鈴木康平さんのレビュー一覧
投稿者:鈴木康平
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
2001/02/24 01:03
出版担当者コメント
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
著者は、自由学園で約半世紀にわたり教鞭をとり、1997年8月に70歳でその生涯を閉じました。著者は生前、学園の周辺の自然を観察したことを中心に、オリジナルな発見を含む多くの文章を「私たちの自然」「学園新聞」「婦人之友」などに残しました。本書はそれらの文章の中から代表的なものを選んでまとめたものです。本書は難解な言葉を極力避けて、自然を愛する人なら誰でも読めるように、図や写真をふんだんに使って書かれたやさしい博物誌です。そしてどこか特別なところへ出かけていって観察したことをもとに書いたのではなく、日常の生活をしていた自由学園の周辺地域(南沢)の中で観察し、その中で発見したことをもとに書かれているため、多くの方に参考にしていただける内容になっています。著者の関心の中心は「飛行」に関することにあり、さまざまな自然の様子(鳥の飛行や種子の飛行など)を物理学的な切り口でもって観察しているところに特徴があります。そして、さまざまな模型(鳥の翼、はばたき機、クルクル回る種子の折り紙、マツボックリの模型)が紹介してあり、読者がそれを参考にして作る楽しみもあります。
各章の簡単な紹介をいたします。
一章 戦後間もない南沢の自然
二章 バードセンサス
三章 カルガモの十年の観察記録
四章 鳥の飛行
五章 ブラック版画
六章 昆虫の飛行とボイジャーの飛行
七章 種子の飛行
八章 マツボックリ
九章 工作
本書の内容は、現在の日本の自然環境、社会環境、教育環境を考える時、中学生から大人まで多くの人に示唆を与える内容であると思い、刊行することに致しました。二十一世紀は、「自然との共生」ということが重要な課題であることは周知のとおりです。そして学校教育においてもそのためのさまざまな取り組みが期待されています。著者の「自然の中にともだちを発見することが、自然保護の出発点です」というイメッセージは、教師ばかりでなく新世紀を生きていく人すべてにとって、指針となるものと思います。今子どもたちは、パソコンの普及などにより、実物を見なくても画像を通してたやすくさまざまな情報が得られるようになってきました。また受験体制の中で、本を通して知識を得る傾向がますます強まっています。このような社会環境にあるからこそ著者が大切にした実物を自分の目で観察し、地に足のついた勉強が見直されなくてはならないと思います。そして都市化が進んだ今の日本には、多くの人がストレスを抱えて生活しています。人間が自然に囲まれて生活する中で得られる喜びに気づき、多くの人が自然の中に友だちを見つけられたらどんなに慰めを受けられることでしょう。
是非多くの方に、本書を手にとって読んでいただきたいと思います。口絵には著者の描いたきれいなスケッチや著者が考案した美しい模型が出ていて、お友だちへのプレゼントにも使える本だと思います。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |