kajieさんのレビュー一覧
投稿者:kajie
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2001/02/05 13:18
それでもボクには言えないけれど
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思ってることの半分すら口にしない… それがまっとうなオトナだ。「こんなコト言ったら傷つくんじゃないかな」「ここで怒ったりしたら、バカにされるんじゃないかな…」と思い、我々は、思ったことを知らん振りしてなかったことにする。それが日本人の「恥と遠慮の意識」ってやつだろうか。それが普通だ。それが当たり前だ。
しかし、本書は敢えてその「遠慮」に立ち向かう。小心者ライターを自ら吐露する北尾トロ氏が、普段思っていても口に出来なかったことを実際に試してみようとする。本書はそんな姿が綿々と綴られていく。
打ち明ける内容は、どれも些細なことである。「近所の死ぬほどマズイ蕎麦屋でマズイと店主に言う」「電車の中でマナーの悪い若者に注意する」なんてものから、「お台場のデートスポットでなぜか男一人で来ている人になんでここにいるのか話しかけて聞く」「好きだと言えなかった学生時代のあの女性に会って告白する」「42歳フリーライターの肩書きで職安に行き就職活動をしてみる」「ちょっと知っている程度の知人に鼻毛が出ていることを指摘する」など、誰もが思っていてもなかなか恥ずかしくて実行できなかったことばかりだ。北尾はそれを行う。勇気を振り絞って。
その結果、無視されたり罵倒されたり、逆に励まされたりそれがきっかけで仲良くなったり。「言って良かった」というときもあれば、明らかに「沈黙は金」だったろうという時もある。しかし、北尾は「ココロに芽生えた小さなわだかまりを放っておくわけにはいかない」という。
これは、普段我々ができなかったホンネの姿だ。
ボクは思う。ボクはこんなバカなマネはしないぞと。人を傷つけたり人に傷つけられたりなんて、鬱陶しくってかなわない。だったら、他人と衝突しないように、上司にはおべっかの一つでも言い、カワイくもない恋人の服にはお世辞の一つも放ち、電車の迷惑な客には鼻を鳴らしてじっと我慢する。それでいいじゃないか。誰が困ることがあろうか。
しかし、本書を読んでから、ちょっと気分が変わる。何か自分のココロが本書にぽんと後押しをされたようで。些細な話だ。しかし些細であるがゆえに、多くの人の共感を得るだろう。本書は、すべての日本人に読んでもらいたい、そんな本だ。
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