勉強中さんのレビュー一覧
投稿者:勉強中
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紙の本科学論の展開 科学と呼ばれているのは何なのか? 改訂新版
2018/08/16 17:41
稀有な入門書
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どんな分野でも滅多に出会えないような、稀有な良さをたくさん兼ね備えた素晴らしい入門書だと思います。
具体的には、
・全体を通しての論の展開(論理的構成)が極めて明快であり、読者を混乱させることがない
・形式的論理の説明で済ませる場面がなく、かならず直感に訴える的確な例で解説しているため、素人を置き去りにしない
・重要な論点に対して異なった角度から繰り返し立ち返って解説し直すため、理解が定着する
・解説のための事例はなるべく同じものを繰り返して使用しているため、異なる論点から同じ事例を眺めることで理解が定着する
・著者自身の立場を明確にしつつも、異なる立場の主張や著者の立場への反論についても繰り返し解説している
・(訳者あとがきにも触れられているとおり)様々な理論についての解説がバランスよく配分されている
・「さらに進んで読む本」という付録が極めて充実している
また些細なことですが、
・数式は決して(一ヶ所を除き)使用しない
・専門的な用語は使用せず、使用する場合には必ず噛み砕いて説明する
世界中で教科書として利用され第4版(未邦訳)まで改訂が繰り返されているということ、大いに納得しました。本文中で「理科の実験を教えていた時にこんなことがあった」といった記述が出ており、中学か高校の理科の授業のように見えます。そういった経歴があるからこそ、素晴らしい入門書を書くことができたのでしょうか。
紙の本部分的つながり
2017/09/24 19:07
翻訳者の方々に感謝。内容は、民族誌批判と存在論的転回の結節点?
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内容自体は非常に複雑なので簡単にレビューが書けませんが、とりあえず訳が良いということだけは書かせていただきたいと思います。
本書の原文と突き合わせたわけではありませんが、The Gender of the Giftの原文を読んだことがある経験に照らせば、ここまで分かりやすい日本語訳になっていることは驚きでした。また訳注も非常に丁寧で、読者のためのガイドのようになっています。訳者の方々に感謝したいと思います。
あえて内容について触れるとすれば…。
原文が書かれたのは1991年で、「文化を書く」を中心とした民族誌批判の直後です。本書は、「文化を書く」への直接の応答といえます。事実、タイトルの「部分的つながり」は、「文化を書く」の序章である「部分的真実」という言葉への応答であり、本書の途中でセクション名として2回登場する「人類学を書く」という言葉は「文化を書く」という言葉への応答です。もちろん、単に言葉の対応関係だけでなく本書全体が応答になっています(が、その具体的内容は複雑なのでここでは触れません)。
一方で、その後に人類学の中で広まった「存在論的転回」を念頭に置けば、本書は存在論的転回の一つの理論的支柱になるものです。ものすごくざっくり言えば、ヴィヴェイロス=デ=カストロやラトゥールが描くような存在論的世界を、複数の世界として並置(対置)した場合にどうなるか、ということを考えているのだと思います。
つまり本書は、80年代の民族誌批判を批判的に継承しながら、今日の存在論的転回を準備した一冊、と言えるのではないでしょうか。民族誌批判はしばしば、「一時おおいに盛り上がり、具体的な形で深化することなく過去のものとなった」という形で語られますが、本書は対照的に、民族誌批判を今日の人類学に継承する継ぎ目のような位置付けになっていると感じました。
複雑で難解な内容のため、レビューの正確性は全く保証できません。あくまで一見解としてご容赦いただければ幸いです。(翻訳の良さは保証できます)
2017/09/24 18:12
象徴人類学・構造主義の時代までの全体像
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これを通読すれば、象徴人類学と構造主義とを終着点とするような形での人類学について、全体像が見えると思います。
(「象徴人類学」として念頭に置いているのは、ギアツまでの流れと、さらにギアツへの批判(的継承?)としての「文化を書く」までです。「構造主義」はもちろんレヴィ=ストロースを中心とする、今でも受け継がれている基本的な観念群です。)
ただし、あくまで全体像を確認したい場合にはとても良い反面、項目ごとに2ページしか割かれていないので、詳しくは他の本を読む必要があります。(複数の項目にわたって同著者が大きなテーマを論じていることもあるので、単に項目立てを見た感じよりは内容が深い箇所もあります。)
また、科学技術論との関係や「存在論的転回」については全く触れられていません。その意味で、上では「象徴人類学と構造主義まで」と書きました。
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