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いつもの図書館の新刊コーナーにあったので、新作かと思ったら、林真理子さんの初小説の改版だと知り、ちょっと気になって読んでみました。
元は1986年に発表された、この作品には、表題作と「だいだい色の海」、二つの中編が収録されており、内容は全く異なるものの共通したものとして、どちらも二十歳という、青春を引き摺りながらも、大人への過剰な意識的反応を示す、そんな微妙な年頃に於いて、まだ自分自身という不安定な容れ物を持て余している感じに、ほろりとさせられるものがあった。
「星影のステラ」は、東京で鳴かず飛ばずの仕事をしていた、「フミコ」が胸に描く憧れそのものの姿で登場した、4つ年上の「ステラ」との出会いがきっかけとなり、自分自身を何とか理想像に持っていこうとする、その必死さがとても切ない上に、それが中々、上手くいかないことに対する焦りを感じ始めると、今度はフミコが持つ数少ない、ステラに負けないものを誇示してみせることで、彼女のアイデンティティを保とうとするが・・・といった、若いときの、やりたいことを早急にどんどんやって、その結果に一喜一憂する姿には、思わずハッとさせられる方もいらっしゃるのではないかと思われた、その末路に訪れた自己嫌悪や喪失感も切ない、青春の一ページ。
ちなみに、物語でも実際に登場するタイトル名、「Stella By Starlight(星影のステラ)」は、1944年の映画「呪いの家」の為に、ヴィクター・ヤングが作曲したジャズのスタンダードで、ビル・エヴァンス・トリオの演奏でも有名です。
「だいだい色の海」は、一転して、仕事も女も精力的に取り組む、その時代の資産家の象徴性とも捉えられそうな父親の元で、毎日を自堕落に過ごす、「利彦」の青春時代の葛藤を生々しく描いており、最初こそ『出来の悪い次男という悪役』を演じることで保っていた、彼自身のアイデンティティに、外部から様々な揺さぶりを掛けてくることによって、彼自身の心が次第に折れそうになっていく様が、これまた切ない上に、その限られた交友関係の中でしか自己の居場所を見つけられない、悲しさや孤独感の末に行った行為が、倫理的に問題のある非道なものであったにも関わらず、それすら、あっさりと打ち消されてしまった現実社会の裏の顔たるや、二十歳の若者にしたら、絶望感しか抱くことが出来なかったのかもしれない。
しかし、そんな彼にもあった、父の別荘で初めてやろうと決心した一人暮らしの中の、心穏やかな『ただ海を見ているのがやたらおもしろかった』日々で、彼が一番好きだった、陽が落ちてからも、もう一度新しい時が始まるような華やかさに満ちている、夏の夕暮れを詩的に表現した、彼だけが持つであろうもう一つの特権を、ぜひ思い出して、また顔を上げてほしい。
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良くも悪くも昭和に描かれた作品であることを強く感じる作品でした。表紙に惹かれて購入したものの、ちょっとイメージと違っていました。
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2編収録
『星影のステラ』は、女性が1度は感じる『オーラがある人に憧れる、仲良くなりたい』を出会い〜終までを描いた作品。
私も昔会ったなと懐かしくなりました。
描写もレトロでエモカッタ、、、
『だいだい色の海』は、
男性視点の話だったので、個人的にはあまり入り込めなかったけど、大人になる前の葛藤がよく描かれてました!