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sk728さんのレビュー一覧

投稿者:sk728

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破綻の真相究明と清算業務に尽力した12人の克明なノンフィクション

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1997年の山一證券自主廃業はバブル崩壊や平成不況の代名詞として語られることが多い。しかし、破綻の真の原因は一部の上層部・社員が膨大な簿外債務をつくり続けたことである。この「飛ばし」行為はそれ自体が重大な違法行為なのであり、バブル崩壊や不況によるものとはいえ、決してそれを免罪符にしてはならない。本書は、自主廃業が決まった山一證券にその後もあえて残り、破綻の真相究明と清算業務に尽力した12人の克明なノンフィクションである。

12人は山一證券のエリート社員でも出世コースをゆく人々でもなく、「場末(ばすえ)」と呼ばれる社内で全く重要視されていない部署の社員だった。この場末の人々が不正を犯した役員やエリート社員を追い詰めていくストーリーだけでも十分に読み応えはあった。しかし、本書の価値はそれだけではなく、場末の人々の複雑な葛藤を丁寧に描いていることである。

「なぜこの会社は潰れなれけばならなかったのか」それを我々社員や迷惑をかけられた顧客、そして日本社会は知る必要があるーーーこれが真相究明に突き進む大きな彼らの大きなモチベーションになっていたことは疑いない。だが、自分がこれまでずっと仕えてきた会社の不正を暴くのは決して前向きな仕事ではなく、糾弾しなければならない人々には会社生活でお世話になってきた先輩社員やOBも多く含まれている。顧客からの預かり資産を返していく清算業務にあたる社員は毎日毎日顧客からの罵声を直接浴びせられる。何より、この12人のほとんどには自分が守らなければならない家族がいる。家族を養っていくためには、もうすぐ完全に無くなる会社で仕事を続けるのは全く合理的ではなく、いち早く転職しなければならなかった。それでも、誰かがやらなければならない、誰かがこの会社の最期をみとらなければならないと感じたーーー筆者の質問に12人の多くはこう答えている。
彼らがまとめた100ページ以上に及ぶ調査報告書は、それまでの企業不祥事における社内調査のイメージを根底から覆す「魂の報告書」となった。「破綻した会社の社内調査など、どうせ形だけのものだろう」というマスコミの思い込みを粉々に打ち砕いた。

「会社が潰れて全員が不幸になったのか、否ですよ。会社の破綻は人生の通過点に過ぎません。私はサラリーマンとして幸せな人生を過ごしました。」社内調査の責任者であった本書の主人公の嘉本氏は当時を振り返ってこう語っている。
1997年11月、山一證券の社員たちは突然否応なしに「自分の人生にとって会社とは何なのか」を考えさせられることになった。リクルートの元社長河野栄子氏がいうように「人生は企業が責任を負えるほど軽いものではない」だろうし、会社の破綻も「人生の通過点」くらいに捉えるのが丁度いいのかもしれない。
それでも、山一證券のしんがりとなった12人の正義感あふれる仕事ぶりは、彼らの人生に深く刻み込まれているはずである。会社破綻という数奇なシーンではあるものの、本書はいかに会社や仕事と向き合うかという点で多くの読者に重なり、胸に深く刻み込まれるノンフィクション作品である。

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