APIOさんのレビュー一覧
投稿者:APIO
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紙の本ぬるーい地獄の歩き方
2003/03/08 02:01
ここの住人はいつかの自分だ!
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おそらくエッセイを書かせたら彼の右に出る人はいないだろう。すばらしい。こころから拍手を贈りたい。難しいこと考えずに豪快に笑って楽しみたい本なのだが、少しだけ彼のすごさを分析してみた。
すごさ1.着眼点。「ぬるーい地獄」略して「ヌルジゴ」とは、公に主張できない程度の地獄を意味する。本人は辛いのに公には辛がられない、そんなヌルジゴの住人(子役、いじめ、失恋、痔、若ハゲ…etcに苦しむ人々)を氏が次々にインタビューしていく。称して「地獄めぐり」。なんて非生産的なしょうもないテーマなんだろう。こんなことまじめにやる人、やっぱすごい。
すごさ2.文章力。インタビューの合間合間にのっている文章も含めて全てがしゃべり口調。いわゆる口語体というものだが、エッセイやらタレント本やらによく登場している。日常のなんでもない出来事を題材に、作者の妄想もまじえておもしろおかしく書いたものが流行っているようだ。この口語体、誰にでも簡単に書けそうにみえて実は案外そうでもない。多くは過度に主観的で読みにくかったり狙いすぎてて興ざめしたり(無理に不思議ちゃん臭を演出してたり)日常の皮肉り方がシビアすぎて腹が立ったりする文章が多い。そんななかで松尾氏は、妄想具合も文体の緩急のつけ方もピッカーと光っている、と思う。
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