sipaさんのレビュー一覧
投稿者:sipa
紙の本夏、19歳の肖像 新装版
2017/04/21 21:16
青春小説の皮を被った本格ミステリー
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1985年初出の小説を再読。青春小説の皮を被った本格ミステリーです。
特に初期の島田荘司はいろいろなジャンルの小説を書いていますが、 その実は、たいてい◯◯◯の皮を被った本格ミステリーだと思います。◯◯◯に入るのは、トラベルミステリー、ユーモアミステリー、ホードボイルド、サスペンス等々。
発表時期の1985年当時、30代半ばになった「私」が、1970年代はじめ頃、19歳のひと夏を懐かしむという構成になっています。
蒲田に住む学生だった「私」はバイクの事故で品川の病院に入院。 ある夜、病室から見える家に住む娘の不可解な行動を目撃。しかし娘に惹かれるものがあった「私」は退院後、娘に近づいていき…。
若い頃にしかない一連の馬鹿さ加減はイタくもあり素晴らしくもあり。過去の自分にもそういう馬鹿な所があったな、と思いながら再読しました。
鎌倉デートのエピソードは、昨年現地に行ったばかりなので、再読した今回かなりリアルに目に浮かびました。
傷だらけの体でバイクに乗って、決死の覚悟で海岸線をひた走る終盤。その先に何かどんでん返しが待ち受けていたような記憶がありましたが、最初に読んでからたぶん7、8年たっていて、結末の詳細は忘れてました。改めて読んでみて、ほろ苦いなぁ…と思いました。
まぁ、やはり島田荘司なので、青春小説風のこの話においても、人死にも出るし密室トリックも出ます。密室殺人は出ません。
紙の本都市のトパーズ2007
2017/04/20 14:34
数少ない推理小説的な要素がない作品
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1990年初出の「都市のトパーズ」を再読。ただし改訂版の「~2007」の方で。 吉祥寺の寺の境内で飼われていた虎が、檻を抜け出し東京の街中を疾る。 その虎「トパーズ」と、銃と単車で警官隊から虎を守る「私」の話です。
「私」の語りが続いている間に、作中では2年の時が経過しています。 最初は生後半年だったトパーズが、最後は2歳半の大人の虎になっています。
島田荘司の小説では数少ない、推理小説的な要素がない作品です。 物語の大半は主人公「私」のモノローグによる都市論、日本人論です。
東京の理想の姿は「東亰」で、江戸の意味するところは「江都」で、 地球(Earth)は本来、水球(Oceania)と呼ぶべき、といったような、 同じ作者の長編「火刑都市」とも重なる、都市に対する考えが語られています。
読んでいて気づいた初版と改訂版の主な違いは、まず「私」の年齢設定。 1948年生まれなのは変えず、作中時期だけを90年代から2007年に変更。 そのため、初版ではアラフォーだった「私」が改訂版では60歳手前に。 この年齢で物語後半のあのアクションシーンをこなして大丈夫なのかと。
あと「私」がiPodを使っていました。90年代には存在しなかった物です。 初版ではウォークマンか何か、別のデバイスを使っていたと思います。
再読して気づいた点としては、よく読むとトパーズのいた寺の住職が、 十二支の動物ぜんぶを寺で飼おうとしていました。空想上の動物もいますが…。 辰年については、タツノオトシゴあたりが現実的な落としどころでしょうか。
それと、中編集「天国からの銃弾」収録の「首都高速の亡霊」に出ている 「首都高速エンジニアリング」という会社が「私」の勤める会社と同名でした。 「首都高速の亡霊」では社長の寺田慎之介が主役の一人として登場しています。
あとひとつ、日本でのデング熱の流行について言及するシーンがありました。 作中と現実では伝染経路が異なるので、これを予言とは言いませんが、 去年国内で69年ぶりに流行が確認されて知った病名を、8年前の本で見るとは。
2017/04/18 12:33
良いお爺さん、悪いお爺さん、ワイルドなお爺さん
