アオさんのレビュー一覧
投稿者:アオ
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紙の本麦ふみクーツェ
2004/04/05 21:20
温かく優しい物語を探している方へ。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
これは数学者の父さんと、名高いオーケストラの元ティンパニー奏者だったおじいちゃんと港町で暮らす「ねこ」少年の物語だ。
猫の鳴きまねが本物の猫よりも上手だから「ねこ」と呼ばれる少年は、その高すぎる背のせいで疎外感を感じながらも、さまざまな人に出会い、困難を体験し成長していく。
おじいちゃんが教える町の吹奏楽団と風の音楽のこと。
世界中の奇妙な記事をスクラップし続ける小学校の用務員さんとのこと。
ある時、町に降りしきったねずみの雨のこと。
次第に素数に溺れ、狂い始める父さんのこと。
音楽とスクラップ記事に心踊らせ、人々の死に悲しんだ。
クーツェの、麦をふむ足音とともに、ねこも、私も。
「悲しさから、ではなく、人生の素晴らしさ、に私は泣いた。
長い長い物語の果てにたどり着いた真実の美しさに。」(帯より)
青年になったねことみどり色が、あたたかい畑土をふむラスト。
日射しと歌と希望に満ちあふれたこの最後を、私は決して決して忘れないだろう。
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