yoshito*さんのレビュー一覧
投稿者:yoshito*
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紙の本脳死
2002/03/05 02:44
詳細で読みやすい入門書
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そもそも「脳死」とは、いかなる状態か?
植物人間と脳死人間の違いは?
脳死判定基準とは?
臓器移植と脳死問題は別モノか?
「脳死」は「人間としての死」か?
「人間としての死」とは何をもってそう言えるのか?
外国の状況は? 判定基準に差はあるのか?
このような、とても単純で基本的な問いに答えてくれる本である。
ノンフィクションのジャンルは、古い本だと情報そのものも古いとされる向きもあるかもしれない。が、このような社会全体、思想全体に関わる問題はなかなか内実の変化が無いものであると思われる。発行されて10年以上経つが、脳死について社会全体の知識が浸透したとは思えず、よって未だ理解も思っているより不正確を極める(と、思う)。
冒頭に記したような問いに対する答えは、執筆当時既に可能であった西洋医学の技術にのっとって導き出されるものであり、独りよがりな思想論や理想論、お涙頂戴ものではないことを明言しておく。著者は臨床医・基礎医学・麻酔医・移植医など、同じ医学でも様々なジャンルの専門家に取材をしており、その点は読者自身が独自にこの問題に取り組む際にも有益な情報となるだろう。
脳幹死説を取るも、全脳死説を取るも、それは読者次第であろう。医者でさえ意見が別れるのだから、ソレ自体、別に不思議なことでは無い。しかし何事でも知らないのに論ずることは不可能だ。この本は、まさに、考えるための基礎知識を与えてくれる。
この後発刊されている『脳死再論』『脳死臨調批判』も合わせて読まれることをお勧めするが、基本的な情報はこの本で網羅されているので特にこれを強く推したい(あとの二冊は、これを読めばアッという間に読めます。多分)。
折角の文庫版、価格の倍以上の価値は容易に認められる。是非、読んで欲しい。
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