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90年代に書かれた島田荘司の3作入り中編集を再読。 特に他のシリーズ物との繋がりは無く、また3作とも独立したストーリーです。
1作目は推理モノではないものの、謎とその解明の要素はあります。 2作目はスリルとサスペンス、3作目はミステリありアクションあり。 3作に共通しているのは、主役が皆ご老人という点です。
1作目「ドアX(エックス)」は良いお爺さんの話。
主役は御茶ノ水の喫茶店「アステア」のマスター森田嗣治さん(64)。 女優志望のマキ子が暮らす街の謎が、森田の口から解明されます。 終盤に出てくる回転ドアの話で「写楽 閉じた国の幻」を思い出しました。 しかし「写楽…」は2004年の森タワーの事故を元にしているとも言われています。 そうすると10年以上も前に回転ドアの危険性が示唆されていたということに。
2作目「首都高速の亡霊」は悪いお爺さんの話。
主役は千駄ヶ谷に住む首都高関連会社の社長・寺田慎之介さん(60代?)。 もう一人の主役・西荻窪に住むOL霧原桃代と寺田のエピソードが交互に進みます。 話の始まりは、ある晩、桃代が自宅のベランダで起こした重大な不手際から。 「星籠の海」の看護師・辰巳洋子に通じるものがあると思いました。 ヒロインが不手際をリカバーするため、雨の夜に頼りない彼氏と四苦八苦します。
表題作でもある3作目「天国からの銃弾」はワイルドなお爺さんの話。
主役は7年前に退職し、川崎で悠々自適の老後を送る渋沢増達さん(75)。 趣味で毎日望遠カメラで撮影していた風景写真が事の始まりとなります。 家族が事件に巻き込まれ、渋沢が謎の解明を始めます。 終盤の渋沢のワイルドさに「ひらけ! 勝鬨橋」を思い出しました。 「…勝鬨橋」もご老人がアクションするストーリーです。
紙の本怒り 下
2017/04/15 17:45
事件現場にどんな意味があったのか
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上下巻を通してこの話では、約半年間の出来事が語られます。八王子夫婦殺害事件から1年後の2012年夏から、2013年冬まで。
2012年の夏、素性不明の男が現れるのは、千葉、東京、沖縄の3か所。映画の公式HPでは、これらを千葉編、東京編、沖縄編と呼んでいます。この3つの他に、八王子署の刑事が捜査をするパートがあります。こちらは公式HP上では、事件編と呼んでいました。
逃亡中の山神を探して、刑事は東京から全国各地に足を運びます。山梨、大阪、福岡、埼玉、静岡…そして千葉、沖縄にも。
刑事の、捜査以外の私生活についても書かれています。八王子署の独身寮に住み、出かけるのは主に立川や新宿。恋人らしき女性が出てきますが、消化不良のまま話は終わります。
事件の真相についても消化不良な点が多かったと思います。知人が語った山神との会話の中で、経緯らしきものは出てきますが。八王子の事件の現場で山神が行ったことに、どんな意味があったのか。
終盤で、正体不明な3人のうちの1人が山神と分かる瞬間があります。八王子の事件現場と、立川の自宅アパートに残っていたもの。それを思い出して、読者は、山神だ!となると思います。そういう物語的な意味はありますが、動機の面での説明が今ひとつ。
2017/04/11 14:39
東京の国立市周辺が舞台の連作短編ミステリー第2弾
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東京の国立(くにたち)市周辺が舞台の連作短編ミステリー第2弾。今回も多摩の実在の地名が数多く出てきます。 各話の事件現場は以下の通りです。
1.「アリバイをご所望でございますか」
立川市錦町もしくはその近辺(立川駅南口)。
事件関係者の住所として、国分寺市本町3丁目、立川市柴崎町 (中央・青梅線分岐点付近)、曙町(競輪場近く)が使われていました。
2.「殺しの際は帽子をお忘れなく」
国立市谷保もしくはその近辺(谷保駅から歩いて数分)。
国立の他、小平(新小平駅近く)、府中(刑務所近く)で事情聴取。
3.「殺意のパーティーにようこそ」
港区高輪(主人公が出席したパーティーの会場)。
4.「聖なる夜に密室はいかが」
国分寺市泉町もしくはその近辺(西国分寺病院前)。
事情聴取の場面で国分寺市日吉町もしくはその近辺 (国分寺から国立方面に向う街道沿い)が出てきました。
ラストシーンに出てきたケーキ専門店『ノエル』は、 TV版では実在のケーキ店『レ・アントルメ国立』を使用していました。
5.「髪は殺人犯の命でございます」
国立市 中(なか)もしくはその近辺(一橋大学近く)。
6.「完全な密室などございません」
国立市の片隅(豪勢なお屋敷、珍しく具体的な地名の描写なし)。
他にも所々に多摩地域のあれこれが出ていました。 (玉川上水、立川通り、大学通り、東京競馬場、府中病院、井の頭公園…)
2017/04/10 13:53
東京の多摩地域に密着したユーモアミステリー
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東京の多摩地域に密着したユーモアミステリー。 主人公は国立(くにたち)署の刑事で、物語の主な舞台は国立市周辺。
作中では国立署が国立市と国分寺市近辺を管轄としています。 実際には国立市は立川署、国分寺市は小金井署の管轄になります。
国立署は架空の警察署ですが、舞台設定の多くは実在のものです。 内容は短編6話。各話の事件現場は以下の通りです。
1.「殺人現場では靴をお脱ぎください」
国立市北2丁目(国立駅北口から徒歩数分)。
TV版では事情聴取の場面で実在の喫茶店『ask a giraffe』が、 国立署の外観として国立市の市役所が使われていました。
2.「殺しのワインはいかがでしょう」
国立市東2丁目(旭通り沿い)。
3.「綺麗な薔薇には殺意がございます」
国立市谷保もしくはその近辺(谷保天満宮近く)。
4.「花嫁は密室の中でございます」
港区白金台(主人公が出席した結婚式の会場)。
5.「二股にはお気をつけください」
国分寺市本町(国分寺駅北口)。
国分寺の他、吉祥寺、世田谷、新宿で事情聴取。
6.「死者からの伝言をどうぞ」
国立市泉もしくはその近辺(多摩川近く)。
台詞や地の文でも所々に多摩地域のあれこれが出てきます。 (丸井国分寺店、早稲田実業、府中街道、府中市民球場、五日市街道…)
紙の本死者の学園祭
2017/04/07 12:49
国立市が舞台の学園ミステリー
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25年ぶりくらいに、トリックも犯人もうろ覚えの状態で再読。 東京・国立市の私立高校「手塚学園」が舞台の学園ミステリー。 読んでから10数年後に深田恭子主演で映画化されました。
学園関係者の住む街として、中央線沿線がたびたび出てきます。 主役の結城真知子が住む中野、学園のある国立の他、 高円寺、吉祥寺、三鷹、武蔵小金井、国分寺が登場します。
話の始まりは、真知子が大阪から東京の手塚学園に転入する5月。 学園で生徒の不審死が続き、真知子がその謎の解明を始めます。 結末は半年後、11月の学園祭当日にすべての謎が明かされます。
携帯電話がない時代の話だな、と感じる描写がそこかしこに。 映画では、いろいろアレンジして近代的な話になっていました。
赤川次郎の推理小説の特長は、意外なトリックでも、 意外な動機でもなく、犯人の正体の意外さにあると思います。
他の作品であった意外な犯人のパターンを挙げていくと、 背景に溶け込んでいるようなお手伝いさんが犯人だったり、 温厚で気弱な刑事の拳銃が最後の最後で火を噴いたり。
地の文でボケとツッコミをやって面白おかしい感じにしていますが、 それに反して行き着く結末はかなりシビアです。 登場人物の前向きさだけが救いになっているラストでした。
2017/04/05 15:45
北のほうで繋がっている
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北のほうで繋がっている2つの市の特集本。
市内のグルメやレジャーについていろいろと載っています。
在住の立川に関しては知ってるお店や行ったことのある場所がいっぱい。
福生に関しては昨年立ち寄った田村酒造さん以外はほぼ初見の内容でした。
パン屋部門では立川のリオンドール、ドラジェ、アンの工房を紹介。
多摩モノレール沿いというくくりで紹介されていました。
立川のカフェ部門では錦町のmarumiya食堂、ガーデンクラフツ カフェ、 西砂町のゼルコバを紹介。ゼルコバは人気のパン屋さんでもあります。
昭和記念公園やオニ公園などレジャー・散歩コースも記載。
1センチくらいの厚さのなかに2つの市の様々な情報が詰っています。
電子書籍たまらん坂 武蔵野短篇集
2017/04/08 21:02
アラフィフ世代の哀愁漂う短編集
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多摩・武蔵野に住むアラフィフ以上お父さん世代の哀愁漂う短編集。
若かりし頃のイタい思い出に胸をチクチクやられる話。 魔が差して狼藉を働いてしまい、這々の体で逃げ出す話。 そういった話が武蔵野の実在の史跡や名勝を舞台に描かれています。 ご近所のかたは散歩がてらに読んでみるのもいいかもしれません。
表題作「たまらん坂」は国立市にある坂の名前の由来を探る話です。 小説が書かれたのはRCサクセションの曲「多摩蘭坂」より後年。 なので、作中でもこのバンドや忌野清志郎について触れられています。
各話のタイトルとロケーションは以下の通りです。
1. たまらん坂 国立市/国分寺市
2. おたかの道 国分寺市
3. せんげん山 小金井市/府中市
4. そうろう泉園 小金井市
5. のびどめ用水 東大和市/小平市
6. けやき通り 小金井市
7. たかはた不動 日野市
わりと近場に住んでいるので小説の舞台にひと通り行ってみました。 実際のその土地々々の様子が細かく書かれていると思います。 ただし滄浪(そうろう)泉園は有料なので前まで行って帰りました。
紙の本40歳オーバーでニート状態だったぼくが初めてTOEICを受けていきなり930点取って人生を劇的に変えた、効果絶大な英語勉強法
2017/04/17 17:55
公式問題集を買おうと思いました
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タイトル通りの経歴のかたが、TOEICで高得点を獲った勉強法の本。
高得点取得後、無職から英語の通訳士になったサクセスストーリー。逆転の発想的な独自の勉強法。そして、公式問題集をベースにした具体的な学習法が書かれています。
語学の勉強の定石として、実際に口に出して話すこと、というのがあります。しかしTOEICに関しては不要、という意見を最近この手の本でよく見ます。本書でも著者は音読なしで高得点を獲得しています。
この本に書かれていたことを自分でも実践してみました。ただし、公式問題集の代わりに既に持っていた参考書を使いました。結果はあまり振るわず。公式問題集を買おう、と思いました。
2017/04/17 00:16
試験本番では600点に届かず
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トレーニングブックと、切り離し可能な暗記ブックの2冊で構成されます。
暗記ブックには試験のパートごとに暗記すべき内容を赤字でまとめ。暗記すべき単語、熟語、定型文などが書かれています。暗記確認用の半透明赤シートも付属。
トレーニングブックは200問の演習問題と100問の模擬テストが入っています。模擬テストは問題数、制限時間共に本試験の1/2。この1冊を7、8周くらい勉強してから模擬テストを解いたら600点超えました。何度もやることで、問題を見た瞬間に解答が出てくるくらいになりました。
しかし試験本番では、600点には100点以上も届かず。「暗記ブックの赤文字を完全にマスターすれば誰でも600点とれる」と表紙にありますが、「完全にマスター」ができていなかったのでしょう。