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猿カニ合戦さんのレビュー一覧

投稿者:猿カニ合戦

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紙の本

紙の本縄文人の世界観

2017/02/06 21:06

縄文人の世界観に肉薄した労作

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は、これまで、考古学がタブーとしてきた「縄文人の世界観」に、科学的に迫ろうとする。そもそも、これまでの考古学は、科学的な根拠や理論のないままに、ひたすら想像だけで、先史時代人の心を読み解いてきたきらいがある。残念ながら、考古学者がまことしやかに囁く「世界観」の多くは、現代人のものの考え方(経験則)でしかない。

たとえば、個人(私)、家(住居)、家族、部族、共同体、定住、集落(ムラ)、絆、人間関係(親子、集団)、祖先崇拝、霊魂(女神、アニミズム)、死(恐怖、祟り、あの世)、二項対立(男女、生死)、宗教(祭り、祀り)、哲学(送り、共生と循環)、芸術(美、装飾性)、階層(リーダー、奴隷、殉死、威信)、交易、贈与、発展(進歩)、合理性、戦争(殺人)、栽培(農耕、里山、養殖)などといった用語は、考古学のどんな本にも登場するが、しかし、こうした概念を、縄文時代にあったかどうかを、ちゃんと議論・研究した上で使っている学者はほとんどいない。面白い例を一つ。考古学は、これまで、なんの根拠を示すことなく、「竪穴住居」という用語を使ってきた。しかし、「竪穴」が「住居」であるという明確で科学的な根拠はないのだ。柱穴や炉があるから「住居」だと言うが、残念ながらそれは、保証の限りではない。

本書は、こうした問題点を踏まえたうえで、それを解決すべく、シンボリズム論を提起する。結論的に言うならば、シンボリズムの中でも、とくに心理学者のカール・ユング、エーリッヒ・ノイマン、そして宗教学者のミルチャ・エリアーデ、民族学者のネリー・ナウマンの主張する再生・誕生のシンボリズムという概念が、縄文社会の本質ともいえる「普遍的認知」であることを確信し、具体的に資料を読み解く。

再生・誕生のシンボリズム論は、ややもすると、恣意的であり「こじつけ」的などと揶揄される。それは、例えばこの理論が民族学や神話を援用していることが、嘘くさく感じさせているようだ。もちろん、民族学や神話は、現代的な変容を遂げたシンボリズムであり、そのまま縄文社会に置き換えることは誤りだし、本書ではそうした援用の仕方はしていない。現代的な変容を削ぎ落としてから使う。誤解があるようだ。本書は、あくまでも、人間の根源的な「普遍的認知」としてのシンボリズムを追求する。

著者のシンボリズム論は、例えば、「ストーンサークルは、なぜ円いのか」、という「普遍的認知」の中身に対する疑問を解決するための解釈論だ。従来の、民族学や民俗学だけでなく、心理学や哲学、宗教学、そして脳科学などを総動員して、先史・古代の謎を読み解こうとする試みだ。「なぜ、そうするのか」、それは、根拠のない想像や類推の考古学からの脱却であり、科学的根拠のある考古学の確立を目指すからだ。

「すべてを再生で読み解くこと」への違和感は、著者への批判の中心だ。しかし、「なぜすべて再生ではだめなのか」を理論づけて非難することが求められよう。単に「すべて再生ではおかしい」というのでは、学問的な反論にはならない。著者の論考には、根拠が示されているのだから。

たしかに、現代科学においては心理学や宗教学の言説の証明は難しい。しかし、民族学的事例の積み重ね、考古資料の分析、哲学的解釈などによって、仮設の「蓋然性」を高めることは可能だ。

そうした意味からも、本書は、これまで考古学がタブーとしてきた領域において、きわめて有効な方法論を提起する。考古学者の言説に、フラストレーションの溜まった読者には、必読の書だ。

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