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宇波 彰さんのレビュー一覧

投稿者:宇波 彰

2 件中 1 件~ 2 件を表示

著名な社会学者エリアスによる個人と社会の関係,近代人の自我形成についてのユニークな論文集

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 本書の著者ノルベルト・エリアスは,ユダヤ系ドイツ人で,そのためナチスの政権成立以後は亡命先のイギリスで活躍した著名な社会学者である。その多彩な著作のなかで,『宮廷社会』『文明化の過程』は,わが国でも広く読まれてきた。この『諸個人の社会』は『文明化の過程』と直接につながる論文集で,1939年の「諸個人の社会」,1940年代から50年代にかけて書かれた「自己意識と人間像の問題」,最晩年の1987年の「われわれ=われのバランスの変化」を収めている。
 本書におけるエリアスの基本的な問題は,「個人と社会の関係」である。近代以前には家族を中心とする相互に密接な関係で結ばれた共同体が,個人のアイデンティティーを形成していたのであり,これに対して,近代では中央集権化,都市化という社会構造の変化が進行するにつれて,個人がしだいに自立していったということになる。
 それをエリアスは「われわれとわれ」という対立関係で捉える。昔の農民の手紙では,主語はつねに「われわれ」であり,「われ」ではなかった。「われ」は「われわれ」としてのみ存在した。この「われわれ」から「われ」への変化を明確に宣言したのが,デカルトのキーワード「われ思う,故にわれあり」であるとするエリアスの指摘はきわめて説得的である。
 エリアスは「個人と社会の関係」という問題を抽象的に論じているのではない。カフカ,サルトルをはじめとして,多くの文学作品も考察の対象とされる。また,結論のところでは,国家を超えたところにある「人類」への一種の期待感を読みとることができる。本書は,人間への愛と深い学識に支えられたエリアスの思想を知るのに,重要な役割を持つ著作であるといえよう。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本透層する建築

2000/12/26 15:29

現代日本の代表的建築家である著者が,自らの建築作品と建築思想について論じた刺激的に満ちた論文集

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 「透層」は聞き慣れないことばであるが,本書を読むと,このことばによって著者が言おうとしていることがわかってくる。現代が,バーチャル・リアリティー,シミュレーションの時代であることは,ボードリヤール以来繰り返して語られてきた。それにもかかわらず,実在よりも表象が先行する現代において,どのようにそうした状況に対応し,行動し,考えればいいのかについては,ほとんどだれも論じていない。
 伊東豊雄は,建築というテーマで,この難問に答えようとする。彼はシミュレーションの時代である現代について,次のような認識を示している。「メディアの発達がものから言葉を引き離し,もの自体のリアリティを希薄にした」そのため,「メディアを介さないコミュニケーション不能の事態にまで至った」のである。
 こうした時代において,建築家としての伊東豊雄は,「二つの難しい問題」に答えようとする。一つは,「実体としてのモノが意味を喪っていくなかで,いかに実体としての建築をつくりうるのか」という問いであり,もう一つは,「地域的なコミュニティが無化され,メディアを介したコミュニケーションのネットワークがあらわれてはき消え,消えてはあらわれる過程で,いったいどのように持続する建築をつくりうるか」という問いである。
 この2つの問いに対する伊東豊雄の具体的な答えの一つが,「せんだいメディアテーク」である。これは図書館と美術館を含む公共建築であるが,従来の公共建築にありがちな中心性・一方向性を排除し,利用者が参加し,そこで自己表現・自己生成できるような空間を作り出そうとする建築であることが,熱っぽく語られている。
 日本の建築家の書くものには,なぜか独りよがりで,自己満足に終始するものが多い。伊東豊雄の本書が印象的なのは,この建築家の「建築の哲学」の実践のプロセスが,説得力のある文章で記されているからである。
(C) ブッククレビュー社 2000

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