虹釜太郎（http://blog.goo.ne.jp/360records/)さんのレビュー一覧

RH素子コ＝パイロットをたよりに、夜の砂漠を突っ走る！ヤバイ仕事

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RH素子コ＝パイロットをたよりに、夜の砂漠を突っ走る！ SF異端ラリー小説..ではありませんが、
遠未来デスレース好き、ディック映画好きには、その入れ子の視点移動＝逃走経路がたまらない小説
『グラスハンマー』。P.K.ディックを継ぐ者として「ブレードランナー」シリーズも書き連ねるジーターによる、環境が激変した地球の荒野を舞台にした、禁制のハイテク部品を闇市に運ぶ「スプリンタ」の魅惑的な逃走経路フィクション『グラスハンマー』。作中での、映像、音声のみの描写で進行する様、誘導視野のコントロールの描写など、イーガンの最新邦訳『ディアスポラ』におけるゲシュタルト（映像）とリニア（音声）、コズチ理論、エクソセルフ、アウトルック、観境（スケープ）の描写に親しむ読者には、少々懐かしいものに感じるかもしれないが、頭の中でアナログな歯車がまわるかのようなジーターならではの、寒気と顔を刺すような空気の緊張感漂う描写は『垂直世界の戦士』のマジカルスーパーアジアな都市の匂いの描き方と同様、癖になるもの。グラスつながりで、おもわず、未来の民族楽器の響きを収録したような、グラスハープのみで作られたアルバム『ニューグラス』（http://magicalasia.jugem.jp)や『ブレードランナー』をサンプリングしたアブストラクト・ヒップホップ（残念ながらほぼ死語）を聴きながら、映像、音声のみで綴られるシーンを繰り返し味わったが、『ブレードランナー』の続編を描き続ける作者ならではの、細密なクロースアップ描写が、黒ずんだ残骸に広がる灰色の曙光的SF好きにはたまらないものが。