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まえがきで著者の枡野浩一さん、phaさん、佐藤文香さんがおっしゃっています。
「眠る前に読むのに最適な本というのは、先が気になってワクワクしてしかたがないような本ではなく、ひとつひとつの文章が短くて、どこから読んでもいいような本ではないでしょうか。そう考えると、短歌がちょうどいいのではないかと思いました。(中略)この本では、眠る前に読むとよさそうな短歌を三人で百首集めてみました。短歌がずらっと並んでいるだけだと少しとっつきにくいと思ったので、短歌の横にひとつひとつ、解説文、というほどしっかりしたものではないですが、短い文章を添えてみました。(後略)」
私は今年の春から短歌を始めましたが、短歌の意味をとるのが苦手なので解説文つきの短歌の本はとても貴重です。ありがとうございます!こういう歌集もっと出版されて欲しいです。
そして一年も終わりということで(まだ一日ありますが)「おやすみ」というタイトルが一年の終わりに読むのにもふさわしいような気がして今年最後のレビューにこの本を選びました。
まずは解説付きで最初は1首。
<にんげんの良さのひとつにねむるとき身体に布をかけるかわいさ> 橋爪志保
以前SNSで、眠るときに首から下に布をかぶって眠る猫の画像が話題になっていたことがあった。みんなその画像を見て、かわいー、と言っていて、僕も、かわいー、と思った。
しかし、この歌を読んで気づいた。本当にかわいいのは人間たちのほうだったのだ。
毛皮という便利なものを持たないつるつる肌の人間は、子どもも若者も中年も老人も、みんな等しく体に布をかけて眠る。なんてかわいい生き物なんだろう。
(pha)
続けて特に好きだった歌。
<寝た者から順に明日を配るから各自わくわくしておくように> 佐伯紺
<月を洗えば月のにおいにさいなまれ夏のすべての雨うつくしい> 井上法子
<くるぶしを波にまかせている夢の浜はあなたときたことがない> 山階基
<はるのゆめはきみのさめないゆめだからかなうまでぼくもとなりでねむる> 佐々木朔
<うちの子はパン生地なのか8がつに毛布を二枚かけて寝ている> 柴田有理
<にんげんがひとり にんげんがふたり 五月の草に眠れるひつじ> 岡野大嗣
<夏の畳のタオルケットの昼寝ってなんか 起きたら泣いてないすか?> 平出奔
<品川の手前で起きてしばらくは夏の終わりの東京を見た> 鈴木ちはね
<たくさんの手紙が欲しい日があってそういうときは寝てしまいます> 早坂類
<ゆめでみたきみは早熟の操縦士それゆえに我慢も多かった> 丸田洋渡
<天井と私のあいだを一本の各駅停車が往復する夜> 笹井宏之
<街中が朝なのだった 店を出てこれから眠る僕ら以外は> 枡野浩一
<「死んでてもいいけど、夜はとんかつを食べにあそこに七時だからね」> はだし
以上で、今年のレビューはお終いです。
ブクログの皆さま、今年もお世話になりました。
たくさんのいいね!やコメントをありがとうございます!
今年の終わりにコメント欄で何人かのブク友さんに体調不良を訴えてしまいましたが、今、色々と病院で検査を受けています。
私もいつの間にか還暦まであと〇年です(ついにブクログで年齢バラシてしまった)。不調も色々出てきますね。
ブク友の皆さまも来年も健康でよき1年を迎えられますように!
今年もありがとうございました!
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11月10日に開催された文学フリマで購入。これとは別の本を買いに行ったのだけれど、前日に偶然ママ友から「親友が本を出しました」という連絡があって、その方も文学フリマに出展していると知りブースを訪れてみた。ご友人というのがこの本の出版元である実生社の方で、少しお話させてもらったけれど穏やかで気さくでとても感じの良い方だった。
短歌がただたくさん載っているだけではなく、一句ごとに解説が添えられていて、自分とは違う解釈だったり気付きだったりがあっておもしろい。穏やかな気持ちになれるから、たしかに就寝前にぴったりな本だと思う。
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寝る前にほんとにぴったりの本。毎日寝る前に大事にゆっくり読んで、ゆったり眠りにつけました。
短歌おもしろいけど???と感じるものもまだ多くて、解説散文つきありがたかったあ
にんげんの良さのひとつにねむるとき
身体に布をかけてねむるかわいさ
を一番最初に持ってきてるのが最高でやっぱりこれが忘れられない、にんげんかわいい
寝た者から順に明日を配るから
各自わくわくしておくように
と、
「死んでてもいいけど、夜はとんかつを
食べにあそこに七時だからね」
もとってもすき
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まことさんのレビューを拝見して読みたくなった本が2冊あった。
その片方が、こちら。
寝る前に少しずつ読む予定が、好きな短歌が多くて一気読みしてしまった。
たまにはアンソロジーもいいなぁ。
ひとえに"眠り"と言っても、読み手によって様々なベクトルがあって楽しかった。
「寝た者から順に明日を配るから各自わくわくしておくように」佐伯紺
可愛い。
寝つきが良い方ではないのだけど、この短歌があれば気分良く安心して眠りにつけそう。
「ウインカーつけて曲がってゆく車 しずかな夜を眠れずにいる」工藤吉生
こういう夜を知っている気がする。
街も寝静まった静かな夜、眠らなくちゃと思う程に耳が研ぎ澄まされて、曲がってゆく車の動きさえ感じ取れるような。
「一晩かけてコーラは泡を手放した、それはもうコーラが決めたこと」夜夜中さりとて
解説で紹介されていたこの歌に、とても魅力を感じた。
「星の存在 きみと話しているときに僕はこわれるほど高画質」青松輝
きみがどんなに素敵かを歌うのではなく、僕の側を歌っているのがおもしろい。
僕の胸が潰れそうなほど大好きなことも、そんなことより高画質できみを写し取っていたい気持ちも、健気に伝わってくる。
尊いってこういうことなんだろうな。
「宵闇の九月にめざめヒガシマルうどんスープが味方でいること」上坂あゆ美
温かいうどんは体にも心にも優しい。
「宵闇の九月」という表現で、余計にお出汁が染み渡るような印象を受けた。
「どこまでが夢で、あそこまでの梅、ここから桜。さくらがきれい。」山中千瀬
ホント美しい!!
どこまでが夢で、どこからが現実なのか分からないところも霞がかった感じがして美しい。
本書の中で1番好きな短歌だった。
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タイトル通り、眠りにかんけいする短歌を著者の三人がそれぞれ選んで集めた本。
三人の嗜好の差はあれど、かなり若者や現代短歌をメインに集めていて、難解な歌は少なく歌意のわかりやすいものが多い。私家版や、同人誌、専門誌、ネット、結社誌と引用元も幅広いのが嬉しい。
この本で知って、いいなと思った歌は
草のかげで眠りたいのにどこもみな 螢いてああ
もう、バスが出る/正岡豊
前から好きで、改めてこの本に出てきてやっぱりそうですよねと思った歌は
月を洗えば月のにおいにさいなまれ夏のすべて
の雨うつくしい/井上法子
一首ごとに、選んだ著者の鑑賞文があるのもうれしい。最近短歌に興味を持った人にオススメしたい一冊。