amisimさんのレビュー一覧
投稿者:amisim
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
紙の本「普天間」交渉秘録
2010/09/29 08:03
普天間問題の合意形成過程を知るために
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
刑事裁判で有罪になり先頃収監された著者。山田洋行事件で世間を騒がせた「防衛庁の天皇」という風評しか知らなかったのですが…。
単なる「言い訳本」が多い中で、恨み節の類は皆無です。おそらく編集者との打合せで本書の内容を極力著者が日本の為に貢献したと考えている部分のみに照射して筆を進めた結果なのだと思う。この点では山田洋行事件を知りたい人にとっては物足りないかもしれないが、一応成功だと思います。自分を事件に陥れていこうとする勢力の影を暗に意識していた節も感じられる記述が一部に見られる程度です。
固有名詞がバンバン出てきて、著者の人物評価の肯否は、読めば誰でも判るほど露骨なものです。著者の最大の後ろ盾は他ならぬあの人。そしてその時代の終焉と共に大きく反動がやってくる。その突端までが描かれています。
非常に生々しい証言が随所に見られ、テレビ報道でしか知らない政治家の人間臭さが良く伝わってきます。
沖縄政財界がシュワブ移設後の「V字案」に反対する理由は、「カネ」の多寡に尽き、その合意に至るまでに、ああでもないこうでもないと言を左右にして「時間」の消耗を目論んでいると喝破してます。恐らくこの動きは現在も存在すると日本国民なら心得ておくべきでしょう。
頻繁に「滑走路をずらしてほしい」というあらゆる方面からの圧力に対峙する一徹な次官の姿として描かれます。読んでいて知らぬ間に次官に共感を覚える読者になっていました。一流の官僚ならではの説得上手といったところでしょうか。
鳩山前総理の「最低でも県外論」が「最低の圏外論」であることは言うまでもないが、沖縄政財界にツケ入る隙を与えてしまったという負の面はマスコミ報道からだけでは窺い知る事はできない。沖縄だけに必要以上のカネが湯水の如く放り込まれることへの懸念と警鐘がこの書には描かれています。
単なる「沖縄がかわいそう」というマスコミの扇情に流されない為に一読をお薦めします。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |