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「線は、僕を描く」の続編。
千瑛と湖山賞を争ってから2年。
初の揮毫会に挑んだ霜介だったが、緊張から失敗を犯してしまうところから、物語が始まる。
若き水墨画家として、活動的な千瑛に対し、大学3年になり、進路にも作風にも悩む霜介だったが、先輩である西山の代わりに小学生の水墨画教室を受け持ったことから、亡くなった母の過去を知ることになる。
それでも作風に悩む霜介は、恩師・湖山から筆を置くことを勧められ、そして、ある場所を訪れた霜介は・・・
今作は前作ほど、水墨画を描くシーンがなく、霜介が悩み、そのたびに少しずつ成長する姿が描かれるので、前作のような興奮を感じることが出来ない。
その分、個人的には「続編はイマイチかも」と中だるみすることも。
しかし、ラストの湖山の引退セレモニーに見事に裏切られる!
湖山の弟子たち4人による競演は、まるで目の前で本当に描かれるようで、本当に美しい。
そして、何より湖山の生き方が本当にかっこいい。
同時に両親を失い、人生のどん底だった霜介が湖山に出会ったこと。
その出会いに導かれる運命に、すっと涙が流れるラストだった。
本当に美しい作品だと思う。
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『線は、僕を描く』の続編。
大学4回生になった主人公青山くんを描いた作品です。
もちろん、裏主人公は青山くんの師匠湖山先生(だと思います)。
今作も湖山先生を通じてたくさんの気付きを得るために楽しみに読みました。
さて、そんな本作品、読む前は前作の続編なので青山くんには絵師として紆余曲折しながらも約束された未来があるものだと思っていたので、青山くん無双を楽しみにしていたというのも本音です。
でも、敢えてネタバレすれば、そんな話ではございません。
むしろそんな俗世間みたいな野暮なことを期待した私がアホでございました。
そんな生易しくて最後もただのハッピーエンドなんていうのは本作品が描いた線ではなかったはずなのにということを思い知らされました。
本作品はまさに『線は、僕を描く』の続編にふさわしい作品であったなということをまずはお伝えしたいと思います。
本作品で描かれているということは「休むこと」の大切さではないかと思います。
私もそうなのですが、仕事にしろ何にせよ、休むことが苦手。
好きなことはずっとやっていたいし、頑張ってやりこなしたいという思いは強かったりします。
でも、はじめはそれで良いかもしれません。
できない時は繰り返しできるようになるまで没頭してやること、これが大事な時期があることは疑いないとは思います。
ただ、やればやるほど完璧を求めすぎて、ちょっと失敗して駄目だなと思うと、もう自分は全く駄目で能力がないと思いがちです。
また、好きなことでもやり続けていくといつか壁にぶち当たるし、やり続けていても面白くないと思うことが多くなるものじゃないでしょうか。
そんな時はきっと走り続けてしまっていた証拠。
本当はやっていることから離れてみること。
こういうことこそ本当は大事なことなんだということを改めて思いました。
確かに私も将棋の香車みたいに一直線にしか進めないことが多いのですが、やってることから離れてみたり、違うことをやってみると見えてくるものがあったりします。
寝かせて良くなるということもあるし、無駄な回り道に見えてその無駄な回り道が後で役に立つこともある。
無駄なことなんて実はないということなんだなと思いました。
確かに、文字を書く時もずっと書き続けるわけじゃなくて、はらいもあれば止めもあるし、字は詰まっているよりも間がある方が綺麗に見えます。
私の好きな将棋も攻めている時も攻め続けるだけじゃなくて、一手休んで相手に手を渡したほうが良いということがあるので、休むことすなわち間を取るということも大事ということなんだろうなと思います。
そして、完璧なものよりも少し欠けてたり、見映えが悪いものの方が味があったりと寄り添いやすいということを教えてくれました。
真っ白の世界は何もなくて、それだけだと汚れることはなくても決して輝くことはない。墨を足して黒��いれることで白の余白は輝くという水墨画の話を通じて、白いまま置いておくというのではなく、どんどん汚していけば良い(どんどん失敗して良い)んだなと思いました。
最後は息をするのも忘れて読んでしまってのもそこまでにたどり着く過程があったからこそだと思います。
そして、私も私なりの自然を生きていきたい。
それは常に手探りかもしれないですが。
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『僕は線を描く』の続きのお話し。
一作めより感動しました。
亡くなったお母さんの知らなかった顔を知り、血を流すような苦しさの中更なる成長を遂げた霜介が報われる時、涙が出ました。
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すごい作品を目にした。文字で書かれているのに、作品が描かれていく。最初に出てくる湖山先生の指墨から、最後に描かれる作品まで、美しい世界が広がる。
物語としては、終始不穏な雰囲気があって、まさにスランプ真っ只中だ。読みながら不安が募って、ページがとまらなくなる。
一方で、生命力のかたまりのような子どもたちの姿が眩しい。エネルギーに満ちあふれていて、失敗もなんのその。彼らのような世界の捉え方は、私たちにはできないなと思った。
