にはぐっと胸の奥を掴まれました
マチ先生、是非またお会いしたいです!!
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医療とは、人とは、を考えさせられる本でした。こんな病院、先生が近くに居たらいいな。医師や医療関係の方に読んでもらいたい本です。
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本屋大賞に選ばれたので読んでみたけど、本屋大賞というよりは”京都本大賞”のほうが合っていたかな。スピノザの本を読んでいないけど、タイトルには”審議あり”です。
主人公が優秀な医師として科学と哲学の両方を極めんとしているというモチーフは面白く後半の盛り上がりも物語として興奮するところもあったけど、妹の子供を預かるため医局をやめて町医者になるというのは無理があり、そんな覚悟するなら医者そのものやめないとつじつまが合わないでしょうというご都合主義がどうしても抵抗を感じる。終末医療に携わる医者はそれこそ24時間体制なので大学病院と変わらない。昨年母を終末介護で自宅で臨終を経験しているのでどうしてもこの手のは空絵事のように厳しく捉えてしまう。そういう経験をしていなかったら素直に面白く読んでいたかもしれないが主人公が超然とし過ぎていたのに違和感があったのかも。
それでも長五郎餅や阿闍梨餅、緑寿庵の金平糖など、京都の有名処の和菓子が隙間なく登場してくるのは地元京都民として嬉しく、ああ、食べたいとなってしまう。京都の街並み描写や、言葉の選び方など繊細で小説自体は素晴らしい。冒頭で言った通り、これが”京都本大賞”なら納得の作品だった。
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「野心は無くても矜持はある」主人公哲郎が、医療とは幸せとは何か、白いものの交じった髪を掻き回しながら日々考えて、目の前の病気と患者に向き合っていく姿勢と言葉選びに感銘を受けます。
日々急変する命のやり取りがある医療現場と、大の甘党である哲郎の好物銘菓達の食欲唆る描写の緩急に心持っていかれながら、馴染みある京都の景色も鮮明に浮かぶ心地良い作品でした。
この物語の冒頭から末尾と同じく、哲郎の言う通り、世界は簡単に変わらないが、思考し行動し続けることで、少し景色は変えられると私も最近思います。
訳がわからないということがわかるだけでも大切とのことなので、衝動買いしたスピノザの本も読んでみようと思います。
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いい本読んだなぁ。
人はこんなに「いい人」ではいられないけど、マチ先生のようにありたいなと思うし、マチ先生のような人が身近な病院にいたら心強いだろうなぁ。
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まず雄町哲郎という人間にとても魅力がある。
小説を読んでいて、主人公の人柄でその世界に入り込めるかどうかがだいぶ違ってくるのだけれど、コレはまさにソレだった。
神様のカルテもそうだったけれど主人公の優しさや強さや奥深さがとても魅力的で好きだった。
死を意識することで人は大きく成長するのかもしれないけれど、それが良いことなのかどうか?それほどの出来事が無いに越したことはないのだけれど。
自分の意思とは違った形で死んでしまうこと、また生きてしまうこと…。正解は無いかもしれないけれど、自分の思いを最後に分かってくれる人がいたら幸せだろうなと思えた。しかしそれを受け入れるのは医師としてとても複雑であること。
とても考えさせられた。
そしてこの作品の素晴らしさはもう一つ。甘味!
お餅が出てくるたびに検索しちゃって。。。わぁ美味しそう¨̮♡へー美味しそうってなっちゃって。。。
もう甘党としては京都に行くしか無いでしょ!
近いうちに訪れることになること間違い無い¨̮♡
そしてとにかく読後感が素晴らしい!!!
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癌サバイバーも癌で亡くなった家族もいる私にとって、読みたくないような、辛いような本であるはずなのに、それでも先が気になって、どうしてもページをめくる手が止まらなくなった。
作者が医者なので、リアリティがすごい。自分が家族をみていたときのことをとても思い出した。
現代は死との距離がほんとうに遠いと思う。だからこそ死が近づくと途端に恐ろしくなって困る。そういう環境になっている。こういった作品の意義は、そういった死を思い出すメメントモリ的なところにありそうだ。
でも死から遠ざけられた人にとっては、とっつきにくい内容ではあるかも。ただこの物語を、リアリティをもって読めるようになってから、ようやく人生の深みが見えてくるんじゃなかろうか。
私も自分の死についてはまだ遠く感じるが、でも必ずあるのだと、メメントモリだと、分かったつもりのレベルをひとつ上げるくらいの気持ちでいようと思う。
続編と映像化はかなり高確率かと。
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スーパードクターが奇跡を起こして難病や難しい手術を乗り越える話もいいけれど、今作のように静かにやさしく人の命に向き合う姿が美しい物語が好きだ。医師も患者もひとりひとりがちゃんと人間として描かれていて、それぞれの医師という仕事と患者としての病気の向き合い方に共感が持てる。
また、京都という土地が物語に色を添えていて、京都人らしいなあと思わせる振る舞いや、おなじみの名所、おいしそうな和菓子が続々出てくるのも見逃せない。
せわしなさの増す苦しい時代だからこそ、この物語を通してじっくりと命に向き合うひとときを持っていただけたらと思う。
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奇跡的ストーリーよりもっと身近で親身に
私たちの人生に寄り添い
希望の光で包み込むように
命の在り方を優しく伝えてくれる。
「人の幸せ」を
押し付けるような教えではなく
愛ある気づきを与えてくれる。
やわらかな心で
生にも死にも真摯に向き合える。
過去の痛みにも未来の不安にも
絶望することなく
凛とした強かさで希望を持てる。
生きていくために大切なものを
この物語が教えてくれる。
人生に芯が通るような読後でした。
これからを生きていく
そしていつかは死を迎える者として
今、出合ってほしい、
多くの命へ届けたい本です。
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夏川さんの作品は神様のカルテもそうですが、
街の描写が心地よくて、すごく好きです。
内容は爽やかに全てが良い方向に行くので、ストレスなく心地よく、気持ちよく、読めます。
出世やしがらみから離れた、仕事をしたいですね。
サラリーマンの憧れです。