酒井聡樹さんのレビュー一覧
投稿者:酒井聡樹
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2002/05/17 21:35
著者コメント
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本書は、学術論文では「何を書くべきなのか」を解説した本です。この点で、論文で用いる文章表現・英語表現を解説した本とは異なります。もちろん、論文を書くためにはこうした表現技術を身につけなくてはいけません。しかしそれだけでは不十分です。イントロダクション・結果・考察などの各章で何を書くべきなのかを知らずに、良い論文を書くことはできません。
たとえば、
ここに穴を掘って下さい。
なぜなら、ここに穴が無いからです。
こう言われて、納得して穴を掘る人はいません。しかし、こんな論理のイントロダクションはよく目にします。
A を明らかにすることを目的とする。
なぜならば、A が明らかになっていないからだ。
研究なのだから、「明らかになっていないこと」を調べるのは言うまでもないことです。ですからこれでは、どうしてA を明らかにするのかを何も述べていないのと同じです。人を納得させるためには、
ここに穴を掘って下さい。
なぜなら、徳川幕府の埋蔵金が埋まっているからです。
と書くことです。同様に、「A を明らかにすること」を「どうしてやるのか」を説得することが、イントロダクションの使命なのです。なお本書では、「イントロ折り紙」という、「どうしてやるのか」に説得力のあるイントロダクションの書き方のコツを紹介しています。
論文の書き方に関する本はたくさんあります。しかしそのほとんどが、文章技術・英語技術に関するものです。肝心の、「何を書くべきなのか」を解説した本は少ないようです。本書を読んで、「何を書くべきなのか」を是非とも知ってほしいと思います。
本書のもう一つの特徴は、学術雑誌に論文を投稿してから、学術雑誌への掲載が決定するまでの各段階でするべきことも解説していることです。原稿を書き上げればお終いのはずがありません。学術雑誌に論文が掲載されるまでには長い道のりがあるのです。
本書の説明は、「論文書きの歌」に沿って進みます。これは、「アルプス一万尺」の替え歌で、歌詞が 18 番まであります。また、ベガルタ仙台(東北初のJ1クラブ)に関する架空の論文を題材に、楽しく、かつ、どんな研究分野の方にも理解できる説明を心がけています。本書が少しでも、「これから論文を書く若者のために」役立てば幸いです。
おまけ:表紙は、これから論文を書く若者の姿を、仙台スタジアムで闘うベガルタ仙台に重ねたものです。
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