前作は「線」が大きなテーマだったが、今回は「白」がテーマだったように思う。白黒の世界、余白、白い老人……。淡い黒で「白」を描く水墨画にとって、「白」の意味は大きくて深いものだと感じた。
この作品を読むと、水墨画の作品をきちんと見たくなる。あわよくば揮毫会に行きたい。そしてそこに広がる世界に触れてみたいと思う。
シリーズ化はされないのかなぁ。いつまでも浸っていたい作品だった。
追記:1作目の映画を観ました!湖栖さんは出てこなかったけど、原作を大事にしてまとめられているし、水墨画を実際に見られるのでおすすめです。最初の湖山先生の水墨画に涙が出ました。素晴らしかったです。
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「線は、僕を描く」のシリーズ2作目である本作。本作も前作同様に、水墨画や風景のキレイな描写に魅了されるとともに、大学生である主人公の成長が見られ、とても素敵な作品であったのと思います。
本作は前シリーズの展覧会から2年後が舞台となっております。展覧会での受賞から2年が経ち、水墨画家として大成したわけではなく平凡な日常を送る主人公。大学3年生となり、自身の進路に悩むなか、揮毫会に参加したり、水墨画教室を開いたりと水墨画家としても大きな転機が訪れるというストーリー。
前作のシリーズが入門編であるとするなら、今作はその後の応用編といったところでしょうか。何を行うにしても、途中で上手くいかなくなったり、伸び悩んだりといったことがあると思いますが、主人公もまさしくそんな状況に陥ります。
こうした状況ってすごく辛いよなぁってしみじみ思いますよね。私も会社に入社して1年経った時に伸び悩んだ経験があって、そうした辛さを経験したからこそ、師の言葉を無視しちゃう主人公にとても共感でき、主人公の苦しみがすごく伝わってきました。
本作を通して、人からのアドバイスが自分の求めたものと違った時ってすごく悩むよなぁってしみじみ思いました。一見遠回りに見えても近道だったりすることもあるし、解決方法も人に合わせて色々あるだけに何が正解か分からないような感じはするのですが、人に教えを求めるのは悪いことではないということだけは言えますかね…
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水墨画の描写が丁寧でイメージが膨らみつつ楽しく読めた。青山くんの成長を描きたくて続きを書いたのかな?自分も描いてみたくなりました。
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良かった!
すばらしい!!
素敵な表現が沢山
俺はクライマックスより
子供たちとのふれ合いの部分が好きだった
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「線は、僕を描く」の続きの作品。線は、僕を描くが今まで読んだ本の中で一番好きだったので本屋で砥上裕將さんの名前を見つけた時は本当に嬉しかったです。砥上さんが前作の作品を描く時に、「一線の湖」まで思い描いていたのではないかと思われるくらい自然な繋がりで、読み終えた時また読み直したいと思わせてくれる内容でした。本当に素敵な作品で、いつまでも本の世界に浸っていたいです。
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芸術の哲学書でもあり、教育の醍醐味が詰まった日記でもあり、
文字だけで絵が景色が立ち現われる、大切にしたい本です。
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一気に読み終わりました。何回も涙がほほをつたいました。どこに生きるとか、取り組むとかのきっかけがあるかはわからないかもしれないけど
その時、そのタイミングを逃さず捉えられるようにいたい。体調崩して、気分もどんよりしていたのが読み終え、体が暖かくなりました。
こどもと接するところ、そして2人の反応に自分の経験が重なって感涙。母とのつながり、話せたことの良さにも感涙。そして前作のあの斉藤さんも救われて最後の作品は映像化されたような描写にまた感涙
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前作を読んでから読まないと理解できないかも。結局教師になるのか〜母親と同じ道。才能あるのに勿体無いと思ってしまった。
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Amazonの紹介より
主人公・青山霜介が、ライバル・千瑛と湖山賞を競い合った展覧会から2年が経った。大学3年生になった霜介は水墨画家として成長を遂げる一方、進路に悩んでいた。
卒業後、水墨の世界で生きるのか、それとも別の生き方を見つけるのか。優柔不断な霜介とは対照的に、千瑛は「水墨画界の若き至宝」として活躍を続けていた。
千瑛を横目に、次の一歩が踏み出せず、新たな表現も見つけられない現状に焦りを募らせていく霜介。
そんな折、体調不良の兄弟子・西濱湖峰に代わり、霜介が小学一年生を相手に水墨画を教えることになる。
子供たちとの出会いを通じて、向き合う自分の過去と未来。
そして、師匠・篠田湖山が霜介に託した「あるもの」とはーー。墨一色に無限の色彩を映し出す水墨画を通して、霜介の葛藤と成長を描く、感動必至の青春小説!
