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無知であることは、果たして罪なのか。
敢えて教育を施されず、軟禁状態で10年も犯罪の片棒を担がされていた無垢な少女に罪を問えるのか。
彼女によって腕を失った彼が、彼女に憎しみを抱き復讐をするのは正当なのか。
結局、どちらも無知だった。
彼女は前述通り、自分が生み出していたものが何か知らないままだった。
それによって、彼に恨まれていたことも。
彼もまた、彼女がどういう状況に置かれていたのか、彼女が自ら望んで犯罪に関わっていたわけではないことを知らなかった。
お互い、互いの深いところを知らないまま惹かれてしまった。
ゆえに、後半どうしても崩壊が訪れた。
一度罪を知ってしまえば、元には戻れない。
自分の無知が齎した結果を知ってしまえば、以前のような無垢な恋や愛はできないだろう。
だから、当初はこのまま別離エンドかもしれないなと、それもやむなしだと思っていたけれども、終盤互いに本心を打ち明けることができたのが、契機になった。
ヒーローの涙は、事態の打開にききますな、間違いなく。
あの場面は挿絵の効果もあって、こちらももらい泣きしそうになった。
汚れない愛情ではないかもしれない。
時折、罪を思い出して苦しいかもしれない。
それでも、二人は幸せなのだろう。
もしかしたら、無知だった頃よりも強く、深く。