ロレンツォさんのレビュー一覧
投稿者:ロレンツォ
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2002/06/03 11:06
精神主義を超えて上級者への世界が垣間見える
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
著者はリスク認知心理学の専門家であるが、語学、茶道、将棋などに精通しており、その経験と専門家としての立場から技能や知識を効率的に身につけ、上級者への道を駆け上がる方法を示している。
前半では記憶のプロセスを説明して、上達のカギが「スキーマ」と「コード化」にあることを提示する。中盤では多くの具体例を挙げながら初心者から上級者への道のりを解き明かす。そして後半ではスランプの克服法や上級者になるための特訓法まで網羅されている。
興味深いと感じたのは、ある技能に関して「上級者」がどのように接し、どのような世界が見えているのかを詳述した点だ。世間にはあらゆる「入門書」が溢れている。もう何年も関わっているのに「初心者なもので」と頭を掻く人も多いが、それは本人の努力が足りないだけでなく、初心者から上級者に至までの教授法が定まっていないことにも要因があるように思う(それは、コンピュータなどの変化の大きい世界に顕著だ)。
本書で示された「上級者の世界」は学生のみならず、新しい技能や仕事を身につける必要に迫られた社会人や趣味の世界を豊かにしたい人たちに至るまで、幅広く適用できる知恵として参考になるだろう。
また、上級者への特訓法では「大量に暗記する」「高い道具を買う」など一見、精神主義とも思える事柄にも学問的な裏づけを加えて解説している点にも好感を持った。
図解などはそう多くはない。だから本書を読了した後、自分が習得したい技能についてどのように適用できるのか、全体について十分整理し、検討する必要はあるかもしれない。しかしそれもまた楽しいプロセスではないだろうか。
私も、趣味や仕事に本書の内容を大いに活用したいと思っている。
紙の本記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方
2002/06/03 09:47
豊かな表現力と情熱が誘う最先端の世界
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
新しい脳科学の出現を知ることができると同時に、新しい魅力的な著者の出現を知ることができる快著であると思う。
第1章、タクシーの運転手の記憶力にかかる導入部が素晴らしい。著者の豊かな表現力と、高度な知識を一般向けにわかりやすく伝えようという著者の熱意が伝わってくる。この手の本には単なる知識の羅列や強い自己主張に終始する本が多いが、この本にそういったものを感じることはない。
最新の、と謳ってはいるがこの本に書かれた内容もいずれ古くなり、他の著者に引用され、陳腐化する日が来ると思う。しかし、著者の情熱は古くならない。彼の熱さに引き込まれるように一気に読み通す快感を知るだけでも本書を手にする価値があると思う。
なお、ハウツウ本のようなタイトルが内容に負けてしまっているために、実践的なテクニックが少ないと感じる読者にはPHP新書の「上達の法則」を読むと、本書で得られた知識と相乗効果を生むと思われる。こちらもお勧めしたい。
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