トリニトさんのレビュー一覧
投稿者:トリニト
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2005/07/31 21:20
タイ山岳民族
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タイの山岳民族の実情についてどれだけのことを皆さんは知っているだろうか?
きれいな民族衣装を着て、焼き畑農業をしているとステレオタイプのイメージ以外に。
自然を破壊するという理由で焼畑農業を禁じられ山を追われた彼らは、
政府から国籍をなかなか受理させない為に国内の移動すら満足にできず、
公用語のタイ語を理解できない為にきちんとした職に就くことができない。
彼らに待っているのは貧困と麻薬、売春という極限の世界である。
日本では考えられないほど爆発的にエイズが蔓延し、
残された子供たちは山岳民族としてのアイデンティティを見失ってしまっているのである。
80年代からそんな山岳民族のなかで奮闘していた大森絹子女史に触発された高木氏が、
彼女の創設した山岳民族のエイズ遺児養護施設である『希望の家』を取材したのがこの本である。
前半は子供たちとのふれあいを中心に書かれ、
不器用ながら子供たちと交流を交わしていく様子がほほえましい。
でも何よりも引き込まれるのが、大森女史の死によって浮かび上がる
「希望の家」存続の危機を迎える後半である。
この施設はほとんど大森女史1人の力で資金の調達が行われていたために
女史の死と共に経営が危機に瀕してしまうのだ。
500日という取材の中で図らずも誰よりも現情知るものとして
大森女史の遺族とタイで希望の家を運営するタイ人との間にたって仲介役をやらざるを得なくなってしまった高木氏の奮闘ぶりに引き込まれていく。
久しぶりに面白い本だった。
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