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ふぇるまー太さんのレビュー一覧

投稿者:ふぇるまー太

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紙の本太宰治の辞書

2015/09/12 10:09

虚構の「私」に託された、北村薫のエッセイ

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『朝霧』より11年、「私」が帰ってきた。「日常の謎」ミステリのパイオニア、「円紫師匠と私」シリーズ最新刊である。
 シリーズ開始当初は大学生だった「私」も、いまや中学生の息子をもつ母親兼編集者。生活と仕事に追われながら、それでもかつての知的好奇心を忘れてはいない。久しぶりに再会した円紫師匠に「私」は言う。

「《謎》というのは、質問一、質問二といったように、質問用紙に書かれているわけではありませんね。──先生が話した後、《では、なにか質問はありませんか?》という。皆な、しーん。分かってるからじゃありませんよね。それを出せるほど、内容が自分のものになってないからですよね」
 円紫さんは、やさしく私を見つめ、
「そうですね」
 質問するのは難しい。何が謎か、は多くの場合分からない。(本書150ページ)

 じゃあ、何げない日常に多くの謎を見つけてきた「私」は何者か? 日常の達人? 人生の名人?
 何年かぶりでシリーズに触れてみて、北村薫の小説は、物語の結構や筋立ての面白さで読ませていく小説ではない、と気づいた。語り手の知識と物事の探求、考察。それこそが北村作品のなによりの魅力だと思う。エッセイ的と言ってもいい。虚構の人物に託された、北村薫のエッセイ。
 本作は太宰治『女生徒』を中心に、さまざまな文芸作品へ言及している。文芸の該博な知識に膝を打ち、小説家と作品とその周囲の人々への愛にあふれた物語世界にため息が洩れる。これこそまさに日常系ミステリだ、と強く感じた。
 余談だが、本作を読みながら、あとがきに「実はこのシリーズは、私が書いたものではなく、娘の日記からこっそり拝借して……」とか書いてあったらどうしようかと妄想してしまった。さいわいなことに、そんなことはなかった。

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