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再読。
同じ作者の「バイキングのハーコン」の続編にあたる。ハーコンの乳兄弟であるどれいの少女ヘルガの視点から語られる物語。
叔父を討ち果たしてローゲン島の首領となったハーコンは、友であり味方であった奴隷ラルクを解放して、その故郷であるフランク人の国に戻そうとする。
ラルクは故郷では地位のある人物であったが、すでに死んだものとして扱われ、その妻は再婚させられていた。ラルクの妻の再婚相手であるユグは、バイキングとともにあらわれた妻のかつての夫を退けようと企てて……
結末は悲劇的なものとなる。ハーコンはラルクを愛するからこそ、その望みを叶えるべくともにノルマンディーに向かったのだが、ラルクが故郷を離れていた年月は長すぎたのだ。
児童書として出された作品であるが、内容は重い。対象年齢はかなり高めなのではないかと感じた。
北欧古来の神々からキリスト教へと信仰の対象が変わり行く時代の物語。
前作よりも実際の歴史に即した部分が多く、歴史小説なのだと感じさせられる。
アール・ハーコン(ハーコン・シグルザルソン)やオラーフ・トリグベソン(オーラヴ・トリグヴァソン)等、歴史上に実在する人物が登場しており、年代を特定することが可能である。
原題は"A SLAVE'S TALE"
もと奴隷である語り手のヘルガが「奴隷であること」から脱却していく物語であるとともに、奴隷となってしまったことに端を発したラルクの悲劇を描く物語でもある。原題のほうがより多くを含みうるタイトルとなっているように感じる。