kotetsuさんのレビュー一覧
投稿者:kotetsu
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2001/03/21 21:38
極上のエンターテイメント
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下條さんの著作はどれもとてもわかりやすい言葉で語られている。私は知覚の専門家ではないけれど、もし自分の専門分野に彼のような一流の研究者かつ一流の書き手がいたならば、と願ってやまない。「サブリミナルマインド」や「意識とは何だろうか」など、手にとりやすい形にまとめられた彼の良書のおかげで、自分の研究の面白さを一般の人たちと共有できる心理学者たちは、とても幸せだと思う。
さてこの本は。かつて大流行したステレオグラム。実は私、これまであれが見えた試しがなかった。見栄から、見えた振りはしていたけれど…。それがこの本を手にした一番の動機だった。自分の目は人のとはつくりが違うのだと、半ばあきらめ加減だった私ではあったのだが、「自分の眼で見たことだけを信じる好奇心の強い人に」という著者の言葉に励まされ、またステレオグラムの歴史、立体視の心理的プロセスなどステレオグラムにまつわる真実、1ページごとに明かされていくそのミステリーの謎解きのような快感の中で、ついに目の前に広がる不思議な世界を垣間見ることができたのだった。理論を知ったからといって、ただそれだけで見えるわけではない。そうではなく、この本は、この本の面白さは、このステレオグラムを見たい、という強い欲求を与えてくれる。そして、やさしいものから難しいものまで、豊富な材料が、適切な解説とともに散りばめられている。そういった状況が、否応なく読者を立体視の世界へ引き込んでいくのだ。
知的な好奇心と感覚的な喜びの実感。両者を兼ね備えた本書は、もはや単なる読書を許さない。これは、そう、極上のエンターテイメントなのである。
紙の本ルージュの伝言
2001/03/17 02:30
甘く切なく
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Yuminの歌声は、世代を超えた青春ソング。甘く切なく、それはそれぞれの人の恋愛をしっとりと奏でる。多くの人の心を、同じだけキュッとつかんでしまう、そんな普遍的な音楽の裏には、どんなに素敵な恋愛があったのだろう…。
この本は、今ではもう古き良き時代の青春の一ページを、軽やかな歌詞とメロディに乗せて、Yumin自身が飾らない彼女の素のままの言葉で綴るちょっと素敵なエッセイです。
青春の後姿を人は皆忘れてしまう。「あの日にかえりたい」という彼女の歌のフレーズです。忘れてしまった「あの日」をもう一度思い出してみたい。そんな気分の時には、この文庫本をポケットに忍ばせて、思い出の場所を散歩してみる。そんな休日、素敵だと思いませんか?
紙の本リング
2001/03/16 16:09
恐怖
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絶叫マシンなどで、ワーとかキャーとか叫んでいる怖さと言うのは、本当は面白半分のスリルであって、それは恐怖とは程遠い。人は本当の恐怖に出会ったときには、声など出ないものである。そういう意味で読書というスタイルは、実は最もホラーと相性がいいのかもしれない。映像のように外部から与えられる受動的な刺激に対しては、人は反応を返すことができる。けれども、テキストから取り入れた情報によって、自分の中に能動的に作り上げてしまった内的なイメージに対しては、自分の外にあるものとしての防御反応を返すことはできない。それがもし恐怖のイメージであるならば、私たちはただ声もあげずに、恐怖するだけなのだ。
本当によく書かれた本だと思う。文章が、想像力を刺激する。鮮やかな映像を生む。それは豊かなイメージだ。恐ろしく豊かな恐怖だ。映画を見た人も、見ていない人も、ただその感覚を味わってみて欲しいと思う。
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