ｐａｔｃｈ　ｍａｎさんのレビュー一覧

舞っているのは「世界」だ

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　異才、上遠野浩平の放つ＜ナイトウォッチ＞シリーズ第三作目。
　この著者独特の読後感は健在で、過去や未来という時間軸はもとより
　世界観そのものが奇妙に連結され、読者は「上遠野ワールド」に
　引き込まれていく……。

　前２作や同文庫『少年の時間』収録の『鉄仮面をめぐる論議』、
　電撃文庫の＜ブギーポップ＞シリーズに『冥王と獣のダンス』と、
　この作品にリンクする数々の作品を読んでいる方は、間違いなく楽しめる一品。
　虚構の世界に生きる少女の生き様を通して、深遠な（難解な？）なテーマを
　投げかけるところは著者の真骨頂だろう。

　ただ、ＳＦ作品として読むのならば、謎が多すぎて完成度に疑問を抱く人が
　いるかも知れない。しかしそれを踏まえた上で、著者のストーリーテリングは
　評価すべき価値があると感じる。

　おもしろい、そう断言できる作品の一つであることは間違いない。
　迷っている方、躊躇わずカゴに入れる事をオススメする。