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つくしっちさんのレビュー一覧

投稿者:つくしっち

紙の本牡丹さんの不思議な毎日

2006/08/15 13:48

心地よい不思議話

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「犬を飼える所じゃないといや」と菫は泣き、「盆栽は捨てられない」とお父さんは泣いた。引っ越し先を一任された菫の母、牡丹さんが探してきたのは、ひなびた温泉街にある廃業ホテル。多すぎる部屋をトランクルームとして貸し出し、30年ローンを切り抜けるのだという。この家の力関係は、愛犬フレディ+牡丹さんが7、菫+お父さんが3。有無を言わさず引越荷物は運び入れられた。
 ところが、このホテルには温泉好きの幽霊が付いていたのだ。太っ腹の牡丹さんは、お風呂掃除をしてもらうという契約を交わして幽霊との同居を決めてしまった。やがて、幽霊の「ゆきやなぎさん」は家族同様の存在となり、牡丹さん一家の周りには不思議で温かな出来事が……。
 牡丹さんは、最初にこう聞いた。「あなた、幽霊なんですか?」。全編に貫かれる、この牡丹さんのダイナミックさが良い。このダイナミックさ故に、牡丹さんの周辺は「不思議がまかり通る場所」に変貌したに違いない。何の違和感もなく、自然にあの世とこの世が交錯する。きっと、昔、日本人は、こんなふうにご先祖様や、この世のものではないものと交流していたのだろうと思う。
 返ってきた言葉は「わかっていただけて、うれしいです。とても、自分の口からはいえません。……」だった。何と奥ゆかしい。この知恵も情けも好奇心も持ち合わせる幽霊のゆきやなぎさんは、次々と現代の技を覚え、文明の利器を使いこなす理想的なおばあさん。こんな家付き幽霊との同居なら悪くない。
 柏葉幸子の文章は、歯切れが良くて小気味よい。牡丹さんの元気が、行間からあふれ出てくるようだ。適度なユーモアも、ノスタルジックな「不思議」も、面白いというより心地よい。帯にある「ファンタジー」より「奇譚」という言葉がぴったりくる。昔から身体になじんでいるような安定感があり、ささめやゆきの、のほほんとした絵とともにホッと肩の力が抜ける本である。

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