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伝農 浩子さんのレビュー一覧

投稿者:伝農 浩子

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本畏れ慄いて

2001/05/07 16:26

唯一救われるのは、これがいちおう「小説」である、ということ

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 フランスで50万部も売れている、しかも「日本企業に勤めた外国人女性の悲惨でユーモラスな体験記」となれば、コワイながらも読まずにはいられない。

 内容を言ってしまうと、憧れの日本企業に語学力を買われて就職したベルギー人女性が、出る杭を打たれ、図らずもお局さまに虐められ、最後はトイレ掃除を仰せつかると、というなんとも不条理な話がコミカルに描かれている。不思議の国日本の、不可解な日本人社会の様子が話題を集め、ふんだんに盛り込まれた、インテリジェンスを漂わせる独特のユーモアが高い評価を受けているようだ。なにせ、フランスでも権威ある「アカデミー・フランセーズ小説賞」を受賞、というのだから。ただし、日本では確実に賛否両論分かれそうではある。

 著者メアリー・ノートンは、今ではフランスで知らない人はいないほどの人気作家。父親が外交官である彼女は何度か日本にも住んだこともあるため、日本の事情を知っている。日本の読者に宛てた前書きによると、フランスで出版した後、日本人からもたくさんの反響があったという。「自分のことだと思った」という人、「全くデタラメ」と怒る人、「運が悪かった」と慰める人。反応そのものがメッセージの主の立場を表しているのかもしれない。

 舞台となっている1990年は、日本の景気のカーブがやや下向きの気配を見せ始めた頃だ。男女雇用機会均等法が施行されて5年。女性も夢を抱いて企業に就職したが、以前と変わらぬオトコ社会に絶望し、頭打ちの現実が見えたのと閉息感とで、結婚に走るか、やりがいのある職を海外に求め飛び出して行った時期でもある。そして、現地の日系企業に職を得たものの企業体質は変わらず、現地企業に移ったり、現地で自ら起業したり、というたくましい女性たちの話も少なからず聞く。

 十年一昔。今読むと確かに違和感を感じないでもない。また、バブルも見事にはじけ、企業の事情も変わった今となっては、貴重な人材を飼い殺してずいぶんと余裕のあることで、と皮肉も言いたくなる。今では、多いとは言えないまでも男性同様の仕事に付く女性も増え、それなりに上にも進めるようになった。しかし、そのためには男性の何倍もの力(と愛嬌?)を発揮しなければならない。当時はもっと大変だっただろう。そうしてやっと上がって来たお局さまのイビリを、ヒドイと思いつつも、その気持ちは分かってあげたくなってしまうのだ。ま、妬みや足の引っ張り合いは洋の東西、時代を問わないことではあるし、リストラの嵐の昨今は、似たような嫌がらせが男女を問わず行なわれているところもあるらしいのだが。

 パリに住む知人に聞くと、彼女の周辺でもこの本は驚きと日本人(特に女性)への同情をもって読まれたようだ。そしてこの本はヨーロッパ諸国、アメリカ、中国、韓国でも翻訳、出版される。旅行先でいろいろ聞かれることになるかもしれないので、答えを用意しておいた方が良いかも。唯一救われるのは、これがいちおう「小説」である、ということ。……あんまり説得力ないか。

★女性サイト>文芸・小説もどうぞ。

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