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京極 浩史さんのレビュー一覧

投稿者:京極 浩史

5 件中 1 件~ 5 件を表示

紙の本ゲノムが語る23の物語

2001/02/26 00:16

23対のヒト染色体のそれぞれの上に存在する代表的遺伝子に関する話題をもとにゲノム問題に切り込む

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 30億塩基対といわれるヒトゲノムの解析がほぼ完了,その産物の蛋白の機能解析へ進みだした。その30億対が分かれてのっている23対の染色体について,それぞれの上にある代表的遺伝子を取り上げて23の挿話としたのがこの本で,書名の由来でもある。
 たとえば第1染色体ではそこからコピーされる5S RNAを取り上げ,RNAが先にできたという生命の歴史に触れる。次の第2染色体では類人猿では2つだったものが合体したものに相当することから,チンパンジー,ゴリラを引き合いにだしてヒトの歴史を語る。第3染色体ではその上にある遺伝子の変異に起因する遺伝病から,メンデルに始まる遺伝学の歴史がテーマとなっている。このように大変スマートな出だしで,それぞれの染色体にまつわるエピソードを集めて,知能,性格,本能的行動,ストレス,記憶などにおける遺伝子の寄与の具合を論じている。
 問題となりつつある遺伝子検査については,個人に選択を提供すると著者は肯定的である。また,著者の立場は遺伝決定論と環境決定論のどちらの極端も排している。それでも「A・ハクスリーは非凡にも育ちが支配する世界の悲惨さに気がついていた」とか「環境決定論者は遺伝の影響を否定しようとするが遺伝決定論者は環境の影響を否定する人はほとんどいない」という記述にみられるように,遺伝決定論に近いものの外部の影響も認めている。
 どういう理由からか第22番染色体では特定の遺伝子を取り上げていない。しかし,自由意志の遺伝子というパラドキシカルな概念を持ち出し,人間の本性=自我と論じ,特定の遺伝子を語っていないこの最終章が実は最も読みごたえがある。著者はゲノムを本にたとえているが,その本の読み方として前書きに要領よく分子生物学の解説があって行き届いている。翻訳についても参考文献で邦訳のあるものはその邦題と出版元を併記しているのも読者に親切といえる。
(C) ブッククレビュー社 2000

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ゲノムの波紋

2001/02/20 18:15

ヒト遺伝子の解析がもたらす功罪をその最前線,歴史,社会的諸問題と将来展望まで多くの事例を挙げて考察

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 ヒトゲノムの全解析はいよいよ終点に近づいてきた。最近の新聞はヒト遺伝子の総数は予想の半分以下の3万個程度と報じ,解析のトップを走るといわれ,本書にも何度か登場するセレーラ・ジェノミクスの社長クレイグ・べンターの談話も載っていた。全解析が完成しても約10万といわれる遺伝子産物のペプチドがどうやって作られるのか,まだまだわからないことは多々ある。そういうことが全部わかったとして,はたしてゲノム解析の未来はバラ色なのか?
 本書は”正確で公正な”ジャーナリストの職業倫理(著者による)に基づいて(1)遺伝子検査の現状(2)歴史的背景としての優生学,つづいてヒト遺伝子研究からゲノム計画の起源(3)アメリカの医療保険制度を含む倫理的社会的諸問題をそれぞれ6章ずつ取り上げている。まず遺伝子検査についてはテイ・サックス病の予防のため成人儀礼として血液を検査し,危険な結婚を思いとどまらせるという超合理的な方法がアメリカの東欧系ユダヤ人社会で大成功を収めているという話に驚かされる。着床前の診断も現実になっており,受精卵が8細胞に分裂したときそのうちの1細胞をとってDNA検査をし,正常ならば着床させるということもできる。さらにADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症のような遺伝的免疫システム障害を持つ子の親が次の子を同じ組織型となるように選び,その臍帯(せいたい)血中の幹細胞を上の子の治療に使うという話があるが,これが進むと自分のスペア部品のためにクローン臓器を造ることになる。そこまで行かなくても一卵性の8つ子は作れるようなので相互に融通しあえば将来なにかと便利に違いない。この問題点はどこまでが許されるかという境界がないことにある。
 遺伝子研究には避けて通れない優生学の歴史が紹介されている。しかし,原爆の遺伝子への影響について,日本ではもともと助産婦が奇形児を闇に葬る慣習があり,被爆者による出産を調査しても比較できなかった。また,当時の政府が人口調節の手段として中絶を積極的に奨励していたので流産率での比較もできなかったと書かれている。だが,これは著者のいう”公正と正確”に関わる問題なので検証を要すると考える。
 最後の3分の1は倫理的社会的問題に割かれている。医療保険の問題は何らかの形で必ず差別につながるもので,これに対する答えはアメリカのような営利的制度では解決できず,単一の支払者による医療システム,つまり日本のような国家による健康保険制度の確立にあると説くが現実には困難で,有権者が状況を変えようと思うことが必要という。もう1つの答えとして,差別につながる線引きが不可能なら公衆衛生上,予防は遺伝子型でなく表現型を対象とすべきというアメリカCDC(疾病管理センター)の立場も紹介されている。
 最後に,翻訳はうまいとはいえない。日本語として意味の通らない部分もあり,索引を省略したからか用語の不統一も目立つ。書名も流行のゲノムを入れたい気持ちはわかるが原題の「不自然淘汰」の方がいいのではないか。
(C) ブッククレビュー社 2000

