t.sinさんのレビュー一覧
投稿者:t.sin
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紙の本チョコレイトの夜
2008/01/30 14:50
進化した中園
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
デビュー作『オルゴール』が普通の子の視点から、いじめられている子を描いたように、本作も、いじめを知ない男の子の視点から、いじめを受け、傷ついた男女を描いている。
しかし、本作は、一読すればわかるが、いじめについての認識が『オルゴール』より、深まっている。
それは本作のラストシーンに象徴的に現れるのだが、ネタバレになるので多くは語るまい。
――なぜ書くのか?
という質問の答えに、本書はなっている。
サークル小説研究会に籍を置く、過去にいじめを受けた女の子が言う。
《「表現なんて、しなくてすむならしないよ。[……]でも、表現しないと
生きていけないの。私たちは、生きるために書いてるだけなの」》
彼女が書いた小説『夕焼け仔猫』は修羅場と化した、いじめを描いたものだった。
「ぼく」が大学一年生で友達になった、「森山」くんも、いじめを受けていた。
そして「森山」くんも未完成の小説を抱え、書きながら、いじめから逃げず、いじめに向きあおうとする。
中園はもっと、いじめについて知ってもらい、いじめをなくそう、として書いている。
想像でしかないが、中園も思い出したくない過去、それから逃げずに小説を書いているのだと思う。
そして、本書は、これからも書き続けるぞ、という中園の決意表明の書となるだろう。
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