藤津亮太さんのレビュー一覧
投稿者:藤津亮太
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紙の本Gundam century 宇宙翔ける戦士達 Renewal version
2000/07/10 00:44
ガンダム・センチュリー
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『ガンダム』が"リアル"だなんて、誰が言い出したのか?
あの衝撃を、そんな一言に粗雑に集約してしまったために、その後どれだけの混乱が生じたことか。だから今もまだ、作品と視聴者の中に、"リアル"の呪縛は根強く影を落としているではないか。
伝説的ムックと言われた本書は、180ページ足らず。
伝説と呼ばれるには、もちろん理由がある。やがて、プロで活躍するメンバーがアマチュアで参加していた、というのもその一つだろう。だが、本書が伝説と呼ばれる一番の理由は、現用兵器のようなMSV(モビルスーツ・バリエーション)を提案し、本編では描かれなかった細部のSF設定をまとめた"リアル"さにある、というのが最大公約数的な意見だったのではないだろうか。
しかし今、本書を手にした読者は、そんな"リアル"な世界観を提示しているのは、全編のわずか三分の一程度に過ぎなかったことに驚くはずだ。そして、残りの三分の二のほうもまた伝説的という言葉にふさわしい濃密さを持ったことを発見するはずだ。声優、永井一郎による演技論(これは本人が後々、新人研修用のテキストに活用したという完成度)。映画評論家、白井佳夫や富野喜幸(当時)監督らによる座談会。ガンダムの世界をSFではなく科学の側面からアプローチした特集。
これほど濃厚なムックの魅力を、その一部分だけが代表してきたことも、やはり"リアル"の呪縛だったように思う。
(藤津亮太・ライター兼アニメ評論家)
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