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レビューアーランキング
先月(2017年6月)

とらまるさんのレビュー一覧

投稿者:とらまる

3 件中 1 件~ 3 件を表示

非情な運命負った主人公の魅力が冴え渡る

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 雨上がりの湿気った寒い夜。暗闇に霧が立ちこめ、なんだかいやな感じ。
 佐吉という板前が帰り道を急いでいます。
 早く帰って熱燗をひっかけて布団にもぐり込みたい・・・・・
 ところが、でくわしてしまうんですね、辻斬りに。それも一人じゃない。
 あー、この人、ホラー映画の「一番最初に殺されちゃう人」みたいな役割なんだ、気の毒すぎる・・・・・・
 と思ったら、辻斬りに囲まれてるのが、女かと見まがうような美貌の若衆。佐吉は思わず進み出ます。
 え? 強いの、佐吉?
 ところがこの若衆もものすごく強くて、敵をあっさり倒してしまう。
 おかげで佐吉は奉行所に目をつけられる。
 奉行所だけじゃなくて、いろんな人が佐吉を監視してるみたい。
 なぞの美人女将、おたかも「会いたい」といってきます。
 なになになに? いったい何者なの、佐吉。
 何者なの、おたか、なんなの、若衆。

 ワケありげで魅力的な人物たちの正体を見極めようと、ずんずん読み進むにつれ、物語は展開し、ぎょっとするようなことが次々と起こり、
・・・・・気がつくと読者は、佐吉が置かれた、非情で凄惨な現場に、一緒に息を詰めて立ちつくしているのです(夏に読むには最適!)。

 タイトルから予想できるような「役目」を、佐吉は負っているのですが、
テレビの時代劇のようなお話ではありません!!
 “悪い奴らに「お仕置き」して殺してしまう”ということの重さ、オソロシサについて、作者は目をそらしていないんですね。
 だからこそ、物語にパンチ力があり、そんななかで人間らしい心を持った主人公たちがいっそう魅力的で、佐吉の葛藤や緊張がリアルに迫ってくるのです。

 心の優しさを「捨てきれない」佐吉やおたかが、どう生き抜いていくか。
 はたまた、捨ててしまうのか。
 ちょっとこれは目が離せません。
 作者さま、出版社さま、ぜひぜひ早く続編を!
 
 イケメンの佐吉も、美形でちょっとゴーマンな菊弥もいいけど、
おたかさんがすてき。女性読者はきっと共感するでしょう。
 任務を負って、妻や母にならないで年齢を重ねてきた、しっかりしてるけどやさしい、きれいな人です。お酒を飲むシーンがいろっぽい。

 それともう一つ、この小説にはすごい魅力があります。
 それは、鋭い切れ味の文章です。 
 江戸の町並み、差し出される料理、刀のこしらえ、舞台や小道具をさりげなく描く、簡潔で選び抜かれた言葉が、とても贅沢です。
 なにより、アクションシーンがすごい。
 斬り合い場面なんてものは、言葉はしょせん、マンガや映像にはかなわない・・・と思っていたのですが、この作品を読んで、いやいやそんなことない! と、可能性を感じました。
 洗練された短い文が、佐吉の切っ先のように鮮やかに翻るさまを、ぜひぜひご堪能ください。
 