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レントゲンによるX線の発見を中傷するナチスの大物科学者がいた。レントゲンの偉大さはどこにあったのか

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 X線の発見者レントゲンにはいわゆる伝記がないという。そこで長年医療用X線装置関連の開発と放射線診断学の教育に携わってきた著者が10年以上かけて集めた資料にうん蓄を傾け,自らその伝記を書くとともに今まで伝記がほとんど書かれなかった背景も明らかにする科学史の裏面にも通じる好著である。
 X線発見の前史としての低圧気体中の放電現象,さらにその前史としてのマグデブルグの半球から話が始まるのは少々回り道だが,多くの物理の教科書でレントゲンは陰極線の研究中に透過力の強い,未知の放射線を発見したとあり,どこに彼の工夫があったかはあまり書かれていない。この辺が後に中傷される一因とも思われるが,評者の見解ではこれはserendipityの好例である。それは『当てにしないものを偶然にうまく発見する才能』を意味し,同じ現象に出くわしてもそれをものにできるかは研究者の能力の問題で,白川英樹氏のノーベル賞はその典型である。
 もう1つレントゲンの偉大さはこの大発見に際し7週間かけてその性質から応用の可能性まで検討してから17項目からなる「放射線の一新種について」という論文にまとめて発表したことにある。まさに『近代科学の扉を開いた』といえよう。
 本書では論文についてはその要旨とレントゲンの科学者としての資質がよくわかるが,肝心の発見の経緯は周辺の記述が盛り沢山過ぎてやや焦点がぼやけるように思える。第1回ノーベル賞受賞後に始まるナチス科学者レナルトの中傷とアメリカでのいい加減な発見秘話の流布が伝記作家がレントゲンを敬遠した理由と著者は推測するが,この辺がこの本の最もユニークなところと思われる。レナルトはX線のほか光電効果など2度もserendipityの機会を逃していて,遅れて陰極線の研究でノーベル賞をもらっただけでも幸せと言うべきだろう。長岡半太郎の原子模型,志方益三のポーラログラフィーなど、もっと貢献しながら他人だけがもらった例も多いのである。
(C) ブッククレビュー社 2000

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DNAの2重らせん構造の発見により史上最年少でノーベル賞を得たジェームス・ワトソンの伝記

