足立区商社勤務さんのレビュー一覧
投稿者:足立区商社勤務
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紙の本人間が幸福になる経済とは何か 世界が90年代の失敗から学んだこと
2003/11/23 16:01
経済政策は誰のためにあるのか?
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「人間が幸福になる経済とは何か」というタイトル。原題は「The Roaring Nineties」(狂騒の90年代)だから、思い切った変え方だが、本書を夢中で読んだあと、納得した。まさにこれがスティグリッツの魂の願いだった。
日本の政治家は、本書の7章と8章を必読ではないだろうか。7章「減税が熱狂をあおった」を読むと、昨今の税制議論が本当に浅薄なものに思える。増税か? 減税か? なんて、単純なものではない。誰に対する増税なのか、誰にとって減税となるのかこそが大事なのだ。8章の「もはやわれわれは安心な生活を送れない」では、年金制度と雇用方針の変化によって、個人が昔よりはるかに市場の変動を受けることが書かれている。
経済政策はいったい、誰を幸福にしようとして作られていくのだろうか? 一般庶民のためと、おためごかしのように唱えられて、その実、富裕者のみを利する。金持ちが富めば、そのおこぼれが貧しい人びとにこぼれ落ちていく、という発想がはびこっているのではないか。われわれが幸福になるための経済とはどういったものなのか? スティグリッツはそれを探そうとしている。血のかよった経済書。それこそが人びとに、世界における不幸な現実への思いをうながし、われわれが確かに地球のひとりであることを喚起するのだ。
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