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紙の本マリオネット・デイズ

2006/12/19 15:07

みえてきたのは、苦しさの謎

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

主人公の抱える謎にひっぱられて、一気に読んでしまいました。だんだんにわかってくる真実に心を強くつかまれ、
読み終わったときには、心が強く温かくふくらんでいました。
川田秋音は中学3年生。ちょっと人見知り。
ある日、駅の向こうのホームに、見知らぬ男子生徒を見かけてドキンとして、次に会ったとき、いきなり話しかけます。
「あなたに生きわかれの妹はいませんか?」
その少年は、例の「写真」の男の子に違いないと思ったから。
秋音が偶然父の本棚から見つけたその「写真」には、5歳の秋音と、見覚えのない1つ年上の男の子が写っていたのです。
心配性のママ、忙しいパパ、すなおな秋音・・・平凡な川田家ですが、妙なことがあるのです。
家には、秋音が6歳になるまでの写真が1枚もないのです。
秋音も、そのころのことをまったく覚えていないのです。
それに、秋音は、同じコワイ夢を繰り返してみるのです。子どもなのに自分で自動車を運転して、崖っぷちの道を、何かから逃げているのです。自動車にはもう一人乗っています。「弟」です。
 秋音は一人っ子で、兄も弟もいないのに。
親友の美由紀をはじめ、周りの人たちに助けられながら、秋音は、自分の家の秘密を解いてゆきます。
え? どうしてママに聞かないかって? それはね・・・。
美由紀とは保健室で知り合った仲です。おたがい、なーんだか人生が息苦しいことを分かち合っています。
一見「コワイ」けど、友だち思いで一生懸命つっぱってる美由紀がけなげで魅力的です。
美由紀が憧れる相川先輩はじめ、S高校に通う4人の「王子様」と二人の少女のやりとりが、またおもしろい。
謎を解きながらわかってくるのは、秋音がマリオネットみたいに、身動きができなくなっていたということ。
しかし気づいたからといって、やすやすとは抜け出せません。小さなチャレンジを繰り返して、秋音は少しずつ「自分」を取り戻してゆくのです。
秋音の窒息しそうな苦しさに共感しながら、同時に、個性豊かな周囲の人たちに支えられている心強さも、味わえます。
秋音のきつ〜い「マリオネット状態」を綴るエピソードは、どれも迫力があり、リアルです。表面は静かなのにみしみしコワイ。
そして、リアルな怖さあっての、みずみずしい解放感。
不思議なことに、秋音と同じ痛みを持つわけでなくとも、また、秋音をマリオネットにした存在と同じ立場にある人にも、この物語はやさしいのです。

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勝たなかったけど「負け」じゃない・・・面白かった!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

若き陸奥宗光や坂本龍馬と共に勤王運動に働き、維新後は神戸の目抜き通りや港の建設、故郷、和歌山の町の近代化にも尽くした実業家、加納宗七。
けれど、その生涯には不明な点が多く、町名に名を残してはいるものの、地元でも宗七の名を知る人はまれだという。
著者は、数々の史料を渉猟し、幾多の人に話を聞き、この侠気にあふれた商人の人生をたどってゆく。

たいてい、実業家の伝記というのは、通り一遍の顕彰に終始していたりして、面白くないものが多い。
でも、この評伝は面白かった!
とても心を動かされた。
加納宗七は、三井、三菱などのような「勝ち組」にはなれなかったけれど、著者は「失敗は必ずしも敗北と同義ではない」と言う。そのことが、読み進むにつれ、じつに納得できるのだ。
また、実業家だから、きれい事ではすまない。開発工事のために住民を立ち退かせたり、維新前の勤王運動では、「嘘つき小次郎」と呼ばれた陸奥宗光の陰謀の片棒を担いでしまったりもする。そういうことを、この評伝は隠したり、開き直ったりせず、教えてくれる。
開発した土地が安く買いたたかれたり、不運が重なって建設した港から撤退したりはするけれど、抜群のカンと胆力で次々とプロジェクトを実行し完成してゆく加納宗七の姿は、「敗北者」のそれではない。
晩年の宗七は、地元の漆器産業の改革に協力したり、小学校の運営を応援したり、社会事業に力を尽くしたという。
利益とチャンスにどん欲でありながら、それが社会奉仕への意欲と少しも矛盾しない、そんな不思議で振り幅の大きい「侠商」の姿が、あざやかに描かれている。
今の世に、さわやかな風を吹き込む評伝だと思う。
地図や年表、索引、写真もたくさん入り、とても充実した編集になっている。

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