雀バル雀さんのレビュー一覧
投稿者:雀バル雀
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2012/02/09 23:47
偉大なる勇気に敬意をこめて
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
これは、ある勇敢な男の話――
アイデアはあった。
名声もあった。
金もあった。
企画力もあった。
情熱もあった。
彼にはそれを存分に活かせる、「書き手」としての力に欠けていた。
時に悪文と蔑まれ、そこに目を瞑ってくれる者たちにしか、物語を届けることができなかった。
男は、一人の漢と出会う。
無駄の少ない美麗な文章力、堅実な構成力を備え
己に酔うこともなく、他の才能へ敬意を払うこともできる、本物の書き手である。
その本物に、男は己の作品を委ねた。
確実に、自分を超える…自分の作品すら踏み台にされる危険を知ってなお、それを託したのである。
そして、大傑作がここに誕生する。
Fate風に評してみましたが、讃辞は大袈裟じゃないです。偉大なる2人に乾杯。
2012/02/10 00:29
学術寄りの内容です。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
作者の怪奇事件に対するスタンスがとても好きだ。
恐れるわけでも妄信するわけでもない、否定も断言もしない。
そして、背景を様々な仮説と検証によって探っていく。
祟りなどばかげた話だ
しかし、現象に惹かれる人の気持ちは尊重したいものである。
本書は興味本位で楽しむには、少し難しい。
迷信を素直に受け入れてしまうタイプの人には向かないと思う。
『心霊写真』の成立や社会的背景に知的興奮を誘われる方は、是非読んで欲しい。
社会学・民俗学関係として、とても優れた本である。
氏の著作は、どれも面白い。しかし、読後に少しだけ肌寒いものを覚えるのも事実。
どんな幽霊よりも、人間が、やはり一番怖いのだ。
2012/02/10 00:22
あの熱狂のスタンドに私もいた
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最果ての島から甲子園にやって来たチーム、八重山商工野球部。
投打に超高校級の選手を擁し、優勝した横浜高校さえ震えあがらせるほどの強豪であった。
練習嫌いでだらしなく、不謹慎、
謙虚も緊張感もなく、ただ相手を力でぶったおす。
まるで南米のサッカーチームのように自由で、情熱的で…脆かった。
綺麗事だけのお話ではありません。
島の現実と苦境、それなくしてはありえなかった「奇跡」を描いてます。
是非読んで下さい。名著です
2012/02/09 23:39
本当にあったフィクション!?
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少年時代に忍者を目撃した作者が、そのまま押しかけ弟子となり
先輩「犬」とともに厳しい修行を経て
セールスマンとして働くさなか、拳法を学び
やがて中国の奥地で仙人と出会う…
なんと壮大で、そしてハチャメチャで無茶苦茶なストーリー
いや、著者の波瀾万丈すぎる人生と、その筆力の鮮やかなこと…
読んでいて小説なのか自伝なのかと迷うこと請け合いですが
きっとあなたも、読後には「そんなことはどうでもいい」と感じるハズ。
深い、愉しい、素晴らしい!
最高の読書体験をお約束します。
紙の本ナツコ 沖縄密貿易の女王
2012/02/10 00:14
英雄譚にあらず
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センカ、という言葉を知る人は、沖縄でもかなり上の世代であり
また、言葉の意味合いや感情も、地域や立場で異なる。
それほどこの本で描かれるセンカ時代というのは扱い難い題材だ。
民衆にとって戦果を担う人々は、決してヒーローではない。
しかし、モノが絶望的に不足していた当時においては、
県民全てが共犯であり、糸満漁民や先島という「異人」に依るしかなかった。
ナツコが作者の云うような傑物であったかどうかは疑問も残る
しかし、時代の象徴であったのは間違いない。
ラストの、糸満境界である白銀堂の葬礼のシーンは、まさにセンカ時代の終焉であり、
こういった場面を的確に配置できる作者の感性は見事だ。
傑作である。強く勧めたい一冊だ。
2012/02/10 00:07
是非実写化を希望する
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
筋は面白い。
なるほど、一つの事件を通して、家族というものを見つめ直すという展開は、
古典的だがアリだと思う。
この巻については、まだラノベ部分と小説的な要素が融合できてないので、
いまいち物語に入れなかった。
しかし、作者の(おそらくは好みであろう)ホームドラマ的な要素が、
逆に古すぎて「新しい」。
ライトノベルのテンプレートで飾られた昨今の作品群のなかでは、かえって新鮮さを感じる。
妹の悪態や、語り部としての兄の心情は、ある意味ではヲタクのそれでもあり
また健康的な家族愛としても描かれているため、
『化学調味料をふんだんに使っているけど、あたたかな家庭料理』のようで
妙に味わい深い。
ライトノベルや漫画アニメの実写化が増えているが、
互いの魅力が水と油のように混ざりきれない作品ばかり。
ならいっそ、原作から闇鍋的になっているこの作品のほうが、
実写に向いているのではないだろうか。
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