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先月(2017年6月)

玉木魔奇さんのレビュー一覧

投稿者:玉木魔奇

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紙の本大人失格 子供に生まれてスミマセン

2004/09/11 15:42

シャーペンの芯を刺す天才

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 面白い本には二種類ある。読み終えた後、「ああよかったなぁ」とすぐに余韻に浸るモードへと切り替えられるものと、「ああ、もう終わってしまったのか?」と終わったことを受け入れたくないあまり、ありもしない続きを熱望してしまうものの二種類である。前者は、満足感・充実感という体によさそうな精神状態になるが、後者の場合は違う。欠乏感・虚無感に苛まれる。寂しくなったりもする。

 『大人失格』という本は、まさにこの後者にあたる。何気に手にとり、ページをめくっているうちに、どんどん夢中になり、本を置くことを忘れ、時間も忘れた。しかし、それは永遠に続くものではない。終りがくる。最後の一文字まで読み終えたとき、軽い失恋に似た感情に陥る。本当にいい恋だった、もとい、いい本だった。

 松尾スズキは、劇団「大人計画」の座長であり、演出家である。しかしそんな肩書き以前に、山本直樹も述べるように、彼は「まぬけハンター、素朴ハンター」である。その才能はエッセイを読む限りでも明らかだ。そして、それを表現することに長けているのである。

 しかし、私の印象としては、ハンターであると同時に、松尾は「まぬけカーペンター」という感じである。松尾がまぬけという獲物を捕獲したあと、まぬけを更なるまぬけへと作りあげてしまうのだ。まぬけ色に塗ってしまう、まぬけに仕立ててしまう、そういう才能があると思う。本文中で松尾は、テーブルの上の消しゴムに、折れたシャーペンの芯を突き刺し、消しゴムのまぬけ度を高める作業をしてみる。このシャーペンの芯を突き刺す作業、これぞ松尾の才能である。彼以外の誰が、消しゴムのまぬけさに気づき、そのまぬけさをさらに高めようと、シャーペンの芯を刺すという行為をするというのか。

 まぬけは笑える。その笑いは、シャーペンの芯一つで作りあげられる。たったそれだけのようで、この発想が素人にはそう浮ばない。さらに、このまぬけの力、侮れない。まぬけはあらゆる戦意を喪失させ、その周辺世界へのものすごい破壊力を持っている。松尾の例では、鼻血が取り上げられている。鼻血を出した武将が「いざ出陣」とは言えない。鼻血が止まるまで待つのであろう。鼻血待ち。まぬけである。せっかくの士気も台無しだ。盛り上がったところに、水を差しその周辺空気を一気に壊す。なんたる破壊力。

 この本は松尾が出会った、まぬけな人たちに、さらに彼がシャーペンの芯一本刺してまわるエッセイである。シャーペンの芯一本の破壊力。その破壊力を見抜き、見事にまぬけ度を高めることに関して、やはり松尾は天才である。

 まぬけを作れるという才能。なんともまぬけな才能だ。

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