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 今世紀最大の発見と言ってもおかしくないDNAの2重らせん構造を弱冠25才で見い出し,34才にしてノーベル賞を得たワトソンは,受賞後わずか6年後に自著『二重らせん』でノーベル賞をめぐる生々しい競争の内幕を書いて大きな反響を呼んだ。本書はそれから30年を経て文字どおり功なり遂げたワトソン博士について専門のサイエンス・ライターが若い人向けに書いた伝記である。
 ジェームス・ワトソンは1928年に南シカゴの知的環境はよいがあまり裕福でない家庭に生まれた。小さい時から好奇心が強く頭脳優秀,飛び級で15才でシカゴ大学に入学,リベラルな環境のもとに「大きな構想をえがいたり,文明を動かしているものを見たり,さまざまなことがおきる原因を知る」ことができ,「同級生が自分より頭がよいと思えるトップクラスのところで自分が試される場所」で自分の能力に自信を持ちはじめる。
 そしてその後を決定づけるシュレディンガーの『生命とは何か』に出会い遺伝子の秘密を解明することを決意し,大学院はインディアナ大のルリアのもとでファージの研究により22才で博士号を得て,科学の世界に受け入れられる素質に目覚める。学位取得後欧州へ渡り,コペンハーゲンのカルカーのもとに1年を過ごし,ケンブリッジのキャベンディッシュ研究所へ移って,最高のコンビを組むことになるフランシス・クリックに出会う。そしてたった2年でDNAの2重らせん構造を発見する。
 この経緯を読むと優れた素質が開花するにはいかに人との出会いが大切かよく分かり,この本が若い人向けに書かれた理由のひとつもそこにある。野心満々のワトソンとどちらかと言うと厄介者のクリックを温かく見守る大家のブラッグ卿,声をかければすぐにトッドが模型を見てくれ,ケンドルーもぺルツもいる。ポーリングと競争し,狙ってノーベル賞を取ったと言われるクリックとの研究のいきさつでは『二重らせん』の迫力にはかなわないが,30年ぶりに同書を読み直してみるとその書き方自体ワトソンの人となりを表していることが本書を通じてよく分かる。ボソボソ話してひとりでクスクスと笑う来日時の講演での話し振りがいまも目に浮かぶ。
 『二重らせん』を世に問うて科学の研究を競馬の世界に引き下げたという批評まであったその後のワトソンは,魅力的だが不思議な性格がもたらすユニークさゆえにアカデミックな機関のトップにはつけそうにもなかったと言われた。それにもかかわらずコールド・スプリング・ハーバー研究所の立て直しに成功し,同研究所を世界有数のがんの研究センターに育て上げ,さらに神経科学センターを設立する。ゲノム解析計画でも中心的役割を果たすが,倫理では主張が容れられたが特許の扱いで対立して辞職する。
 『二重らせん』と違う本書の意義はNatureに載った約1ページの論文で若くして名誉を得た人間のその後の生き方を描いたことにある。40才で結婚した20才年下の夫人もそのデザインに貢献しているコールド・スプリング・ハーバーの美しいたたずまいはノーベル賞論文に劣らないワトソンの立派な作品ということがよく分かるからである。
(C) ブッククレビュー社 2000

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ゲノム解析技術に始まり医学への展開,新薬の開発から社会的影響までを網羅しゲノム医科学の現状を広く知る

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 ゲノムという言葉を聞く機会が最近とみに増えた。メンデルから数えて135年,ワトソン=クリックの2重らせんモデルからわずかに35年,いまやヒトのDNAの全配列の決定も時間の問題となった。世上では個人の遺伝的素質も全部解明され,ヒトの病気もすべてゲノム解析から解決されるとか,あるいは日本はゲノム解析競争で米国に完敗し,取り返しがつかないとかいった俗説も流れているが,はたして本当か?
 本書では(1)ゲノム解析の最先端に始まり,(2)医学への展開,(3)新薬開発への応用,(4)生命倫理,特許権など,社会的問題までゲノムと医療の関係をよくまとめた中級向けの総説30編からなるガイドブックである。
 ゲノム解析では勝負はまだこれから,完全長cDNAでは日本がむしろリードしていて,いよいよ本番の機能解析に向かうということが分かる。次の医学への展開もまだ緒についたばかりで,遺伝子治療はまだテスト段階。
 比較的進んでいるのはマイクロアレイを使ってがんの個性を調べて,抗がん剤の選択に役立てる研究だが,これとてもまだコスト的にも実用化には間がある。個人の体質と疾患感受性もいずれは生活習慣病(成人病)の防止に有効だが,まだ個人的な遺伝的変異のデータ集めの段階にある。
 新薬開発では「薬としてのタンパク質」もさることながら,ゲノム知識,技術を駆使して腕力よりも頭脳による開発への転換が必要で,開発効率の向上につながることが分かる。最後の社会的諸問題では医療経済の観点からの指摘は的を得ている。効かない抗がん剤の使用は副作用の苦痛を患者に与えるだけでなく医療経済的にも無駄で健保の赤字につながる。
 なおこの章で生命倫理と保険会社の関係を論じてないのは一寸残念だ。
 しかし全体としてゲノムと医療について鳥観し,自分の専門外のことを手軽に調べたい研究者,企業では役員の質問に答える企画担当者,この分野を志す学生などに役立つ便利な総説集といってよいだろう。
(C) ブッククレビュー社 2000

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