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スタニスワフ・レムの長編2編カップリング本。
■捜査(Śledztwo,1959)
旧訳を二度読んでいるが、
今般、この新訳を読んでの印象はどちらのときとも違って、
上司とはいえ度々主人公グレゴリー警部補の先回りをし、
あまつさえ自宅に押し掛け、しかも、
捜査のヒントを与えるというよりは
部下を混乱させるような語りを披露する
シェパード警部が異常だ、と考えざるを得なかった。
適切な距離を取って上手く息子と接することの出来ない
不器用な父親を思わせる佇まい、とでも言おうか。
グレゴリーはシェパードを超えなければ、
あるいは斃さなければ
決して真の〈正解〉に辿り着けないのかもしれない。
■浴槽で発見された手記(Pamiętnik znaleziony w wannie,1961)
3000年前、惑星探査隊が持ち帰ったウイルスが
地球全体で〈パピル分解疫〉を引き起こし、
すべての紙が分解され、
記録・知識を喪失した文明は崩壊した。
考古学者はロッキー山脈の地層の下の
《第三ペンタゴン》の遺跡から、
奇跡的に残っていた手記を発見した。
氏名を明かさない語り手(=筆記者)〈私〉が
巨大建造物《第三ペンタゴン》を右往左往しては
奇矯な人々と噛み合わない対話を繰り広げる不条理劇。
※後でもう少し詳しいことをブログに書きます。
https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/