『線は、僕を描く』の続編ということで、今回は主に霜介の心の葛藤が描かれています。ちなみに登場人物同士の関係性を周知済みでのスタートなので、シリーズ初参加の方は、前作から読むことをお勧めします。
人生において、誰しも失敗や挫折は経験するかと思います。しかし、人それぞれ、立ち直る方法はバラバラです。霜介の場合は、どうするか?
これで立ち直った!と思いきや、新たなる試練の繰り返しでしたので、読者としては、それを見守るしかできないことにヤキモキしながら、読んでいました。
また、心の葛藤の描写が繊細な印象がありました。水墨画をメインにした物語ということで、筆をなぞるように、心理描写も丁寧に寄り添いながら、時間経過毎に滑らかに描いている印象でした。
と同時に心の成長が垣間見れて、こちらとしては応援したくなりました。本当に霜介って、みんなに愛されているんだなと思いました。
挫折によって窪んでしまった心の穴。それをどう埋めていくのか?客観的に見ると、自分の思う理想像と周囲からの印象は、もしかしたら違うかなと思いました。
自分では、高い壁かもしれないけれども、視野を広げると、案外低いのかもしれません。
しかし、なかなか自分だけでは答えが見つかりません。新たな行動や周囲の影響など視野を広げることで、答えへと導けるのかもしれません。
そういった応用は、現実でも同様で、人生においてのヒントになるのかなとも思いました。
この作品で、初めて知った言葉が、揮毫会(キゴウカイ)です。毛筆で何か言葉や文章を書く催しということで、そういった催しをテレビを通して見たことはあるのですが、実際に見たことがないので、見てみたいなと思いました。
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墨の匂いが終始漂ってくるような濃さで、芸術家達が作品を生み出す時に、どれだけ身を削り努力しているのかがわかって感動した。特に最終章が圧巻だった。
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※
水墨画の師匠、そして弟子たちの
絵と共に歩む生き様を描いた物語。
道を極めようと悩み、もがき、時には迷い、
試行錯誤しながら一心に努力する姿は眩しくて
切なくなるほど。
水墨画のイメージとしては、白と黒、
黒色の濃淡、静けさでしたが、力のある人が
描くとまるで生きているかの様にいきいきと動き、鮮やかな色彩までが表現される様子は
とても美しかった。
余白があることで白と黒の両方が活きるのは
なんとなく想像がつくのですが、描かないことで
描くべきことがより雄弁に語られるという発想は、計算された足し算と引き算とは違っていて、
いかにも感性なんだなと思いました。
更には、一つの線が時間も空間も超えて
人と人の関係性や絆にまで話が繋がった点は
スケール大でした。
話中にたくさん出てくる筆を動かす描写や
所作の表現がとても細かくて独特なので、
動いている様子を想像するのに戸惑うほどでした。
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絵を描くことの難しさだけでなく、水墨画家のグループを運営していくことの大変さが描かれているのがさすが本物の水墨画家兼小説家と思いました。水帆ちゃんが水墨画と青山君に出逢えたことをご両親は本当にありがたく思っているんじゃないかなと思いました。もちろん、本人もだけど。完成した水墨画が見たくてしょうがないです(笑)