yukinoyuさんのレビュー一覧
投稿者:yukinoyu
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2001/01/10 00:40
オウエンのために祈りを
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『ガープの世界』(最近では『サイダーハウスルール』か)で有名なジョン・アーヴィング80年代最後の作品。もちろん ガープは以前に読んでいたのだけれど、この作品はそれを凌ぐ素晴らしい出来映えだと個人的には思います。
自分に神を信じさせたのはオウエン・ミーニーであると主人公は冒頭で述べる。母の死(オウエンの打った打球による)、自分の父探し、大人への成長、神への寄進、すべてにおいて大きく関わった親友オウエン。彼の生涯を通じて物語りは「ぼく」の一人称によって語り進められる。
数多く登場する人物のなかでも極めて特異なのはやはりオウエンであり、また彼の特異性がこの物語のコアであるといえる。小さな子供のような身体、よく通る異星人のような声、抜群の頭脳。宿命のファウルボール以後エスカレートしていく予言じみた不可思議な言動(後ですべて効いてくる)。
すべての事柄はオウエンの確信と重なり、自らを神様の道具と言わしめていく…。
こういうとなんだか暗くて重たそうな話だなーと思うかもしれませんが、アーヴィング特有のユーモアは忘れることなく随所に散りばめられており、愉しく読み進められます。
とにかくこの本を読んでジョン・アーヴィングって本当に物語りがうまい人だなあと再認識しました。各所に張り巡らされた伏線(予知夢、肩車スラムダンクなど)が一気に爆発するラスト(スローモーで情景的)は強烈なカタルシスとなり読む者を打ちのめします。ちょっと詳しくいうと「ぐぉー、あれもこれも全部この為だったのかー!」 という感じ。読後の脱力感も相当です。人の運命についてもちょっと考えさせられてしまいます。
ジョン・アービングお約束の上下巻にわたる長編となっていますが、一気に読める傑作です。 というか止まりません。 読めばきっとオウエンの凄まじく、不思議な生涯に引き込まれることでしょう。
かなりのオススメです。これは。
ちなみにジョン・アーヴィングのもっとも崇拝する作家はチャールズ・ディケンズだそうです(やっぱりなぁ…)。
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