たなちんさんのレビュー一覧
投稿者:たなちん
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紙の本パレード
2002/06/25 10:38
「畳の目」
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センセイとツキコさんが昼食にそうめんを食べる支度をしている。そうめんを茹でる。ざるにあげる。流れる水の中でもみ洗いする。ガラスの鉢に盛り付ける。 センセイは薄焼きたまごを刻み、みょうが、シソ、ワケギ、キュウリ、煮茄子、梅干しの裏ごしと、一つずつ小皿に薬味を準備していく。そうめんの盛り付けは食べやすいように一束ずつと、センセイは妙に細かいことを言う。
「茄子の深い瑠璃色」「みょうがの薄紅色」という表現がある。前作『センセイの鞄』でもそうだったが、居酒屋で初物のソラマメが出される、ひややっこを注文するなど、川上弘美は食べ物の描写、特に旬の食べ物の描写が実にうまい。 8畳間の居間にちゃぶ台を出して、センセイとそうめんを食べる。それだけで前後に何の説明もない。二人の年齢も、関係もわからないのではあるけれど、満腹になってまどろんでしまったツキコさんの腕に「畳の目」がついてしまう。それだけで、ドキッとするような濃密な情感が感じられる。
書名となった「パレード」は、そこで語られるこどもの頃の話なのだが、話の前後に見開きページを使って挿画がある。あれは畳の目だと思うんだけど、違うかな?
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